一つの台風が短期間に3度、中国大陸に上陸します。そして同じ年に、同じ街へ3つの台風が相次いで上陸します。これは映画のような話ではありません。2026年9月、中国東南部の沿岸で実際に起きた出来事です。気象観測史上でも極めて珍しいケースです。さらに異例なのは、この台風が一度「消えた」ことです。中国中央気象台が正式に勢力の衰退を発表し、番号の使用を中止したにもかかわらず、数日後、南シナ海で再び「復活」。勢力を取り戻し、再び上陸しました。いったい、この台風に何が起きたのでしょうか。

 2026年9月3日午前6時30分、台風18号は最大風速毎秒23メートル、風力9級で、福建省漳州市(しょうしゅうし)沿岸に上陸しました。これで、わずか1週間足らずの間に、中国大陸へ3度上陸したことになります。

 台風の影響は、上陸する前からすでに現れていました。9月1日以降、浙江省、福建省、広東省では相次いで激しい雨に見舞われました。浙江省蒼南県(そうなんけん)の三美村(さんびそん)では、24時間雨量が509ミリに達しました。これは、現地の通常の数カ月分に相当する降水量です。福建省寧徳市(ねいとくし)の点頭鎮(てんとうちん)では、1時間の最大雨量が108.9ミリに達し、排水機能が一時、まひ状態となりました。

 台風が上陸すると、被害はさらに拡大しました。福建省全域で大雨に対する最高レベルの緊急対応が発動され、泉州市(せんしゅうし)と漳州市では、小中学校や幼稚園が休校となり、沿岸部の観光地が閉鎖され、建設現場では工事が停止されました。広東省潮州市(ちょうしゅうし)や汕頭市(せんとうし)でも激しい風雨となりました。さらに内陸の江西省南部や湖南省南東部でも大雨となり、一部では記録的な豪雨に見舞われました。華東、華南の沿岸部では、8月だけでも複数の台風が相次いで襲来していたため、土壌はすでに大量の水を含み、飽和状態となっていました。温州市(おんしゅうし)や寧徳市などの山間部では鉄砲水や浸水が相次ぎ、多くの住民や漁業関係者が深夜に緊急避難しました。

 しかし、気象関係者を本当に驚かせたのは、この台風の極めて異例な進路でした。

 8月28日、台風18号は強い勢力で浙江省玉環市(ぎょくかんし)に上陸し、その1時間余り後には温州市に再び上陸しました。特に玉環市では、これより前に台風9号と台風13号も上陸していました。今回の台風18号を加えると、1年のうちに3つの台風が同じ場所に相次いで上陸したことになります。1949年以降、浙江省の気象観測史上初めてのことです。

 浙江省の複数の都市に大きな影響を与えた後、台風は陸地との摩擦や北側から張り出す高気圧の影響を受け、循環構造が急速に崩れていきました。8月30日、中央気象台は熱帯低気圧としての中心構造を維持できなくなったとして、正式に番号の使用を中止しました。通常であれば、この台風はここで終わるはずでした。

 ところが、残った渦は完全には消えませんでした。そのまま南下を続け、広東省西部を通過し、9月1日前後に南シナ海へ入りました。当時、南シナ海北西部の海面水温は異常に高く、28度を超えていました。さらに活発な南シナ海の夏季モンスーンが大量の水蒸気を供給し続けたことで、残った渦の中心に再び雲がまとまり始めました。そして中央気象台は、台風18号として番号の使用を再開しました。

 上陸、番号使用中止、海上での復活、そして再上陸。この一連の進路は、気象レーダーの進路図で見ると、まるで数字の「6」を描くような形になりました。気象史上でも極めて珍しいケースです。

 しかも、これで終わりではありません。中国国家気候センターによると、9月1日までに西北太平洋と南シナ海では今年すでに24個の台風が発生しており、平年同期を10.4個上回っています。気象当局は、9月全体では西北太平洋と南シナ海で5~7個の台風が発生し、そのうち2~3個が中国の華東、華南沿岸に上陸するか、大きな影響を与える可能性があると予測しています。一方、琉球諸島付近の海上では台風24号が発生し、台風18号の広大な雲のまとまりとともに、中国内陸部へ大量の水蒸気を送り込む状況となりました。気象専門家は特に、9月に発生する「秋台風」は勢力が強くなりやすく、進路も変化しやすいと警告しています。上陸時に南下する寒気とぶつかれば、より広範囲で激しい豪雨を引き起こす可能性があります。今年は、強い台風が北上し、華東から華北、さらに東北部まで影響を及ぼすリスクも指摘されています。

 その背景には、海面水温の上昇、モンスーンによる大量の水蒸気供給、大気循環の異常があります。気象学的には、いずれも合理的な説明ができます。しかし、こうした異例の現象が次々と重なっています。同じ年に3つの台風が同じ場所へ相次いで上陸し、一度番号の使用が中止された台風が再び「復活」して上陸し、今年の台風発生数も平年同期を大きく上回っています。この異例の集中ぶりは、多くの人の日常的な経験では理解しにくいほどです。そこから一部の人々は、気象学とは別の角度から、こうした現象はいったい何を意味しているのかと問い始めています。

 こうした問いかけは、中国の伝統文化では決して珍しいものではありません。

 中国の伝統的な考え方では、自然と人間社会は互いに深く関わり合っていると考えられてきました。これを「天人合一(てんじんごういつ)」と呼びます。天、地、人は互いに影響し合う一つの全体だと考えるものです。前漢の董仲舒(とう·ちゅうじょ)は、人間社会のあり方に応じて、天が自然現象を通じて反応するという考え方を体系化しました。董仲舒は、政治が道徳や正義を重んじる姿勢を失い、社会に大きな不正や人々の恨みが積み重なると、天は異常な自然災害を通じて、統治者に厳しい警告を発すると考えました。

 『漢書・五行志』『宋史・五行志』などの史料では、史官が豪雨や暴風といった異変を記録する際、当時の税負担や冤罪、言論の道が閉ざされていたことなど、社会統治上の問題も同時に記録することが少なくありませんでした。

 大きな災異を前に、古代の賢明な君主は強い畏れを抱いたとされています。質素な服に着替え、食事を減らし、自ら過ちを認める詔書を全国に出して、天に許しを請いました。同時に、臣下や民衆に朝廷の政策の問題点を率直に指摘するよう求め、穀物倉を開放して食料を配り、大赦を行い、冤罪を晴らすことで、天意に従い、人々の不満を和らげようとしました。

 現在、台風18号はすでに消滅しました。しかし、3度の上陸、「6」の字を描くような異例の進路、そして各地にもたらした記録的な豪雨は、この9月の気象記録に刻まれました。そして中国国家気候センターは、9月には西北太平洋と南シナ海で合わせて5~7個の台風が発生すると予測しています。激しさを増す台風の動きを前に、中国の伝統思想である「天人合一」が示してきたように、自然と人間社会は、決して互いに無関係な二本の平行線ではないと考える人々もいるのです。

(翻訳・藍彧)