四川省稲城亜丁景区(とうじょうあていけいく)でこのほど、中国人観光客のマナー違反が物議を醸しています。

 中国人ブロガーが投稿した動画によると、8月21日、多くの観光客が「植物を守るため、遊歩道から降りないでください」と書かれた看板を無視し、花畑に入り込んで草花を踏みつけながら、ポーズを取って写真を撮っていました。現場にいた男性観光客がたまりかねて大声で制止し、その様子を撮影した動画がネット上で広く拡散されています。男性は花畑に入っていた観光客に向かって、こう叫びました。

 「写真を撮っている人たち、下に入らないでください。みんなが下りていったら、いったい何の景色を見るんですか。あまりにもマナーが悪すぎます。全員上がってきてください。こんなにきれいな景色なのに、みんなが下に入ったら、花が全部踏みつぶされてしまいます」

 それでも多くの観光客が花畑の中で写真を撮り続けているのを見て、男性はさらに声を上げました。

 「下で写真を撮らないでください。遊びに来たのなら、最低限のマナーくらい守ってください。下で撮らないで。全員上がってきてください。全員上がって。下に入らないでください。花が全部踏みつぶされたら、こっちは何を見ればいいんですか。下で写真を撮らないでください」

 動画では、一部の観光客は注意を受けても気にする様子を見せず、そのまま花畑に残ってポーズを取り、写真を撮り続けています。撮影を終えるとすぐ立ち去る人もいました。動画には、現場にいた別の観光客がブロガーに対し、こうした行為を抑止するため、動画をネットに投稿して実態を明らかにするよう勧める声も収められています。

 同じような光景は、近年、中国各地で繰り返されています。浙江省杭州市浜江区(こうしゅうし·ひんこうく)にある「網紅花海」として知られるピンクミューリーの花畑では、写真を撮ろうとする大勢の人が周囲の柵を無視して中へ入り、花を踏みつけたり、花畑の中に全身を横たえて写真を撮ったりする行為が相次ぎました。記者が現場で、柵を越えてはいけないことを知っているかと尋ねたところ、多くの人は「すみません、1枚撮ったらすぐ出ます」と答えただけでした。聞こえないふりをする人や、「あなたに何の関係があるんですか」と逆に問い返す人までいました。

 この花畑を5年間管理してきた園主は、泣くに泣けない思いだといいます。ピンクミューリーは、花畑として見られるほどの規模になるまで丸3年かけて育てたにもかかわらず、わずか3日間で見る影もないほど踏み荒らされ、長年丹精込めて育ててきた努力がほとんど水の泡になったと話しています。

 浙江省寧波市(ねいはし)の蓀湖花海(そんこかかい)も例外ではありません。江北区洪塘街道(こうとうかいどう)にあるこの花畑では、コスモスやヒナゲシなど、さまざまな花が栽培されています。開花期間が長く、色とりどりの花を楽しめることから、長年、地元住民や観光客に人気の撮影スポットとなり、寧波市民の「裏庭」とも呼ばれてきました。

 しかし、花の季節になるたびに、管理側が設けた観賞用の遊歩道を無視し、わざわざ回り込んで花畑の奥深くまで入り、写真を撮る観光客が後を絶ちません。その結果、広い範囲で花や草が踏み倒されています。管理側は何度も現場に注意書きを掲示し、巡回を強化していますが、観光客が勝手に花畑へ入り込む行為をなくすことはできていません。

 福建省福州市にある花畑公園も、同じ問題に直面しています。公園側が公表したデータによると、週末や祝日の1日あたりの来園者数は、多い日には7万から8万人に達します。管理事務所は混雑する時間帯に10人以上の警備員やボランティアを増員して巡回や注意喚起を行い、園内放送、看板、立ち入り防止線など、さまざまな方法で観光客を誘導しています。

 それでも一部の観光客は「映える写真」を撮るため、園芸作業員が2か月近くかけて丹精込めて育て、ようやく満開になった花畑にそのまま入り込んでしまいます。公園側も対応に頭を悩ませています。

 草花を踏みつけるだけではありません。写真を撮るために桜の木を激しく揺らしたり、木に登ったりする行為も、長年にわたり批判されています。今年4月6日、上海市顧村公園(こそんこうえん)近くの外環林帯で、目撃者がある光景を撮影しました。若い女性が桜の木に登り、木の上に立ってポーズを取り、下にいた同行者が写真を撮っていたのです。

 ところが、桜の木は女性の重さに耐えきれず、木全体が地面に倒れ、根も大きく損傷しました。2人はその後、すぐに電動バイクに乗って現場を立ち去りました。

 ネット上の別の動画には、一部の観光客が「桜吹雪」を演出するため、桜の木の幹を力いっぱい揺さぶり、大量の花びらを散らす様子も映っています。

 こうした行為は以前から繰り返されてきました。2016年にはすでに、遼寧省旅順市太陽溝(りょじゅんし·たいようこう)、江蘇省南京市、北京の玉淵潭公園(ぎょくえんたんこうえん)などで、観光客が木に登って枝を揺らしたり、幹を蹴ったり、さらには枝を折って「花吹雪」を演出し、写真を撮る様子が相次いで報じられました。当時、北京の玉淵潭公園では、花木の枝を折った観光客が実際に罰金を科されたケースもありました。

 花畑から桜の木まで、こうしたマナー違反は中国各地の観光地で毎年のように繰り返されています。そのたびに世論から強い批判を浴びていますが、いまだに根絶には至っていません。

 一部の評論では、近年のショート動画プラットフォームの急速な普及と、「SNS映えスポット」を巡る文化の広がりも無関係ではないと指摘されています。観光客の中には、カメラの前で注目を集め、より見栄えのする写真や動画を撮ろうとするあまり、公共の景観を自分の撮影道具のように扱い、注意看板や周囲の人への配慮を無視する人がいるというのです。

 また、中国各地の観光地では、長年にわたり強制力のある規制よりも、人による注意や呼びかけに頼ってきたとの分析もあります。ルールに違反しても代償が極めて小さく、草花や樹木を傷つけたことで実質的な処罰を受ける人はほとんどいません。そのため、「大勢がやれば処罰されない」という甘い考えを、結果的に助長していると指摘されています。

 さらに一部のネットユーザーは、この問題の背景に公共教育や社会的な監督の仕組みの不足があるとみています。急速な都市化と経済発展が進む中、市民教育や公共空間に対する意識が十分に追いつかず、さらに顔見知り同士のつながりが薄れ、見知らぬ人同士が暮らす社会では、互いの目や恥の意識による抑止力も弱まっています。その結果、「誰にも注意されなければ何をしても構わない」という心理が、人の集まる観光地でさらに増幅されているというのです。

 海外に住む一部の中国人からは、中国共産党は一貫して政権の支配を何よりも重視してきたため、国民に対する教育でも、共産党やその指導者に忠誠を尽くすことばかりを強調し、社会の公共道徳に関する教育には無関心で、中国社会のモラル低下を放置してきたとの分析も出ています。

 こうした説明はそれぞれ異なる角度からのものですが、いずれも一つの現実を指し示しています。「花を楽しむ」ことが「花を傷つける」ことにならないためには、社会全体の制度的な規制と、市民意識の向上を同時に進める必要があるのかもしれません。しかし、中国共産党の統治下にある中国で、それは実現できるのでしょうか。

(翻訳·藍彧)