夜中、突然の爆音が空を切り裂き、住宅街の窓ガラスが「ブーン」と大きく振動しました。駐車場では、車の盗難防止アラームが一斉に鳴り始めました。映画のワンシーンではありません。これは最近、江蘇省塩城市(こうそしょう・えんじょうし)の住民が実際に体験した出来事です。
ところが、中国当局からは、これについて一言の説明もありませんでした。それどころか奇妙なことに、「実弾射撃」に触れたニュース記事が、ひっそりと削除されました。では、塩城市で相次ぐこの爆音について、中国当局はいったい何を隠しているのでしょうか。
江蘇省塩城市で起きている異常な爆音は、一度だけではありません。8月20日夜、塩城市では突然、少なくとも2回の大きな爆発音が響きました。航空機のソニックブームのようにも聞こえ、爆音とともに窓ガラスがはっきりと振動し、路上に止めてあった複数の車の盗難防止アラームが一斉に鳴り出しました。地震だと思い、驚いて家の外へ飛び出して確認した住民もいたといいます。
8月25日夜にも、塩城市で再び低く重い爆音が響きました。今度は市街地の大部分で聞こえ、その夜、住民のSNSやマンションの住民グループでは、この話題で騒然となりました。「建物全体が揺れていた」と話す人もいれば、監視カメラの動画では、ベランダに置いてあった物まで揺れていたといいます。
さらに驚くことに、爆音が響いた瞬間、近くの養殖池の魚が驚いて一斉に跳ね、水面が大きく波打つ様子を捉えた動画もあります。このため養殖業者の間では、このような振動が続けば、養殖に影響が出るのではないかと不安が広がっています。
8月28日、Xで「羅翔~破幕推牆」と名乗るブロガーが、塩城市でその日も「また大きな爆音がした」と投稿しました。また、ネットユーザーの話として、現地では「数日おきに軍事演習をやっている」「最近の演習は8月16日から今まで続いている」と紹介し、演習がすでに1週間以上に及んでいるとしています。
このブロガーはコメント欄でさらに、爆音によって一部住民の自宅の窓ガラスが割れたとも述べ、非常に強い言葉で「人命を草のように扱っている」と批判しました。
では、現地の住民自身は何と話しているのでしょうか。塩城市の地元住民を名乗るネットユーザー「sshbs」は、さらに詳しく説明しています。爆音がする前には、まず空から「何かが力をためているような」低い音が聞こえ、「低く響く雷のようだった」と表現しています。その後、大きな爆音が響くといい、自分はこれまで生きてきて「こんな現象はまったく見たことがない」と話しています。
また、「ガラスが割れるほどなら、威力は相当なものだ」「新型の火砲やミサイルの試験ではないか」と推測する声もあります。
もちろん、中国当局の沈黙に矛先を向ける人も少なくありません。「塩城市では夜中に連日、空を揺るがす爆音がしている!当局は傲慢にも知らん顔を決め込み、住民を草のように扱って何の説明もしない!正体不明の爆音が相次ぎ、人々を不安に陥れているのに、当局からの発表はゼロ。安全について知る権利まで踏みにじられている」
では、ここで疑問が浮かびます。これらの爆音は、本当に通常の軍事演習なのでしょうか。現時点で当局が公表している唯一の手がかりを見てみましょう。
塩城海事局のウェブサイトでは実際に航行警報が出されており、8月28日から30日まで、毎日午前7時から11時、午後3時から7時にかけて、黄海南部の一部海域で実弾射撃を実施するため、船舶の進入を禁止するとしています。
これは現時点で、8月28日の爆音と時期が重なる唯一の公式情報です。しかし、この通知はあくまで通常の航行安全に関するものであり、それ以前に起きた複数回の爆音にはまったく触れていません。訓練の規模や参加する軍種、どのような兵器を使用するのかについても説明されていません。
つまり、中国当局が公表した内容と、住民が実際に感じた振動の激しさとの間には、大きな隔たりがあります。外部からの疑問が収まらない理由も、そこにあります。
さらに奇妙なのは、揚子晩報やネットイース(網易)など中国メディアによるこれまでの総合報道では、塩城市や近隣の連雲港市(れんうんこうし)沖、黄海南部では最近、実弾射撃訓練や航行警報が何度も出されており、今回が初めてではないと伝えられていたことです。
ところが、こうした内容を扱った関連報道の一つが、その後削除され、現在は元の掲載先で確認できなくなっています。単なる誤操作で削除されたのでしょうか。それとも、爆音と軍事演習を結び付けて考えてほしくない誰かがいるのでしょうか。現時点で答えはありません。
一方、ネット上で広く拡散している「軍事演習は台湾攻撃の準備だ」という説については、現在のところ、一部のブロガーが紹介したネットユーザーのコメントに見られるだけで、独立した情報源による裏付けはありません。
また、この出来事を「男女平等事件」などほかの社会問題と関連付け、「中国国内はすでに文化大革命2.0の時代に入った」「国内の怒りは100%に達している」と主張し、「まもなく権力奪取や抗議行動が起きる」とまで書き込むネットユーザーもいます。
ただし、こうした主張には感情的な要素が多く、具体的な証拠には乏しいのが現状です。今後、本当に実際の行動へと発展するのかは、現時点ではまだ分かりません。
一方で、中国当局が国内で日増しに深刻化するさまざまな社会的矛盾から国民の目をそらすため、危険を冒して台湾に対する軍事行動に踏み切る可能性もあると考えるネットユーザーもいます。
8月末の時点で、中国当局は、塩城市で連日続いている爆音の具体的な原因について、正式な説明をしていません。軍事訓練と直接関係しているのか、今後その規模が拡大するのかについても、公式な回答は出ていません。現地住民の疑問と不安は、今も募り続けています。
(翻訳・藍彧)
