三峡ダム本体の比較図(イメージ:NTDTVスクリーンショット)

 中国の長江流域では近頃洪水が後を絶たない、17日に今年2回目の洪水が形成された後、長江、淮河、太湖などの関連水域の治水状況が非常に深刻となり、三峡貯水池の流入量が今年増水期に入ってからの最高水準に達した。中国の公式メディアが18日、三峡ダムが変位、浸透流、変形していることを認めたことで不安を募らせている。

新華社通信:三峡ダム 「変位、水漏れ、変形」

 新華社通信の報道によると、7月17日に豪雨の影響で長江上流域に「2020年長江洪水第2号」が形成され、三峡ダム貯水池への流入量が急増した。18日午前8時には毎秒6万1000立方メートルに達し、出庫流量は毎秒3万3000立方メートルで、三峡ダムの水位はすでに163.59メートルに達し、警戒水位を15メートル以上上回っているという。

 また、三峡ダム管理部門はモニタリング記録には「変位、浸透流、変形」などが示されているが、それぞれの詳細なデータを明らかにしておらず、「通常範囲内にある」とし、ダムの防水建築物の安全指標は安定していると強調した。

 昨年から、三峡ダムが変形した画像が中国国内外のソーシャルメディアに出回り、ダム決壊への懸念が高まっている。最近、中国メディアは「三峡ダムはもう最善を尽くした、これ以上責めないでください」という見出しで増水状況を報道したことにより、三峡ダムは決壊寸前という憶測が広まった。

三峡ダムは万年に一度の洪水をも防げる?

 一部の中国のネットユーザーは、中国公式メディアが2003年から2010年の間に「三峡ダムの洪水を防止する能力」についての報道を振り返った。新華社通信は2003年に「三峡ダムはこの上なく堅固で、万年に一度の洪水が防げる」という見出しで、三峡ダムの品質が完璧だと強く宣伝し、さらに三峡ダムの工事基準は完璧であると強調した。

 同通信社は2007年に「三峡ダムは今年から千年に一度の洪水が防げる」という見出しで、万年から千年に変わった。2008年には「三峡ダムは百年に一度の洪水が防げる」と、さらに年数を下げた。2010年、中国中央テレビ(CCTV)は長江水利委員蔡其華主任の言葉を引用し、「すべての希望を三峡ダムに託すことはできない」と強調した。

専門家:三峡ダムは9%の洪水量しか収容できない

 ロイター通信の報道によると、中国の洪水問題を研究している米アラバマ大学の地質学教授デビッド・シャンクマン氏(David Shankman)は、中国当局が三峡ダムを建設した主な理由の一つは洪水を防ぐためだが、今年のような深刻な洪水を防御することはできなかったという実情を明らかにした。

 中国の地質学者の范暁氏も、三峡ダムの貯水量は今回の洪水量の9%に満たない、上流の洪水を部分的かつ一時的に防ぐことはできても、長江中、下流域の大雨による洪水を止めることはできないと指摘した。

 先週、ドイツ在住の三峡ダムの専門家王維洛氏は、希望之声ラジオ放送局のインタビューで、「今年の長江の洪水はすべて人為によるものだった。長江流域におけるすべての貯水池やダムの水位と流量は中国当局によって統一管理されている。例えば、長江の水が鄱陽湖に逆流したのは長江水利委員会の仕業だ。洪水は中国共産党が人為的にコントロールしたものであり、単なる天災ではない」と主張した。  

(看中国記者・黎小葵/翻訳・藍彧)