「この汚水、飲めるか? 飲みたくなくても飲まなきゃならないんだ」

 これはあるネットブロガーが、湖北省黄岡市団風県(だんぷうけん)総路咀鎮(そうろしそちん)の飲用水取水口のそばで、カメラに向かって語った言葉です。

 彼の背後には、「総路咀飲用水水源一級保護区に入りました」と白文字で書かれた緑色の看板が立っていました。しかし、その看板のすぐ横には、黒い泡が浮かび、酸っぱいような腐敗臭を放つ汚水の溝が流れていたのです。

 このブロガーは、地元住民からの情報提供を受けて現場へ向かいました。現地に到着した瞬間から強烈な悪臭が漂っていたといいます。近づいてみると、水面には緑色の浮草が浮いているものの、「その下の水は全部真っ黒だった」と説明しました。彼は石を一つ拾って水中へ投げ込みました。すると黒い汚水が一気に湧き上がります。「糞尿混じりの排水がほとんどそのまま流されているじゃないか。本当にひどい」

 さらに衝撃的だったのは、その悪臭を放つ排水路からそう遠くない場所で、水道施設のポンプが大きな音を立てながら稼働していたことでした。ブロガーは塀越しに、ポンプの稼働音を聞き取りました。塀の反対側には、「生命の源 安全第一」「科学的に水を使おう 浪費は恥だ」といったスローガンが掲げられていました。しかし彼は黒い排水路を指さしながら、「本当に恥ずべきなのは、今の現実の方だ」と語りました。

 その後の調査で、ブロガーは汚染源とみられる場所を突き止めます。そこには、鶏糞を頻繁に運び込むトラックや、建設廃材が大量に積み上げられた埋立地がありました。地元住民によると、養鶏場から出た鶏糞やごみが密かに地下へ埋められ、その上を建設廃材で覆い隠していたといいます。ブロガーが近づいて確認すると、地面に掘られた溝からは黒い液体が流れ出していました。「こんな状態でまともな農地と言えるのか」と語りました。水面には発酵によって生じた気泡が無数に浮かび、さらに石を投げ込むと、下から黒い汚水が次々と湧き上がってきました。

 中国の「飲用水水源保護区汚染防止管理規定」では、一級飲用水水源保護区内に排水口を設置することや、廃棄物、ごみ、その他の汚染物質を堆積させることを禁止しています。このような区域では、水道水源への汚染物質流入を防ぐため、最も厳格な環境保護措置が求められています。

 しかし現在までのところ、湖北省団風県当局は動画で指摘された内容について正式な説明を行っておらず、調査の有無についても明らかにしていません。動画が公開されて数日が経過した後も、地元当局からの公式発表は確認されていません。一部のネットユーザーからは、関連する議論そのものが抑え込まれているのではないかとの声も上がっています。

 この配信動画は大きな反響を呼びました。「住民が糞尿混じりの水を飲まされているのに、役人は何もしないのか」と怒りをあらわにする声も少なくありません。多くのネットユーザーは、養鶏場が一級水源保護区のすぐ近くでこれほど大胆に鶏糞を埋め立てられる背景には、何らかの後ろ盾が存在するのではないかと推測しています。地元当局が見て見ぬふりをしてきたからこそ、この状況が長年続いてきたのではないかというのです。現地住民は声を上げたくても上げられず、やむなくブロガーに情報提供し、ネット世論の力に期待するしかない状況に置かれているといいます。

 その一方で、湖北省から数百キロ離れた河南省でも、飲料水の安全を巡る事件が発生しました。5月19日午後9時ごろから、河南省開封市尉氏県では浄水場の主要送水管が破裂し、大規模な断水が発生しました。ところが断水の前後から、多数の住民が突然嘔吐や下痢の症状を訴え始めたのです。こうして、一つの公衆衛生上の緊急事態が静かに広がっていきました。

 事件発生直後、SNSには関連動画が次々と投稿されました。病院の待合室は患者であふれ、多くが高齢者や子ども、学生でした。患者たちは腹痛やめまい、発熱などの症状を訴えていました。ある住民は、19日の夜までは普段通り水道水を使用していたものの、断水後に給水が再開されてから間もなく家族全員が次々と体調を崩したと振り返ります。

 市民の牛さん(女性)はメディアに対し、「大人二人と子ども一人の家族で、ほかに怪しいものは食べていないのに、19日の夜から腹痛と下痢が始まった。そのため、料理にはペットボトルの飲料水を使わざるを得なくなった」と語りました。また、市民の李丹さんは、「長女がめまいと腹痛を訴え、診療所で薬をもらうまで1時間も並ばなければならなかった」と証言しました。5月21日の時点でも体調不良を訴える住民は多く、複数の学校で大量の欠席者が発生していました。

 当局の発表によると、異常の原因は5月19日の大雨によって雨水が水源井の一つに逆流し、飲用水が汚染されたことにあるとされています。尉氏県は直ちに緊急対応を開始し、県内の医療機関を総動員して患者対応を実施しました。さらに周辺地域から飲料水を緊急調達し、住民へ配布しました。

 また、県内すべての水源井を検査した結果、問題が確認されたのは一つの水源井のみで、その他の水質は基準を満たしていたと説明しています。汚染が確認された水源井はすでに使用停止となり、貯水池や給水管の排水・消毒作業も実施されたといいます。当局は、受診した住民の中に重症者は確認されておらず、多くがすでに帰宅したと発表しました。さらに今回の問題を深刻に受け止め、水道管理体制を全面的に強化するとともに、責任を負う組織や関係者に対して法に基づく処分を行うとしています。

 しかし、この説明に納得していないネットユーザーも少なくありません。当局は感染者数や被害規模を公表しておらず、説明があまりにも簡略すぎるというのです。省レベル、あるいはさらに上級機関による徹底調査を求める声も上がっています。あるネットユーザーは、「雨水が原因なら、なぜ一つの水源井だけが汚染されたのか」と疑問を呈しました。また別の人は、「子どもが以前から水道水の味がおかしいと言っていたが気にしていなかった。今回の事件で初めて、水道システムそのものに以前から問題があったのではないかと気づいた。当局の説明は到底信じられない」と投稿しています。

 実際、こうした飲料水の安全問題は近年、中国各地で繰り返し発生しています。昨年7月には、浙江省杭州市余杭区で大量の住民が水道水の悪臭や変色、黒い沈殿物の発生を訴えました。地元からの情報では、汚水管が誤って給水管に接続されたことが原因とされており、住民は知らないうちに汚染された水を飲んでいたといわれています。

 湖北・団風県の鶏糞流出問題。河南・尉氏県の雨水逆流による汚染問題。そして浙江・余杭区の汚水混入問題。安全な飲み水は本来、現代社会における最も基本的な生活基盤の一つです。しかし、その最低限の安全ラインが何度も破られています。そして多くの場合、住民にできることは動画を撮影し、ネットに投稿し、いつ来るか分からない説明や回答を待つことだけなのです。

(翻訳・藍彧)