2026年が始まってまだ40日しか経っていないのに、中国当局はすでに25人の幹部について、調査や処分を行ったと発表しました。ここまで短期間に集中するのは近年では珍しい動きです。この流れの中で、外部の視線が一気に集まりました。

 公式発表を整理すると、調査対象や処分の対象には、中央軍事委員会副主席の張又侠や、中央軍事委員会の統合作戦を担う連合参謀部の参謀長、劉振立のほか、部長級が5人、副部長級以下が18人にのぼります。

 これらの事件は軍、地方の党政機関、司法システム、金融機関、研究機関、国有企業など幅広く、まるで一斉に網を広げたような印象です。さらに、現職の部長だけでなく、すでに職を離れた元高官も含まれており、中国当局が過去にさかのぼって洗い直す姿勢を強めていることがうかがえます。

 情報筋である葉さんが海外の中国語メディアに明かしたところによると、この時期における中国当局の幹部調査の規模と頻度は、近年ではあまり例がないといいます。「通常これほど集中して公表することはなく、当局も国民の受け止め方を気にするからだ。幹部を次々捕まえれば、国民は『汚職官僚って結局みんな共産党の中にいるのか』と思うようになる。20年前なら、部長級が調べられるのは年間5、6人程度で、しかも多くは全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)の前後にまとめて公表されていた。ところが今は、1か月で部長級が5人も調査されている。これは当局が高官への抑止力を示そうとしている可能性がある。両会前にこれだけ高層の案件を処理するタイミングは明確で、今年の両会前の人事配置を進めるうえで邪魔になるものを先に片付けているためだ」

 また、「崔凱」のペンネームで活動する中国の独立系研究者は海外の中国語メディアに対し、近ごろの中国指導部の動きは、中央軍事委員会の指揮システムにまで波及しており、その余波はいまも拡大しているとし、全人代や国務院の人事配置も注目を集めていると指摘しています。「上層部で権力争いが続いているため、今回の調整はすぐには終わらない。少なくとも今年3月の全人代と政協の前後までは続くだろう。場合によっては、9月か10月の五中全会まで待たなければ、局面が徐々に落ち着かないだろう」

 張又侠事件の特異さは、その後の処理の流れから、いまの中国指導部が決して一枚岩ではないことが見えてくる点にあります。2月初め、全人代の常務委員会が突然、臨時の会議を開きました。ところが外部が予想していたように、張又侠と劉振立の全人代代表資格を取り消す動きは出ませんでした。取り消されたのは、軍需産業系の中央企業3社の幹部に当たる3人の代表資格だけでした。

 複数の時事評論家は、全人代常務委員会が軍の支持を背景に、習近平の指示に抵抗した可能性が高く、習近平の軍内、党内での権力は盤石ではないことを示している、という見方です。

 一方、最近の国務院会議で李強首相は「軍需中央企業などの分野にある問題は目を覆うほど深刻だ」と述べました。張又侠の名前を直接名指しはしなかったものの、張又侠事件の位置づけを示す発言だと広く受け止められています。張又侠事件が、軍需産業システムをめぐる重大な腐敗と結びついている可能性をにおわせた、というわけです。

 表向きには、これは習近平が長年進めてきた反腐敗のやり方と一致しているように見えます。しかし、事情を知っている人なら誰でも分かっています。習近平は政権発足から10年以上、反腐敗を掲げ続けてきたものの、実際には反腐敗を名目に政敵をたたき、権力を一手に集めることに全力を注いできた、という見方です。

 米ハドソン研究所の中国問題専門家、余茂春は、ワシントン・ポスト紙に寄稿した張又侠の失脚に関する論評で、共産主義体制そのものが、トップに立つ者に部下への恒常的な不信を生むのだと指摘しました。「共産主義独裁の世界では、最大の罪は汚職でも無能でもなく、最高指導者を不安にさせることだ」

 一方、複数の分析では、中国軍の機関紙が最近になって繰り返し「すべての行動は党中央、中央軍事委員会、そして習主席の指揮に従う」と強調している点が注目されています。これは、張又侠の失脚によって習近平の軍内での権威が固まったというより、逆に、宣伝を通じて自分の立場を強化せざるを得ない状況をにじませている、という見方です。

 また、公式発表とは別に、北京の民間で語られている張又侠事件や、習近平政権の現状をめぐる空気は、もっと生活の不安と結びついています。複数の北京市民は私的な場で、高官が次々に失脚しても、一般の人に安心感は生まれないどころか、政治の先行きが読めないことへの不安が強まったと話しています。取材に応じた一部の人は、反腐敗は制度を良くする取り組みというより、高層部の権力争いに見えると受け止めており、国民にはそこから制度的な改善を感じ取りにくいとも語っています。

 北京に住む80年代生まれの李さんは、裕福な暮らしを送っており、普段から政府関係者や現役の軍人とも付き合いがあるといいます。李さんはこう話しました。
 「軍の師団級以上の将校はみんな(情勢が)極めて厳しいと感じている。『この先、自分にまで波及するのではないか』を心配しているんだ。『退役したあとに、過去のことを掘り返されるんじゃないか』と恐れている。みんなが不安で落ち着かない」

 李さんによると、いま移動中の車内でも、食事会の席でも、皆習近平を話題にしているそうです。「(習近平は)国の経済もまともに立て直せない。軍もまとめきれない。それで何をやっているのかと言えば『一帯一路』だ。とくに『雄安新区』なんて、いまや巨大な未完成プロジェクトだ。これはもはや正気ではなく精神病の域だ。今や精神病患者が国を治めており、最も苦しんでいるのは庶民だ」

 李偉はまた、最近の北京では金を買いあさる動きが広がっているとも言いました。
 「いま北京の市民はみんな、金を必死に買い漁っている。なぜか。いつ金を買うのか。乱世だからだ。乱世になると金を隠す。いまは金塊を買って、家に隠すのがいちばん確実だって空気になっている」
 「いつ骨董品を買うのか。盛世こそ骨董品を集める時だ。いま中国では骨董品が売れない。たとえば陶磁器の茶碗なら、以前は約10億円(4000万〜5000万元)で取引されていたが、いまは約7000万円(数百万元)でも買えることがある」

 李偉は、いまの北京では、誰もがこの国とこの政党に問題があると分かっていると指摘します。
 「根っこから腐っている、芯から腐っているって、みんな分かっている。ただ言えないだけだ。どうしようもない。それに今の子どもたちへの教育では、また『共産党がいなければ新中国はない』『党の言うことを聞け』『愛国しなさい』と言い始めている。愛国って何だ。国と党は別の概念だ。それを一つにすり替えている。(共産党は)国民をバカだと思っているのか!」

(翻訳・藍彧)