もし、ある都市の葬儀場で、毎日火葬される遺体の数が倍増しているのに、当局の感染状況の発表には「死亡1例」としか書かれていなかったら、どちらの数字を信じますか?

 中国で新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しています。各地の病院ではベッドが足りず、廊下や通路に臨時ベッドを置くのが当たり前となり、自分で折りたたみベッドを持ち込み、診察室の外で順番を待つ患者までいます。しかし、最も大きな負担を受けているのは、実は病院ではなく、葬儀業界です。

 中国疾病予防控制センターが公表したデータによると、2026年7月、中国全土で新たに確認された新型コロナウイルス感染者は52万2000人に達し、6月から5.6倍増えました。重症者は487人で、感染者数は増加傾向が続いています。

 しかし、死亡者として報告されたのは、わずか1人でした。この数字は、葬儀業者から外部に伝わっている状況とは大きくかけ離れています。当局が長年にわたり感染状況のデータを隠してきたこともあり、この発表の信ぴょう性が再び疑問視されています。

 実際、感染拡大が始まって以来、中国当局が発表する感染者数と死亡者数については、実態と大きくかけ離れているとの指摘が繰り返されてきまました。そのため各地の人々は、火葬の順番待ちや葬儀業界の人手不足といった間接的な兆候から、感染の本当の規模を判断する傾向があります。遺体の数は、感染者数のデータのように、何重にもふるいにかけ、何重にも覆い隠すことができないからです。

 河北省衛生健康委員会の職員、李さんは、52万2000人という数字は病院を受診して登録された患者だけで、実際の感染者はこれをはるかに上回ると明かしました。「今、新型コロナが大流行している。陽性者がものすごい勢いで増えていて、病院でも感染している人が多い。ベッドが足りるわけがない。人が亡くなっていることも知っているし、多くの場所で火葬の順番待ちが起きている。今は公表してはいけない情報がたくさんあって、口にすることも許されていない」

 李は、多くの軽症者はそもそも病院を受診せず、体が本当に耐えられなくなって初めて病院に行くと話しています。つまり、中国当局が発表した52万2000人は、氷山の一角にすぎない可能性が高いということです。

 李によると、多くの人が風邪だと思い込み、十分な警戒をしていないことに加え、ちょうど学生の夏休みに入り、多くの家庭が旅行に出かけているため、ウイルスがさらに広がっています。一人が感染すると家族全員が感染し、一部の地域では、同じ住宅団地の複数世帯が相次いで倒れるケースまで出ているといいます。感染者の急増に伴い、新型コロナウイルスの治療薬も品薄になっています。「新型コロナの治療薬は、薬局では売らせてもらえない。病院によっては置いていないところもある。病院に行く人が増えて品薄になっていて、県の病院にはないかもしれない。飲めば必ず治ると思わないほうがいい。100%効くわけじゃない。効くのも40%余りだろう。48時間を過ぎたら、飲んでもほとんど意味がない」

 薬の供給不足に加えて効果も限定的なため、多くの患者は自分自身の免疫力だけを頼りに耐えるしかなく、これが重症化や突然死のリスクをある程度高めている可能性があります。

 では、感染の実態を最も反映しているとされる葬儀業界は、いったいどのような状況なのでしょうか。

 大連市のある葬儀会社の責任者、王さんは、以前は1日に平均7、8体の遺体を搬送していましたが、現在はその数が倍増し、多い日には1日30体を搬送したこともあると明かしました。例年、7、8月は葬儀業界にとって閑散期で、火葬場で順番待ちをする必要はありませんでした。しかし、現在はまったく違うといいます。「火葬場は例年7、8月なら並ぶ必要はない。でも今は順番待ちだ。昨日も一昨日も90体以上、120体、130体と増えている。実際、本当に忙しい。病気で亡くなる人もいるし、突然死が多い。亡くなるのは、全体的に50代、60代が多い」

 王さんは、これほどの規模で火葬の順番待ちが発生するのは、長年この仕事をしてきた中でも極めて珍しいと話しています。

 仕事柄、頻繁に病院へ出入りし、遺体にも接触するため、葬儀業界で働く人たちは感染リスクが非常に高く、すでに多くの人が体調を崩したまま働いています。「忙しくなるほど病気になり、病気になってもさらに忙しくなる」という悪循環に陥っています。

 遼寧省の葬儀従事者、張さんは、自身も風邪の症状が何日も治らないまま、無理をして仕事を続けていると話しました。「みんな風邪をひいている。あちこちで次々と感染が広がっている。私も風邪をひいて、まだ治っていない。疲れ切って、夜中に具合が悪くなって、そのまま倒れた。ベッドから起き上がれないほどだった。この仕事をしていると、下手したら命と引き換えに金を稼いでいるようなものだ。徳を積むようなことをしないとな。もっと善いことをしないと」

 張さんにとって、葬儀の仕事はもともと一般の人には想像しにくいほど大きな精神的、肉体的負担を伴います。そこに今は感染リスクまで重なり、さらに厳しい状況となっています。それでも仕事への責任から、体調を崩したまま働き続けているといいます。

 山東省の葬儀従事者、劉さんは、2日間休みを取って、ようやく熱が下がったと話しました。今回の感染拡大は、これまで経験したことがないほど深刻だといいます。「休みを取って、2日間休んで、やっと熱が下がった。こんなにひどいのは初めてだ。あのコロナ禍の時でさえ、ここまでひどくなかった。仕事から帰ってきたら鼻が詰まって、気分も悪くて、全身に力が入らない感じだった」

 今回の感染拡大を振り返ると、その兆候は実は2025年11月にはすでに現れていました。当時、上海や山西省などの人々から、学校が感染拡大の中心となり、多くの学生が感染して学校を休み、病院を受診しているとの情報が相次ぎました。地域の診療所も連日患者であふれていましたが、外向けには一律に「風邪」と説明され、「新型コロナウイルス」という言葉は使われませんでした。

 2025年12月になると、感染はさらに中国各地へ広がり、浙江省寧波市、安徽省(あんきしょう)、湖北省、寧夏回族自治区などの葬儀場が相次いで逼迫しました。高齢者の死亡が相次ぎ、冬至の前後にピークを迎えました。若者の突然死や重い病気で亡くなるケースも明らかに増え、一部の農村では、医療費を負担できず、自ら命を絶つ高齢者までいました。

 それから半年が過ぎ、2026年夏に入っても、この感染拡大は収まるどころか、夏休みに入った学生の帰省や旅行、大規模な人の移動によって再び勢いを増しています。学校から地域社会へ、冬から夏へと感染が続く状況となっています。そして、火葬場で順番待ちが発生する現象も、昨年末には高齢者が中心だったのに対し、現在では50代、60代の突然死が目立って増える状況へと広がっています。

 一方は、当局発表の「死亡1例」。もう一方は、火葬場へ搬送される遺体の数が倍増しているという現実です。この二つの数字のうち、どちらが本当の中国の姿なのでしょうか。

(翻訳・藍彧)