数千人の建設作業員が工事現場に閉じ込められ、1週間も外に出られない状況になっています。5回も採血された人もいますが、なぜこれほど繰り返す必要があるのか、説明はありません。数百人の作業員が住民への事前説明もなくマンションに移され、住民からは網戸さえ開けられないという声が上がっています。同じ頃、ネット上では、さらに恐ろしいうわさも広がっていました。中国海南省三亜市(さんあ)のあるホテルが、「ロシア人がペストを持ち込んだため封鎖された」というのです。

 米国の中国語メディア「大紀元」の10月31日の報道によると、三亜市吉陽(きつよう)区の複数の建設現場で、最近、デング熱の患者が確認されました。これらの現場では相次いで工事が中断され、作業員の宿舎がある生活区域と工事区域がともに封鎖されています。

 取材に応じた作業員の孫志勇(そんしゆう)は、自分が働く現場は約1週間封鎖されていると話しました。「1か所の現場で問題が出ると、周辺の現場もすべて作業が止められた。現場全体では4000~5000人はいるはずだ」。現場の外で部屋を借りて暮らしていた作業員は、「美麗之冠大樹ホテル」にまとめて移され、移送には合わせて20台近いバスが使われたといいます。

 一体、何人が感染したのでしょうか。感染者数は、今も公式には公表されていません。孫さんは「うちの現場では数十人は出たと思う。そうでなければ、ここまで厳しくする必要はない」と推測しています。感染者の中には、そのまま病院へ搬送された人もいるといいますが、孫さんは「公式には何も発表されていない」と話します。別の作業員、趙建国(ちょうけんこく)も取材に応じ、自分の現場には数百人がいたと説明しました。「デング熱で血液検査を受けた。採血は3回。給料も何日か支払われず、もう辞めた」。趙さんはすでに現場を離れています。「感染がこんなに深刻なのに、誰が安心して働けるんだ」

 孫さんによると、三亜市政府が現場の管理に乗り出してからは、「警察が24時間、出入り口を監視し、三亜市長も自ら現場に来て指揮を執った」といいます。作業員は自由に出入りできません。この時期は、ちょうど北京で中国共産党の第20期中央委員会第5回全体会議が開かれていた時期と重なります。

 中国建築第二工程局の海南支社で働く周大福(しゅうだいふく)も、取材に応じました。周さんの現場は2日間封鎖され、作業員は生活区域で隔離されていたといいます。現地ではドローンによる薬剤散布も行われました。作業員が最も納得できないのは、採血が繰り返されることです。「これまでに5回も採血された。封鎖される前だけでも、続けて4回受けている」。現場の担当者から理由の説明はなく、「採血を受ければ、封鎖が解除されて仕事に戻れるかもしれないと言われただけだ」と話しています。

 感染の影響は、工事現場の中だけにはとどまりませんでした。

 中国紙「新京報」の10月31日の報道によると、数百人の作業員が吉陽区のマンション「三亜恒大美麗之冠」に移され、全9棟のうち4棟に入居しました。住民の範(はん)さんは、大勢の作業員が廊下で何組かに分かれ、採血の順番を待っているのを目にしました。「作業員がいつ来たのか、住民には何の連絡もなかった。同意を求められたこともない」と話します。「家には赤ちゃんがいるけれど、怖くて外に連れ出せない。網戸さえ開けられない。そんな状態で何日も過ごした」

 吉陽区の春光地区住民委員会の職員は、「新京報」の取材に対し、このマンションがデング熱など蚊が媒介する感染症への対応で、一時滞在先として使われていることを認めました。ただし、感染が確認された患者を隔離する施設ではないと説明しています。吉陽区の建設現場では、それまでにデング熱とチクングニア熱の患者が確認され、発症した作業員は専用車で病院へ搬送されました。まだ発症していない作業員は、このマンションにまとめて移され、健康観察を受けていたといいます。三亜市疾病予防管理センターの職員によると、作業員はすでに全員、別の場所へ移っています。吉陽区の衛生健康委員会は、滞在中の検査結果はすべて陰性だったとしています。

 デング熱とチクングニア熱は、いずれもヤブカが媒介する感染症です。主な症状は発熱、関節痛、発疹で、通常、人から人へ直接感染することはありません。海南省では10月も、蚊が媒介する感染症が多発する時期に当たります。しかし、今回の吉陽区の建設現場で感染がどの程度広がっているのか、最初の感染者がどこから来たのかについて、今も公式な発表はありません。

 十分な情報がない中、ネット上ではさまざまな話が広まりました。そして、次に紹介するうわさが、人々の不安を一段と強めています。

 10月25日、海南省のある動画投稿者が、「うちのマンションの1棟が封鎖された」とする動画を公開しました。コメント欄には「大樹公館でも隔離されている人がいる」との書き込みがありました。原因はデング熱だという人もいれば、チクングニア熱だという人もいます。10月29日には、Xのアカウント「羅翔」が複数のスクリーンショットを投稿し、「三亜保利鳳凰ホテルが、ロシア人によるペストの持ち込みで封鎖され、少なくとも3日間は閉鎖される」と主張しました。画像に写った管理関係者向けのグループ通知には、生活区域と工事事務所を全面封鎖し、外出を厳禁とすること、出入り口には警察官と取り締まり担当職員を配置すること、封鎖期間は少なくとも3日間とすることが記されていました。ただし、この通知自体にはペストへの言及はなく、封鎖の理由も書かれていません。返信には「すでに生活区域に閉じ込められている。最低でも3日間だ」との書き込みや、すでに9日間隔離されている人がいるという話もありました。これらの情報はいずれも確認できていません。

 では、なぜ「ロシア人がペストを持ち込んだ」という話を信じる人がいるのでしょうか。その背景には、三亜市を訪れる観光客の事情があります。新華網によると、中国とロシアは2025年、相次いで相手国の国民を対象にビザ免除措置を試験的に導入しました。三亜市だけでなく、海南省全体でも、外国人観光客の出身国で最も多いのはロシアです。三亜市を訪れる海外からの観光客の4割以上を、ロシア人が占めるといいます。毎年10月からは、ロシア人観光客が寒い冬を避けて三亜市で休暇を過ごすシーズンに入ります。保利鳳凰ホテルは吉陽区の河東路にある4つ星ホテルで、ロシア人の家族連れに人気があります。

 また、10月初めには、ロシアのイルクーツクにあるペスト研究所の職員が、重症肺炎で死亡しました。ロシア側が公表した情報では、この職員がペストと確定診断されたとはされていません。それでも、中国語のネット上ではペストをめぐるうわさが広がりました。

 現時点で得られている情報を見ると、三亜市の建設現場でデング熱とチクングニア熱の患者が出たことについては、地元の行政担当者の説明と「新京報」の報道が根拠になっています。一方、三亜市でペストが発生したという話には、公式な発表も、それを裏付ける信頼できる情報源もありません。

 しかし、感染が一体いくつの建設現場に広がり、何人が感染し、封鎖がいつまで続くのか、行政側からはなかなか説明がありません。作業員と地域の住民は、繰り返される採血と、固く閉ざされた出入り口を見ながら、何が起きているのか推し量るしかないのです。

(翻訳・藍彧)