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 ベルリンの壁が崩壊した2年後の1992年2月、衛兵だったインゲ・ヘンリットが裁判を受けた。罪状は、ベルリンの壁が崩壊する前に、彼が壁を越えようとした若者ゴフロイさんを射殺したことだった。

 ヘンリットの弁護士は、これらの衛兵たちは「命令を執行」をせざるを得なかったため、犯罪を構成しないと主張した。しかし、セオドア裁判官は、「衛兵として、上司の命令を執行しないと犯罪になりますが、撃ったが当たらなかったことは罪ではありません。健全な人間として、当時あなたは銃口を1センチ上げる権利がありました。これはあなたの良心と義務でもあります。世の中には、法律以外に良知があります。法律と良知が衝突する場合、良知は最高の行動規範であるべきです。命を尊重することはいかなる時と場所でも当てはまる普遍的原則です」と主張した。結局、ヘンリット衛兵は故意にゴフロイを射殺したとして有罪判決が下され、なおかつ仮釈放はなしでした。

 「ヘンリット事件」は「良知の基準」として広く知られている。「銃口を1センチ上げる」ことは、人間が邪悪な政治に直面するときの抵抗と自助であり、「人間の良知が現れる瞬間」でもある。

(翻訳・謝如初)