旧正月を目前に控え、台湾海峡では緊張が続いています。台湾の沿岸警備隊にあたる海巡署・金馬澎分署は、9日午後、中国海警局の船艇4隻が編隊を組み、台湾海峡に位置する金門島の制限水域に侵入したと発表しました。年末年始の隙を突き、いわゆる「グレーゾーン作戦」によって台湾側の防衛ラインを試し、地域の現状変更を既成事実化しようとする中国側の意図に対し、台湾海巡署は万全の警戒態勢を敷いていました。巡視艇による厳重な監視に加え、強硬な対抗措置を講じることで、侵入した全ての船艇を退去させることに成功しています。
第12巡防区のレーダー情報によりますと、9日午後2時頃、モニター上に異常な反応が現れ、金門南方水域に中国海警船4隻が集結しているのが確認されました。午後2時50分、中国側の船隊は戦術的な動きを見せ始めました。船体番号「14529」「14603」「14609」「14530」の4隻は二手に分かれ、金門島東部の料羅湾沖および南部の烈嶼(小金門)沖から同時に制限水域へ侵入するという「挟撃策」に出たのです。これは明らかに、台湾側の守備兵力を分散させる狙いがあると考えられます。この挑発行為に対し、台湾海巡署は直ちに緊急対応メカニズムを発動しました。あらかじめ配備していた巡視艇4隻を急行させ、相手の船と一対一で対峙する「マンツーマン・マーク」の戦術を展開しました。中国船の航路にぴったりと並走して圧力をかけ、内水へのさらなる侵入を物理的に阻止したのです。その間、現場の隊員は無線を通じ、中国語と英語で直ちに進路を変更するよう警告を続けました。約2時間にわたる緊迫した駆け引きの末、午後4時50分、中国海警船4隻は進路を変え、制限水域から完全に退去しました。
旧正月の前日というタイミングで行われた今回の大規模な侵入は、単なる現場レベルの小競り合いではなく、北京当局が綿密に計算した複合的な攻勢であることは明白です。軍事専門家は、中国がこの時期を選んだ背景には二重の戦略的意図があると分析しています。一つは常套手段である心理戦です。台湾の人々が一年で最も大切にする家族団欒の祝日を狙って緊張感を高め、現場の隊員を疲弊させると同時に、台湾側の防衛反応が祝日モードで緩んでいないかを試す狙いがあります。もう一つは「法律戦(Lawfare)」の推進です。制限水域への侵入を常態化させることで、台湾側が法的に定めた境界線の効力を実力行使によってなし崩しにし、管轄権の既成事実化を図ることで、台湾の主権が及ぶ空間を徐々に侵食しようとしているのです。
さらに注目すべき点は、今回の海上行動が周辺の地政学的変動と密接にリンクしていることです。本日未明、日本では重要な選挙の結果が判明したばかりです。高市早苗氏をはじめとする対中強硬派が依然として日本政界で強い影響力を維持しており、「台湾有事は日本有事」という主張が支持を集めている事実は、北京にとって極めて不愉快な現実です。アナリストは、中国海警局が選挙結果確定の直後に金門への侵入を強行したことについて、東京に対する一種の「示威行動」である可能性が高いと指摘しています。日本の新たな政治勢力に対し、台湾問題で越えてはならない一線を踏み越えぬよう牽制球を投げると同時に、第一列島線における実効支配能力を誇示し、出鼻をくじく狙いも透けて見えます。
こうした一連の軍事行動からは、中国の最高指導者・習近平氏の複雑な胸中が垣間見えます。習氏にとって、台湾問題の解決は自らの歴史的評価、いわゆる「レガシー」を確立するための最後のピースです。もし在任中に台湾統一を成し遂げれば、その党内地位は盤石なものとなり、建国の父・毛沢東と肩を並べる、あるいはそれを凌駕する存在として、終身執権への異論は完全に封じ込められるでしょう。しかし現実は、この独裁者を深いジレンマの中に突き落としています。現在の中国経済は構造的な不況に喘いでおり、不動産バブルの崩壊や地方債務問題は解決の糸口が見えません。加えて、日米同盟を中心とした国際的な包囲網は日に日に狭まっており、武力衝突を伴うような冒険には打って出られないのが実情です。
「歴史に名を刻む偉業」を成し遂げたいという野心と、経済崩壊や政権基盤の動揺に対する現実的な恐怖が、習氏の心中で激しくせめぎ合っているのです。権力の正当性を支える物語の核心である以上、台湾への武力行使という選択肢を表向きに捨てることはできませんが、一方で戦争の失敗や経済制裁による破滅的な結末を招くリスクも負えません。それゆえ、このような「低強度・高頻度」のグレーゾーン作戦こそが、彼の政治的焦燥のはけ口であり、国内に向けては強硬姿勢をアピールしつつ、対外的には相手の出方をうかがう唯一の手段となっているのでしょう。「戦う度胸はないが、和解する気もない」という北京当局の矛盾した心理に対し、台湾海巡署は「国家の主権と海洋権益を守ることは、我々の重大な責務である」と改めて強調しました。海巡署は、旧正月期間中も最高レベルの警戒態勢を24時間維持し、ハイテク監視システムを駆使してあらゆる形態の浸透と侵入を阻止すると断言し、「国家の主権と海の治安を死守し、国民が安心して新年を過ごせるよう全力を尽くす」と自信を示しています。
(翻訳・吉原木子)
