近年、中国の各地で抗議活動が頻発しています。直近では、広西チワン族自治区玉林市で約1万人もの労働者が職を失うという事態が発生しました。これは中国における労使対立と経済構造の転換を示す縮図として、広く注目を集めています。
4月20日、香港資本の玩具受託生産大手「華盛玩具」の傘下にある、広西玉林市の4つの工場が一斉に操業停止を発表しました。これにより、1万人近い労働者が突然失業の危機に直面しました。 1976年に設立した華盛玩具は、1981年に中国本土へ進出した香港企業の先駆けです。40年以上にわたる事業展開の中で、ピーク時には約2万人の従業員を擁し、その規模は世界の玩具受託生産業界でもトップクラスでした。しかし、近年の貿易環境の悪化と受注減少に伴い、同社は長年の赤字に苦しみ、最終的に今回の工場閉鎖に追い込まれました。
会社側は操業停止の通知において、従業員の給与や経済的補償などの法的権利を優先して保障すると説明しています。しかし、具体的な補償基準や金額、支払時期については一切言及していません。このような曖昧な対応が、労働者たちの強い警戒心と不満を招きました。複数の労働者への取材によれば、閉鎖の通知は非常に唐突で、誰も事前の準備ができていなかったといいます。彼らが最も懸念しているのは、過去の事例の二の舞になることです。証言によると、以前同社が広東省東莞市の別の工場を閉鎖した際、中国の労働法で定められた最低基準を大きく下回る不当な金額しか解雇補償金として支払われなかった前例があります。北流市の工場で十数年勤務してきたベテラン従業員は、「長年働いてきたのに突然解雇され、会社は補償基準すら明確にしていない。必死に会社に尽くしてきた以上、きちんと説明を求めるしかない」と憤りを口にしました。
正当な権利が損なわれることを恐れた3つの工場の労働者約5000人は、4月21日の午前、それぞれ抗議活動に立ち上がり、未払い賃金の清算と法に基づく十分な補償を会社側に求めました。現場の動画や目撃者の証言によると、各工場の周辺道路や空き地に大勢の労働者が集結しています。状況を話し合う者やスマートフォンで現場を撮影する者もおり、周辺の交通は一時的に麻痺しました。一部の工場では、労働者が建物の屋上に登って巨大なスローガンを掲げる事態にも発展しました。また、別の工場周辺では労働者たちが横断幕を広げ、「青春のすべてを会社に捧げた。破産しても良心まで捨てるな。血と汗の結晶である私たちの給料を返せ」と痛切に訴えかけました。
抗議の声を上げる労働者たちに対し、地元当局は盾を持った多数の警察官を現場に出動させ、警戒と群衆の排除に乗り出しました。翌22日になっても、労働者たちによる抗議活動は続きました。報道によると、その後玉林市の副市長が仲裁に入ったものの、同日午後の時点において事態の打開には至っていません。
今回の労使紛争は決して特異なケースではなく、その背景には中国のマクロ経済の減速とサプライチェーン再構築に伴う歪みが反映されています。北京の経済学者はメディアの取材に対し、かつて輸出に大きく依存していた労働集約型産業が近年集中的に打撃を受けていると指摘しています。受注の激減と資金回収の長期化により、一部の企業では資金繰りが急速に悪化し、操業停止や工場閉鎖が頻発しています。コスト削減などを図るため、生産拠点を東南アジアなどへ移転させる企業も少なくありません。このような急激な事業縮小や移転の過程において、取り残された従業員の処遇問題が、社会的な対立の火種となりやすいのが現状です。
経済成長の鈍化が鮮明となり、社会的な不満が蓄積するにつれて、中国本土における民衆の抗議活動は、その影響範囲を広げつつ激化する傾向を見せています。中国の抗議活動を長期的に調査している専門プラットフォームの集計によると、2026年3月だけでも、中国国内で発生した76件の集団抗議事件が確認されています。抗議活動に参加する人々の属性は多岐にわたります。最も多いのが農民による抗議で全体の約2割を占め、次いでマンション購入者による不動産トラブル、製造業の労働者、行政への直訴者、事故などの遺族、投資トラブルの被害者と続いています。これらに加え、露天商、宗教関係者、学生の保護者、清掃作業員、運転手、教師、さらには銀行の預金者など、様々な立場の人が抗議行動に参加しています。地域別に見ると、事件は全国15の省・直轄市・自治区に波及しており、中国本土の行政区画のほぼ半数に達しています。中でも製造業の集積地である広東省が最多となっており、次いで北京市、その他にも四川省、江蘇省、河北省など各地で頻繁に発生しています。
広西チワン族自治区の玩具工場における大規模な抗議から、全国各地で相次ぐ集団行動に至るまで、一連の出来事は、厳しい経済環境の中で生活を守ろうとする一般市民や労働者の実態を浮き彫りにしています。それと同時に、中国社会が直面している構造的な変化と、労働者の権利保障という課題の深刻さを示す事象と言えます。
(翻訳・吉原木子)
