4750万人。これは、いったいどれほどの数字なのでしょうか。この人数は、韓国の総人口を上回る規模です。そして、この数字が示しているのは、現在の中国におけるホームレスの総数です。2020年のコロナ禍前に中国当局が公表した統計の5倍以上にあたります。

 さらに意外なのは、中国当局が最近、ひそかに呼び方を変えていることです。以前はこうした人々を「路上生活者や物乞いをする人々」と呼んでいましたが、現在、政府の文書には新たに「流散者」という言葉が登場しています。

 呼び方が変わった背景には、いったいどのようなシグナルが隠されているのでしょうか。これからご覧いただく光景は、「世界第2位の経済大国」に対するイメージを覆すかもしれません。

 米国のコラムニストで政治評論家の章家敦(しょう・かとん)は最近、『ザ・ヒル』に寄稿した記事で、昨年のある報告書を引用し、現在、中国のホームレスは4750万人に達し、2020年のコロナ禍前に中国当局が公表した統計の5倍以上になっていると指摘しました。今年、中国経済が明らかに悪化していることを考えれば、路上生活者の数は今後も増え続け、減ることはないとしています。

 章家敦によると、中国のネット上には、路上や公園で寝泊まりする人々の写真が大量に出回っており、その多くが若者です。中国当局の報告書も、中国の若者の失業率が上昇していることを認めざるを得なくなっています。仕事のない多くの人が、国が運営するサービスセンターへ行き、無料のWi-Fiやエアコン、食べ物、水を利用しているといいます。深セン市だけでも、こうしたサービスセンターを訪れる若者は1日3000人近くに上ります。

 数字だけでは、まだ実感が湧かないかもしれません。ではここから、中国の街頭に直接カメラを向けてみましょう。冷たい統計数字の一つ一つが、実際にはどのような人々の姿として現れているのかが見えてきます。

 7月29日、広東省東莞市(とうかんし)の長平東駅(ちょうへいひがしえき)で、ネットユーザーが、失業者たちがあちこちで地面に横になって眠る様子を撮影しました。人々は汚れて混乱した環境の中で、一夜を過ごさざるを得ない状況でした。投稿者はこう嘆いています。「これが中国の出稼ぎ労働者の現実だ。仕事が見つからない人が大勢いて、最後には路上で寝るしかなくなっている」

 別の深セン市で撮影された動画には、さらに生々しい会話と現地の様子が記録されています。

 ある投稿者が、竜崗区(りゅうこうく)の三合人材市場(さんごうじんざいしじょう)近くにある歩道橋から下を見下ろし、こう話しています。「三合人材市場のそばの歩道橋から下を見ると、地面にそのまま横になっている日雇い労働者ばかりだ。一晩約315円(15元)のベッド代すら払えない。だから階段に適当に横になるしかない。見てくれ、これが深センだ」

 別の投稿者は、自分の置かれている状況についてこう話しています。「この2日くらいで、自分も公園で寝ることになるかもしれない。今は仕事もない。初めて深センに来て、こんなざまになるなんて思ってもみなかった。この年になって、どうしてまともな仕事一つ見つからないんだ。しかも公園で寝るところまで落ちてしまった。深センでは橋の下で寝ている人を本当にたくさん見た。自分もあの人たちと同じになるかもしれない」

 しかし、次の会話こそ、今回の動画で最も胸に刺さる部分です。カメラに映るこの男性は、本当に一円も持っていません。

 動画にはさらに、橋の下にいた男性との会話も記録されています。女性投稿者が近づき、「こんな橋の下で誰が注文するんだろう。あれ、お客さんかな?」と尋ねます。相手が答えた後、次のようなやり取りが続きました。

 女:「こんにちは。携帯電話の買い取りを申し込んだのはあなたですか?」

 男:「そうです」

 女:「どうしてこんな場所から申し込んだんですか?」

 男:「雨が降っても、ほかに雨宿りする場所がないんだ。普段から外で寝ている」

 女:「外で寝ているんですか?どうしてホテルに泊まらないんですか?」

 男:「今、手元に一円もない。まず携帯を売ってから考えるよ」

 女:「どうやって生活しているんですか?」

 男:「三和大神が集まるところで日雇いの仕事をしている。腹が減って金がなければ、働きに行くしかない。普段はここへ来て路上で寝ている。仕方ないよ。もう帰る家がないんだ」

 女:「ここで寝ているのは、あなただけですか?」

 男:「今年に入ってから、だいたい20人から30人くらいが寝ている」

 女:「今ここで寝ると寒くないですか?」

 男:「そんなのは大した問題じゃない。寒ければ布団を拾ってくる。交差点のところに回収ボックスがあるだろ。そこから拾ってくればいい。一番の問題は、飯を食う金がないことだ。まず腹いっぱい食えればそれでいい。一日生きられれば、一日生きるだけだよ」

 この会話は、現在の中国で底辺に追いやられた出稼ぎ労働者の生活を映し出す縮図ともいえます。貯金もなく、住む場所もなく、日雇い労働で食いつなぎ、雨風をしのぐために橋の下で寝る。それが日常になっているのです。

 一人の人間が生きていくために、身分を証明するものさえなくなり、携帯電話一台まで売らなければならない。では、いったい何が、これほど多くの若者をここまで追い詰めたのでしょうか。

 章家敦は記事の中で、中国経済の急速な悪化に加え、中国当局が近年、大々的に推進してきた自動化政策が、ホームレスの増加を加速させる直接的な原因になっていると指摘しています。

 複数の専門家は、この問題が深刻化した根本的な原因として、コロナ禍以降続く経済的な圧力、とりわけ若者の深刻な失業問題が長期にわたって改善されていないことを挙げています。記事はUPI通信の報道を引用し、若者がホームレスになる割合が高まっていることは、労働市場にかかる持続的な圧力と密接に関係しており、この現象そのものが、中国社会が崩壊へ向かっていることを示す大きな兆候だとしています。

 路上生活に陥った人の多くは、社会信用スコアが低いため、銀行口座を開設できず、高速鉄道のチケットも購入できず、まともな仕事も見つけられず、最終的に路上をさまようことになるといいます。

 一方、もともと社会信用スコアが低くない中国人の中にも、自ら「社会の周縁」に身を置こうとする人が出ています。大勢の若者が集団で「寝そべり」や「投げやり」な生き方を選び、経済的に希望が見えず、政治的にも先行きが暗い体制に対して、消極的な抵抗を示しているのです。ごく一部の国外へ出ることのできる人は遠く海外へ去る道を選びます。しかし、大多数の中国人にとって、中国を離れることはそもそも不可能です。「寝そべり」や「投げやり」、さらには路上生活に至ることこそが、目の前にある現実なのです。

 景気の悪化は世界各国で起きています。それなのに、なぜ中国では若者たちが「寝そべり」を選び、さらには路上生活にまで追い込まれているのでしょうか。その答えは、もっと深いところにあります。

 こうした社会全体に広がる無力感は、理由もなく生まれたものではありません。欧州の中国研究シンクタンクSinopsisの上級研究員チャールズ・バートンと、「アメリカ・ファースト政策研究所」の中国政策上級ディレクター、ピエロ・トッツィはいずれも、習近平の統治モデルについて「社会を全面的にコントロールするもの」だと見ています。絶対的な服従を求めるため、習近平は自らの意思を社会のあらゆる面に押し付け、中国人の活力と精神を奪っているというのです。若者が出口を見つけられず、希望を失い、「寝そべり」を選び、さらには路上生活に陥ることは、こうした体制的な抑圧がもたらす直接的な結果だとしています。

 そして、こうした状況がもたらす影響は、想像以上に深刻です。すでに、一つの国を形づくる最も根本的なもの、つまり「人」そのものを変え始めています。

 統計上の数字の背後に広がる社会の実像から、路上生活者自身の生々しい証言、そして専門家による体制的な原因の分析まで、さまざまな兆候が重なり合い、一つの結論を示しています。ホームレスの増加は、単なる経済現象ではありません。それは、現在の中国社会の姿を映し出す鏡でもあるのです。

 「その日その日を生き抜くだけさ」。若者さえ希望を諦め始めた社会は、この先どこへ向かうのでしょうか。

(翻訳・藍彧)