2025年、中国のテレビ市場と従来型テレビメディアが同時に深刻な不況に直面しています。中国電子映像業界協会や市場調査機関のデータによると、2025年の中国のカラーテレビ販売台数は約2763万台となり、この10年で最低を記録しました。2016年前後には5000万台を超えていたピーク時と比べると、ほぼ半減しています。
その一方で、中国各地の放送局もかつてない縮小の波に飲み込まれています。公開資料によると、2023年末までに、すでに約700の県級テレビ局が放送停止、統合、あるいは別組織への転換を行いました。さらに、全国で約2000の地方テレビ局が経営危機に直面しているとされています。
かつて家庭の近代化を象徴していたテレビは、今では中国の多くの家庭で「置物」のような存在になりつつあります。北京の家電量販店の販売員はメディアの取材に対し、「近年はテレビの買い替え頻度が明らかに下がっている。古いテレビを使い続けても、積極的に買い替えようとしない人が増えている」と話しています。
中には、新築住宅を購入しても、最初からテレビ用の壁を作らず、代わりにプロジェクターを設置したり、スマートフォンやタブレットだけで動画や娯楽コンテンツを視聴したりする若者も増えています。
統計では、中国のスマートフォン利用者は今も拡大を続けており、ショート動画プラットフォームが急速に人々の時間を奪っています。ティックトック、中国版YouTubeとも言われる「ビリビリ」、さらに「小紅書」などの新興メディアは、すでに若者世代にとって従来のテレビに代わる主要な娯楽手段になっています。
多くの利用者は、「テレビ番組よりも、ショート動画やライブ配信の方が内容の更新が早く、今の生活リズムに合っている」と話しています。
一方で、高齢者層もスマートテレビに満足しているわけではありません。近年、中国各地の消費者協会は、「起動時の広告時間が長すぎる」「操作が複雑」「次々と有料サービスを要求される」といった問題を繰り返し指摘しています。
高齢者からは、「テレビをつけるだけで広告を待たされ、その後も何度も画面を切り替えなければならない。普通に番組を見るために会員登録まで必要になる」と不満の声が上がっています。
上海のある退職者は取材に対し、「昔はテレビをつければすぐ番組が見られた。今はまるで迷路を進んでいるみたいだ」と語っています。
テレビ市場の低迷は、中国全体の消費不振とも深く関係しています。長年、中国では不動産市場が家庭資産の中心を占めてきました。しかし、不動産不況が続いたことで、多くの家庭の資産価値が縮小し、消費意欲も大きく低下しています。
中国国家統計局のデータによると、近年は所得の伸びも鈍化しています。将来の収入見通しに不安を抱える家庭が増えたことで、人々は高額家電を購入するよりも、貯蓄を優先する傾向を強めています。
2025年、中国当局は引き続き「買い替え補助金政策」を打ち出し、家電消費を刺激しようとしました。しかし市場関係者の間では、「こうした政策は短期的な駆け込み需要を生むだけで、根本的な消費不安の解決にはならない」との見方が広がっています。
実際、一部地域では補助金終了後に家電販売が急速に落ち込み、中国国内の需要不足が改めて浮き彫りになりました。
近年、テレビメーカー各社は「大型化」「高級化」を進め、Mini LEDやOLED、超大型テレビなどを主力商品として利益拡大を狙ってきました。75インチ以上の大型テレビは販売が伸びているものの、市場全体では「販売台数減少・価格上昇」という状況が続いています。
高級モデルは価格が高く、一般家庭には手が届きにくい上、中国のテレビ市場そのものがすでに飽和状態にあります。多くの家庭では、テレビの買い替え周期が8年から10年まで延びています。
さらに、近年の結婚率低下や新築住宅販売の落ち込みも、新たなテレビ需要を大きく減少させています。
テレビ販売台数が落ち込む一方で、中国の従来型テレビ局も急速に視聴者を失っています。ここ2年ほど、中国各地の放送局ではチャンネル統合や人員削減が大規模に進められています。
一部の省級テレビ局では標準画質チャンネルを閉鎖し、ハイビジョン放送へ移行しました。また、多くの県級テレビ局は、財政難や視聴率低下によって放送停止に追い込まれ、テレビ・ネット統合メディアへ再編されています。
業界関係者によると、地方テレビ局を苦境に追い込んでいる最大の原因は、広告収入の急減です。かつて地方テレビ局は、不動産、自動車、建材、地元企業の広告収入によって運営されていました。しかし現在、中国経済の減速によって多くの民間企業が経営難に陥り、広告予算も大幅に削減されています。
中小企業の中には、従業員への給料支払いすら困難な状況に陥っている企業もあり、テレビ広告に資金を回す余裕などないのが現実です。
さらに、テレビ番組そのものの魅力低下も深刻です。多くの地方テレビ局では、依然として会議ニュース、政策宣伝、再放送ドラマが中心となっており、若者を引きつける力を失っています。
より根本的な問題として、国民の間で公式メディアへの信頼低下が進んでいる点も指摘されています。
一部の研究者は、「現実社会では失業不安や消費低迷が広がっているのに、中国当局が管理するメディアは長年『経済は好調』と繰り返してきた。このギャップが大きくなるほど、人々は自然とテレビニュースを信じなくなり、見なくなる」と分析しています。
テレビ市場とテレビ局の同時低迷は、中国経済が抱える深い問題を映し出しています。
長年、中国経済は不動産、インフラ投資、輸出を主要な成長エンジンとしてきました。しかし、不動産バブル崩壊と世界的需要低迷によって、これまでの成長モデルは徐々に行き詰まりを見せています。
また、高齢化と出生率低下も耐久消費財市場に大きな影響を与えています。若者人口の減少や結婚率低下は、住宅需要だけでなく、家電など家庭向け消費市場そのものを縮小させています。
さらに、老後、教育、医療への負担増加によって、多くの家庭が将来への備えとして貯蓄を増やす傾向を強めています。
加えて、近年は民間企業の信頼感低下も大きな問題となっています。一部の企業経営者は、「市場環境の不透明感が増し、資金調達も難しくなっているため、投資や事業拡大に踏み切れない」と語っています。
こうした慎重ムードは、雇用や所得の伸びをさらに鈍化させ、消費低迷の悪循環を生み出しています。テレビ販売台数が10年前の水準まで落ち込み、多くの地方テレビ局が存続危機に陥っている現状は、単なる技術革新やメディア変化だけでは説明できません。その背景には、中国経済の不振、消費構造の変化、そして社会全体の信頼構造の揺らぎが深く関係しているのです。
(翻訳・藍彧)
