7月に入り、中国では複数の台風や大雨による被害が相次ぎました。広西チワン族自治区では複数のダムが決壊し、広い範囲の村や町が洪水に飲み込まれました。しかし、被災地への救助活動が遅れたことなどから、現地の人々の間には不満が広がっています。
先日、被災地で撮影された一枚の写真がネット上で大きな話題になりました。公衆トイレのドアに、赤い文字で「習近平は退陣しろ」「広西の洪水、お前はどこで死んでるんだ」といった強い言葉が書き殴られていたのです。ネット上では「これは血で書かれた抗議だ」「多くの一般市民の心の声を代弁している」といった反応が見られました。
このような強い言葉が書かれた背景には、今回の水害の深刻さがあります。7月6日、広西チワン族自治区の南寧市横州にある六藍ダムなど、複数のダムや川で水があふれたり決壊したりしました。決壊したダムからの水は低い土地に一気に流れ込み、下流にある複数の村や町をあっという間に飲み込みました。被害は数十キロ離れた貴港市にまで達したとされています。現地の住民は、逃げる時間も全くないまま、家ごと濁流に流された人々が多数いたと証言しています。
被災地はすぐに孤立状態となりましたが、公的な救助活動はなかなか行われませんでした。洪水の被害を受けた村々では、水が建物の3階の高さにまで達した場所もあり、多くの被災者が屋上に逃げて救助を待ちました。貴港市では1万人以上の生徒や教師が学校の上層階に取り残され、保護者たちが自らゴムボートで物資を届ける事態になったと報告されています。
また、SNS上では、濁流に流された養殖場から多数の毒蛇が逃げ出し、被災者が噛まれる被害が出たという情報も広がりました。水面には遺体が浮かび、数日間何も食べていない高齢者が、ようやく到着した民間のボランティアに食べ物を求める姿を映した動画も投稿されています。しかし、自発的に集まった民間の救助隊でさえ、活動を制限されることがあったという現地の声もあります。
被災者が厳しい状況に置かれている中、中国政府は7月7日、ベネズエラに対して新たに1億元日本円でおよそ20億円の資金援助を行い、すでに80トンの支援物資を届けたと発表しました。このニュースは、インターネット上で大きな反発を招きました。コメント欄には「広西への救援物資はいつ届くのか」「自国で深刻な災害が起きているのに、他国への支援を優先するのは信じられない」といった声が殺到しました。その後、当局はインターネット上の批判的なコメントを次々と削除しました。しかし、「当局にとってベネズエラは利用価値があるが、自分たちは使い捨ての資源だ」と嘆く書き込みが広がり続けました。
さらに問題となっているのは、被害の規模に関する公式発表と現地の状況との大きなずれです。被災から数日経った7月9日、当局は「全区で39人が死亡、9人が行方不明」と発表しました。その後、この数字は更新されていません。しかし、被害の大きかった地域の一部の住民は、メディアの取材に対して「実際の死者数は千人を超えるのではないか」と語っています。また、逃げる時間がなく押し流された人が多く、泥の下に埋もれてしまった村もあると伝えられています。
水が引くにつれて、被災地では事後処理が始まり、その被害の大きさを物語りました。インターネット上に物資調達の指示書とされる画像が流出しました。その画像には、7月12日の1日だけで、被害の大きかった雲表鎮の拠点に250個の遺体袋が届けられたと記されていました。現地のボランティアによると、遺体が泥に埋もれている可能性があるため、重機を使った撤去作業は慎重に行われているとのことです。遺体が見つかった際には身元確認のために遺体の写真が住民のチャットグループに送られているという証言もあります。
現在、被害の大きい地域への立ち入りは厳しく制限されており、外部の人間が入る際には事前の申告が必要になっています。被災地の惨状を映した多くの動画はインターネット上から削除されており、投稿した人のアカウントが凍結される事例も報告されています。当局から支給されるわずかな補助金では生活を立て直せないと、生き残った人々は深い無力感を抱えています。情報統制によって被害の全容が公にされない現実の中で、公衆トイレのドアに書き殴られた言葉は、行き場を失った人々の切実な思いをインターネット上に残す結果となりました。
(翻訳・吉原木子)
