唐・周昉「簪花仕女図」(パブリック・ドメイン)

 紀昀(き いん、1724年―1805年)は、中国清王朝時代の官僚・学者、字は暁嵐、『四庫全書』の総編纂官であり、著書の『閲微草堂筆記』が後世に有名です。以下は、『閲微草堂筆記』の中にある一つの物語です。

 私の孫に聞いた話で、劉家の祖父には七人の娘を産んだ親戚がいて、その娘たち全員が結婚したそうです。

 一人の婿さんはある日、他の六人の婿さんと一緒に赤い紐で結ばれている夢を見ました。その後、義理の父が亡くなったため、弔問に行きました。この婿さんは縁起の悪い夢を思い出して、他の六人の婿さんと寝食を共にしたくありませんでした。ときどき、七人が集まっても、すぐに何らかの言い訳をしてみんなを遠ざけました。ほかの六人は不思議がって、理由を聞き出すと、彼は夢のことを話しました。

 みんなは彼が夢を言い訳にしていただけで、きっと他に原因があると疑っていました。

 ある晩、彼を食事に誘い、何らかの口実で逃げ出さないように、外から鍵をかけました。しかし、食事の途中に火事が起こり、鍵がかかっていたために逃げられなくなり、七人とも焼死しました。

 もし彼がその夢を見なければ、他の六人を避けようとしなかったかもしれません。他の六人を避けなければ、七人は焼死されなることもなかったのかもしれません。

 この夢は彼を惑わせるために神様がわざと見させたように感じます。同じタイミングに亡くなった一家の婿さんとその未亡人となった七人の娘たちは、この夢のせいだとは考えられないでしょう。人間は迷いの中に生きており、物事の因縁関係を知る術がありません。

 その婿さんがもし夢のことを気にせず、正々堂々としていたら、何もなかったかもしれません。「天命を信じて、吉ならば凶ではない、凶ならば避けられない」というように、成り行きに身を委ねるのがいいかもしれません。

(文・紫君/翻訳・藍彧)