2026年の旧正月が間近になり、本来なら街中が灯りで彩られ、にぎやかな時期のはずです。ところがSNSを開くと、これまでにない冷え込みのような空気が一気に押し寄せてきます。
東北の村でも、北京の中心部でも、南部の工業地帯でも同じです。年老いた農民も、若い出稼ぎ労働者も、みんなが同じ疑問を口にしています。「旧正月の瀬に入ったのに、どうしてこんなに静まり返っているのか。人影もまばらで、この感じは、本当に私たちが知っている旧正月なのか」
この寂れた光景の背景には、まず農村部の衰退が浮かび上がります。あるブロガーが、村で暮らす複数の高齢者に話を聞き、その声をまとめて動画にしました。「必死に働いて一生を終えてみたら、結局は何も持たないところから始まり、気づけば手元に残るものはなく、さらに借金まで背負うことになった。理由もよく分からないまま損をして、細かく切り詰めながら返済を続け、悔しさを飲み込みながら数十年も生きてきた。一年を通して貧しさだけがずっと変わらない」
中国当局が掲げる「新しい農村づくり」というスローガンに対し、高齢者は、がらんとした通りを指さしながら、「何を『つくる』っていうんだ。いま、この村に人がいないじゃないか」と問い返します。300世帯が暮らす村でさえ、旧正月を迎える時期なのに、大通りに人影がほとんど見当たりません。
黒竜江省のあるネットユーザーが動画を投稿し、「もうすぐ正月なのに大通りに人がほとんどいない。例年ならここはすごくにぎやかだったのに、いったいみんなはどこへ行ったのか。本当に静かすぎる」と嘆いていました。
北部地域の村民、前程さんはこう話します。「昔はどの家も通りに出て、互いに新年のあいさつを交わしていた。それが今は、ほとんど人の姿を見かけない。外はひっそりしていて、がらんとしている。奥まった村ほど、若者は出稼ぎに出たまま戻らず、高齢者ももう数えるほどしか残っていない。中には村そのものが消えてしまい、人の気配がまったくない場所さえある」
関中地域の住民、王順さんも、「今年の旧正月の空気は異様なほど静かだ。例年ならこの時期、大通りは人で埋まっていたのに、今年は荒涼として、人影はまばらだ。市場の野菜も肉も売れず、今年は何も売れない。若者が帰省したくないわけではなく、帰省する余裕がないのだ」と語っていました。
就職活動がうまくいかないネットユーザーは、母親との通話動画を投稿しました。母親が帰ってくることを心待ちにしているのが分かっていても、本当の状況は言えず、今年は商売の調子が悪いから帰れないと嘘をつき、電話の向こうで、それを聞いた母親は、ただ黙って涙をこぼしたといいます。
農村の静けさが人口流出と暮らしの苦しさから来ているのだとすれば、首都・北京の静けさは、どこか不気味で、息苦しい冷たさを帯びています。北京のネットユーザーは、今年の都心にいる「泣きたくても泣けない4つの人たち」をまとめていました。
1つ目は、配車アプリのドライバーです。誰もがこの仕事に流れ込んだ結果、利益は薄く、生活が成り立ちにくい。
2つ目は、不倫や二重関係などの問題に直面する正妻たちです。離婚や財産分与をめぐるルールの変化もあって、家庭の土台が崩れやすくなっている。
3つ目は教師です。出生率が崖を落ちるように下がり、かつては安泰だと思われていた職が、いまは足元から揺らいでいる。
4つ目は経理や財務の仕事をする人たちです。業界の競争がさらに激しくなり、値下げ合戦に息が詰まる。
同ネットユーザーは、この4つのうち、あなたの姿はないのかと問いかけます。
北京で暮らす人たちの多くが、いま同じ疑問を抱えています。人口が2000万人を超えるとされる大都市なのに、どうして街がこんなにスカスカなのでしょうか。以前はいつも渋滞していた国貿橋も、いまは夕方のラッシュ時にはすいすい通れるほどになり、胡同で散歩するお年寄りの姿も目に見えて減っています。「いったい人はどこへ行ったのか」と、そんな声が自然と出てきます。
あるデータでは、過去5年間で北京の25歳から40歳の若年層人口が約185万人減ったとされています。これは中規模都市の人口が消えたに等しいです。
さらに息が詰まるのは、どこにいても感じる監視と緊張感です。多くの北京市民は、生活圧力が急増し、旧正月どころではなく、日々の食事や暮らしを保つだけでも苦しいというのです。北京にはさらに独特の圧迫感があります。空気の中に、警戒心と距離感が漂っています。厳重な警備のため、誰もが「疑われる側」に置かれているような感覚です。
街中には見張りのような立ち番が並び、身分証の確認や持ち物検査が何度も繰り返されます。地方から北京に入ったネットユーザーが撮影した動画では、北京へ入る検問所がいくつも設けられ、段階ごとにチェックが入る様子が映っていました。
そこでは、ラジコン機やドローンの飛行を禁じる注意書きもはっきり出ていたといいます。ネット上では、低空の取り締まりがここまで厳しくなるのは、いったい何を警戒しているのかとため息混じりの声も出ています。「単に安全のためなのか。それとも、ドローンのカメラが北京の通りから人が消えた現実を映し出してしまい、人口の実態に関わる何かが見えてしまうのを恐れているのか」
一方では国民の苦難、他方では当局の宣伝による高揚感。この乖離感は2026年の旧正月で頂点に達しました。
当局は消費を刺激するとして次々に政策を打ち出し、1人あたりの預金額といった数字を掲げて、景気は良い方向に向かっていると繰り返します。若いネットユーザーはカメラの前で冷えた表情で反論します。「世論は経済の繁栄ばかり語り、国民の苦難には触れない。消費不足ばかり語り、底辺層の負債には触れない。平均値だけを見せて、貧富の差は語らない。これは明らかに本質を避けている」
「夜明け前のゴミ箱が何度も漁られているのに、1人あたりの預金が約265万円(11.89万元)だと言う。その巨大な平均値が、普通の人々と何の関係があるのか。私の分はどこで受け取れるのか」と問いかける声もありました。
商店街の冷え込みは、経済の冬を目に見える形で裏づけています。多くの都市で、店が次々と引き払っていく光景が広がっています。かつては場所を取るだけでも一苦労だった一等地に、いまは「テナント募集」の貼り紙が目立ち、閉店が連鎖し、悲惨な光景です。
ネットユーザーからの投稿。
「昼は配達の仕事をしても注文が入らない。夜は屋台を出しても、ようやく食いつなげる程度。30歳になったのに、車も家も貯金もない。数百万円の借金を背負い。人生に必要な3点セットである『家・車・貯金』も何一つ手に入らず、生きる意味がわからない」
「給料も上がらない。福利厚生も改善されない。空っぽのスローガンは何の役に立つのか」
「正常な発言が抑圧され、弁明の余地がないのが日常となったこの世の中で、最も恐ろしいのは狂人ではなく、正常な人を狂人と定義する者だ」
「私たちがいま、ここまで苦しくて、ここまで貧しいのは、誰かのせいではない。いちばんの原因は、私たち自身が沈黙を選んできたことだ」
(翻訳・藍彧)
