2026年の旧正月前後、中国では三つの「異常現象」が目立ちました。

 まず一つ目は、北京、山東省、陝西省など複数の地域で、旧正月の時期に黄色いちょうちんが珍しく掲げられていたことです。

 二つ目は、ミラノ冬季五輪の競技で、中国代表チームのユニフォームが珍しく赤色を控えめにし、青と白を基調にしていたことです。

 三つ目は、中国中央テレビ(CCTV)の旧正月特別番組「春晩(チュンワン)」のポスターやリハーサル映像で、青や黒などの色が大量に使われていたことです。長年「党の赤」を中心に組まれてきた色づかいから、明らかに外れていました。

 アナリストは、これら三つの事象がほぼ同じ時期に集中して現れたことを極めて異例だと見ています。偶然というより、上層部の統一した意向で調整された可能性が高いというわけです。その背景としてしばしば持ち出されるのが、中国に古くから伝わる「赤馬紅羊劫(せきばこうようごう)」という予言めいた言い伝えです。

 ここで言う「赤馬紅羊劫」は、中国の古い讖緯(しんい)文化、いわゆる予兆や暗示を読み解く文化の中で語られてきたものです。南宋の学者・柴望(チャイ・ワン)は「丙丁亀鑑(へいていきかん)」の中で、秦から五代に至るまで千年以上の歴史を整理し、ある共通点を指摘しました。干支で数える年号のうち、丙午の年と丁未の年には、大きな歴史の転換が重なりやすいというのです。たとえば戦争の勃発、疫病の流行、政権の交代などが起きやすいとされました。

 丙午は「午(うま)」に当たり、五行では火に属するため「赤馬」と呼ばれます。丁未は「未(ひつじ)」で、こちらも火に属するとされ、「紅羊」と呼ばれます。古い考え方では、火の勢いが強すぎると世の中が不安定になり、争いや混乱を招きやすいと見なされました。そのため、この周期は「赤馬紅羊劫」と呼ばれ、王朝の盛衰が動く節目として恐れられてきたのです。

 歴史を振り返ると、この周期が大きな転換と重なった例はたしかに何度もあります。最も有名なのが1126年の靖康の変(せいこうのへん)です。この年は丙午の年に当たり、金(きん)の軍が北宋の都・汴京(べんけい)を攻め落とし、徽宗(きそう)と欽宗(きんそう)を連れ去りました。北宋は滅び、中国史は南北が対峙する時代へと入っていきます。

 さらにさかのぼると、秦の昭襄王(しょうじょうおう)52年から、五代の後漢(こうかん)・天福(てんぷく)12年に当たる紀元前255年から947年までの間に、史書に記録された丙午・丁未の年は計21回あります。その期間は、異変や重大事件が数え切れないほど起き、王朝交代や戦乱が頻発したと記されています。こうした積み重ねが、赤馬紅羊劫という考え方を、歴代の統治者にとって無視しがたい不吉な影として残してきたわけです。

 2026年は丙午の馬年、2027年は丁未の羊年で、再びその不吉とされる周期に入ります。中国の伝統的な発想では、統治者は天象や予言めいた解釈、五行の変化を重視してきました。政治の大きな判断であっても、占い師や術士の助言を参考にして調整するという見方が、歴史的には繰り返し語られてきたのです。そのため、この周期が近づく中で見られた中国指導部の一連の「色」の変化が、外部から強く注目されることになりました。

 世論を最初に揺らしたのは、各地で黄色いちょうちんが掲げられた現象です。極目新聞など中国メディアの報道によれば、北京・東城区(とうじょうく)、山東省済南市(さいなんし)、河北省涿州市(たくしゅうし)、四川省楽山市(らくざんし)、甘粛省蘭州市(らんしゅうし)、陝西省西安市(せいあんし)、山西省太原市(たいげんし)、河南省鄭州市(ていしゅうし)など、複数の都市で旧正月の期間に、従来の赤いちょうちんではなく黄色いちょうちんが統一して飾られたといいます。

 地方政府は、これは祝祭シーズンの統一装飾だと説明しています。黄色は高貴さや吉祥を象徴し、伝統文化の特色を表すものだ、というのがその理由でした。

 しかし、この説明は多くの人に受け入れられませんでした。中国の民間習俗では、旧正月に赤いちょうちんを掲げるのは、めでたさや繁栄、邪気払いを意味します。一方で黄色いちょうちんは、祭祀や弔いの場面と結びつきやすい色だと受け止められてきました。そのため、黄色いちょうちんが大規模に掲げられたことは、すぐにネット上で大きな話題になりました。

 ネットユーザーの書き込みには、違和感や不安をそのままぶつける声が並びます。
 「何十年も生きてきて、正月に黄ちょうちんなんて初めて見た」
 「これって祭祀用じゃないのか」
 「何か悪い前触れでは?」
 「国葬を前倒しでやるつもりか」
 「黄ちょうちんって、いったい誰を弔うんだ」

 こうした関連話題はSNS上で一気に拡散し、議論の嵐を巻き起こしたのです。

 こうした強い疑問の声が広がる中、いくつかの都市では、いつの間にか黄色いちょうちんが撤去されました。追加の説明はほとんどなく、静かに片づけられた形です。しかし、この慌ただしい撤去こそが、逆に憶測を深めました。単なる祝祭の装飾ではなく、何か象徴的な意味を込めた政治的な動きだったのではないか、という見方が強まったというわけです。

 一方、国際大会での中国代表チームのユニフォームの変化も興味深いです。これまで中国代表のユニフォームは、ほぼ一貫して赤を前面に押し出し、「赤い中国」という政治的なイメージを強調してきました。ところが最近の大会では、青と白が主な色になり、赤は補助的な装飾にとどまっています。

 この変化は、偶然のデザイン変更というより、赤の存在感を意図的に下げ、視覚の中心から外そうとしたのではないかと見られています。

 さらに、CCTVの春晩のビジュアルスタイルの変化はより顕著です。春晩は、中国共産党にとって一年で最も重要な宣伝の舞台の一つで、数十年にわたり赤を中心に据えた演出を続けてきました。舞台背景から宣伝ポスターまで、赤の印象を強く打ち出し、象徴性を前面に出すのが定番だったからです。

 しかし今年は、ポスターのデザインやリハーサル映像では、青、黒、灰色が目立って増え、全体が冷たい色調に寄っていました。過去の春晩と比べると、空気感まで別物に見えるほどで、長年続いてきた党の赤を軸にした視覚の作法が崩れた形になります。この変化は外部からも強く注目されました。

 こうした動きをめぐり、評論家の梅凌霜氏は「人民報」への寄稿で、三つの現象はバラバラに起きたものではなく、上層部が一体で組んだ配置に見えると指摘しています。彼女の見立てでは、中国指導部は色の体系そのものを動かすことで、赤馬紅羊劫への備えを試みている、というのです。

 中国の五行の考え方では、赤は火に属し、青や黒は水に属します。水は火を抑える力があるとされます。黄色は土に属し、土は火の勢いを受け止めて弱めると説明されます。そのため、赤を減らし、青や黒、黄色を増やすことで、火の力を弱め、災いを避ける狙いがあるのではないか、という筋立てです。

 近年の中国は内外で難題を抱えています。景気の下振れが続き、社会の緊張も強まり、国際環境も厳しさを増し、統治の重圧はこれまでになく大きいと見られています。そうした中で、当局が風水や五行の配置に頼って劫をしのごうとする姿は、内側にある不安や恐れの深さを映している、という解釈がここで示されています。

 古くから、天意に逆らうのは難しいとも言われてきました。歴史の周期が動くかどうかは、色を変えただけで止められるものではありません。もし一つの政権が、象徴や風水に安全を求めざるを得なくなっているのだとすれば、それは自分たちの行く末に対する確かな自信を失っている証しなのではないでしょうか。むしろそこにこそ、今回の異変で最も注目すべき本当のサインがあるのかもしれません。

(翻訳・藍彧)