何年も前に買った家が、いつまで待っても引き渡されません。購入者は、いったいどうすればいいのでしょうか。
最近、中国本土のSNSに投稿された複数の動画には、工事が止まったままの真っ暗なマンションで、自分の家の「内装工事」をする購入者たちの姿が映っています。内装もない部屋に入居し、水道も電気も通らず、エレベーターもなく、階段には手すりさえありません。住民は毎日、水を持って十数階まで階段を上ります。むき出しの壁に直接ペンキを塗り、コンクリートの床にマットを敷けば、そこが自分たちの家です。子どもたちは、暗くなる前に宿題を終わらせなければなりません。
こうした購入者にとって、入居は新居での暮らしを一足早く楽しむためではありません。ほかに選択肢がなくなるまで追い詰められた末の決断です。住宅の工事が止まっても、銀行への住宅ローンの返済は止まりません。新居に住めなくても、借りている家の家賃は払い続けなければなりません。収入だけではローンと家賃の両方を賄えなくなると、やむなく未完成の住宅に移り住む人もいます。自分で壁を塗り、床を整え、明かりや水、炊事の手段を何とか確保しているのです。
ネット上では、「これほど気の毒な住宅購入者はいない」と同情する声が相次ぎ、こんな疑問も上がっています。「各地の政府が解決すべき問題なのに、なぜ何もしないんだ。普通の人たちにツケを払わせるのか?」
実は、こうしたことは今回が初めてではありません。2020年にはすでに、昆明市の住宅団地「別様幸福城」で、失業や賃貸契約の終了などを理由に、30世帯余りの購入者が、何年も工事が止まっていた住宅に移り住んでいました。当時、建物には水道も電気もなく、ドアや窓さえ十分にそろっていない部屋もありました。購入者の卯(ぼう)さんは、妻と暮らしていた地下室を出て、自分たちが購入した18階の部屋に移りました。階段の補修や共用廊下の清掃、ドアや窓の取り付けに1か月近くかけ、その後、家具を少しずつ運び上げました。
2022年には、西安市の住宅団地「易合坊」で、300世帯近くの購入者が、工事の止まったマンションに次々と入居しました。一部の棟は2013年には最上階まで建物の骨組みが完成していましたが、その後も水道や電気は正式に使える状態になりませんでした。開発会社は2018年に経営破綻し、再建手続きに入りましたが、その後3年以上にわたって、事業を引き継ぐ適切な相手が見つかりませんでした。購入者は何年も待ち続け、家賃を払いながら住宅ローンも返済していました。コロナ禍で収入が減ると、家賃さえ払えなくなり、自分が買った未完成の住宅に移り住むしかなくなった人もいました。
曹英さん一家も、そのうちの一世帯です。曹さんは2011年に易合坊の住宅を購入し、ようやく入居できたのは11年後でした。しかし、「新居」と呼ばれるその部屋は、灰色のコンクリートの壁がむき出しで、水道も電気も正式には使えませんでした。夜、家の中を照らすのは、太陽光で充電するライト1つだけでした。
別の購入者である李天其(り·てんき)さん夫婦は、一時、夫婦合わせた月収が約18万円(8000元)しかなく、住宅ローンと家賃だけで14万円余り(6000元余り)を払っていました。家賃を節約するため、借りていた部屋を引き払い、未完成のマンションに移り住みました。住まいは28階ですが、エレベーターはありません。帰宅するたびに、20分かけて階段を上らなければなりません。家具も簡単には運び上げられず、李さんは弟と一緒に担いで運びました。もともと賃貸暮らしを終わらせるために家を買ったはずが、最後は家賃を払えなくなったために、未完成のマンションに住まざるを得なくなったのです。
2023年には、成都市で住宅を購入した「七七」さんが、長年続くローンと家賃の二重負担に耐えきれなくなり、正式に引き渡されていない自分の部屋に移り住みました。入居した時、建物全体はまだ工事現場のような状態でした。エレベーターは使えず、廊下には照明もなく、床にはほこりや建築資材が散乱していました。七七さんは約240万円(10万元)をかけて、広さ57平方メートルの部屋の内装工事を行い、壁や床がむき出しだった室内を暮らせる状態に整えました。しかし、電気はまだ正式に供給されていませんでした。屋外にある工事用の仮設配電盤から電線を室内に引き込むしかなく、使える電力も限られていたため、エアコンなど電力を多く使う家電は正常に使えませんでした。開発会社に、引き込んだ電線を撤去されたことさえありました。夜は、明かりのない部屋で寝るしかありませんでした。
入居する購入者が増えるにつれ、問題も増えていきました。仮設の電源では多くの機器を動かせず、数世帯が同時にエアコンをつけるだけで、ブレーカーが落ちることもあります。ガスもないため、料理や入浴にはIH調理器や、水に入れて湯を沸かす電熱ヒーターなどを使うしかありません。仮設の電線が地面を縦横に走り、安全上の危険も生じています。
2026年6月には、貴州省凱里(がいり)市でも、未完成の住宅の問題が伝えられました。同市の住宅団地「恒大城」の第2期Y区画では、住宅11棟の工事が約5年間止まったままです。この団地全体の総戸数は4000戸余りで、高層マンションの部分はすでに引き渡されていますが、Y区画にある比較的階数の少ない11棟は、まだ完成していません。外壁の仕上げに加え、水道や電気の供給設備、消防設備、緑地なども整っていません。入居しても水道が通常どおり使えず、近くまで水をくみに行く人もいます。電気は充電式の機器などでしのいでいます。雨が降ると水がたまり、蚊などの虫が発生し、風邪をひく住民も少なくありません。購入者によると、Y区画の11棟は合わせて90戸余りで、このうち50戸余りが販売済みです。引き渡しは当初、2022年7月の予定でした。多くの人は建物本体が完成した段階で購入し、あと1か月も工事をすれば引き渡されると思っていました。ところが、その直後に恒大の経営問題が表面化しました。購入者たちは資金を出し合って自分たちで工事を進めることも考えましたが、必要な資格がなく、違法な建築工事に当たるとして、実現できませんでした。
中国各地で、未完成の住宅に移り住む光景が、何年も前から繰り返されています。根本的な原因の1つは、完成前に住宅を販売する制度のもとで、集めた資金をどう管理し、誰がリスクを負うかという点にあります。この制度では、開発会社は住宅の購入代金を先に受け取り、その後に建設を進めることができます。しかし、本来は管理·監督のもとで、その住宅の建設に優先して使われるべき資金が、開発会社によって勝手にほかの用途へ流用されているのです。開発会社の資金繰りが行き詰まれば、工事は止まりかねません。それでも、そのリスクを背負うのは購入者であり、ローンの返済は続きます。
野村証券の報告によると、2022年末の時点で、中国全土には前売りされたまま完成していない住宅が約2000万戸ありました。2022年8月には、住宅の完成と引き渡しを進めるため、政府の政策に沿って融資を行う銀行を通じて、約4.7兆円(2000億元)規模の特別融資が始まりましたが、進み具合には地域によって差があります。購入者がローンの返済を止めて圧力をかけることも、簡単ではありません。返済を止めれば個人の信用情報に傷がつくおそれがあり、2022年には、それを理由に銀行から訴えられた購入者もいました。家賃を節約するために未完成のマンションへ移り住んでも、ローンの返済を止めることには踏み切れません。その背景には、こうした事情もあるのです。
中国のSNS「微博(ウェイボー)」のユーザー「牛勢老浪」は、購入者が個別に内装工事をして入居しても、工事が止まった根本的な問題は解決できないと指摘しています。団地の購入者が団結し、住宅や建設を担当する行政部門や、破産手続きを管理する管財人と交渉して、資産の売却などを進め、新たな資金を呼び込んで工事を再開させるべきだというのです。個人で部屋を整えるよりも、集団で行動するほうが、はるかに大きな力になります。工事を最後まで進めて完成検査を受け、正式に引き渡された住宅を手にすることこそが、長い目で見た解決策だとしています。
このネットユーザーの考えは、とても筋が通っています。しかし、実際に行動に移すのは容易ではありません。人々が目にしているのは、未完成の住宅を買った人たちが、次々と自分で「家を造る」ことを余儀なくされる姿です。こうした状態がいつまで続くのか、そして、次にそこへ移り住むのは誰なのか。それは、誰にも分かりません。
(翻訳・藍彧)
