2月2日の正午、江蘇省塩城市響水県にある月港大橋の建設現場には、まだ旧正月の寒さが残っていました。ネット上で拡散された動画には、最後となった平穏な一幕が記録されています。10人以上の作業員が大橋の傍らに座り、温かい昼食をとっていたのです。それは、彼らの日々の過酷な労働における、つかの間の休息の時間でした。しかし、わずか数時間後に、このありふれた昼食の風景が、彼らの一部にとって人生最期の光景になろうとは、その時誰ひとりとして予想していませんでした。
その日の夕方17時46分、耳をつんざくような轟音が響水県の静寂を切り裂きました。現場からわずか400メートルの場所に住むある村民は、自宅で突然の激しい振動を感じ、胸が締め付けられるような恐怖を覚えたといいます。人々が我に返った時、川を跨ぐように建設中だった月港大橋は、見るも無惨な姿に変わり果てていました。主橋部分のアーチリブが轟音と共に崩落し、巨大な鉄筋コンクリートの構造物が冷たい川水へと落下、瞬く間に飲み込まれてしまったのです。水面には、無惨に壊れた部材や重機の一部が寂しく漂うだけでした。地元の生コンクリート業者によると、事故発生当時、橋の上では確かに作業員が作業を行っていたそうです。彼の友人もそのプロジェクトに参加しており、幸運にも難を逃れましたが、その瞬間の恐怖は生存者の心に深く刻み込まれています。
事故発生後、当局から次々と発表が行われました。当初の「死者2名、行方不明者3名」という第一報から、2月3日には最終的に「行方不明者3名の遺体を発見、計5名が死亡」と修正されました。しかし、これで事態が収拾したかに見えたこの数字は、世論を沈静化させるどころか、さらなる疑惑の波を引き起こすことになりました。SNSのコメント欄では、怒りと疑念が渦巻いています。多くの江蘇省や浙江省のネットユーザーは、当局の数字が「過小報告」されていると率直に指摘しています。「同級生が『22人が犠牲になった』と話していた」「車ごと人が川に落ちたんだ。水深もかなりあるし、助かる確率は低いだろう」「動画ではあんなに多くの人が映っていたのに、なぜ5人だけの報告なのか」。これらの声は公式には確認されていませんが、崩れ落ちた大橋と同様に、公衆の信頼を根底から揺るがすこととなりました。
さらに人々の不安を掻き立てるのは、民間の疑念の声と同時に進行している、目に見えない「情報隠蔽」の動きです。多くのネットユーザーが、TikTok(抖音)などのプラットフォームに現場の動画をアップロードした直後に、「非公開」に設定されたりブロックされたりしたと報告しています。あるユーザーは、「事故が起きた後、現場の動画を探し出して削除することが最優先任務になっているようだ」と鋭く指摘しました。このような隠蔽工作とも受け取れる対応は、かえって「死者5名」という結論に対する疑念を深める結果となっています。
現場の惨状が心を痛めるものだとすれば、施工業者の背景には言葉を失うほかありません。この大橋の建設を担っていたのは、無名の小さな工務店ではなく、輝かしい名声を持つ中央政府直轄の国有企業、いわゆる「ナショナル・チーム」とも言える中鉄十二局です。世界企業番付500強に入る中国鉄建傘下の主力企業であり、国が直接管理する巨大組織の一員です。「連申線月港大橋」と名付けられたこのプロジェクトの契約総額は2億2300万元(約46億円)に上り、当初の計画では2025年3月に着工し、2027年6月までの工期となっていました。しかし、その煌びやかな看板も、薄汚れた実態を隠すことはできません。企業情報サイト「天眼査」のデータによると、この巨大国有企業の傘下では、「建築廃棄物の不法投棄」や「事故につながる安全上の欠陥の放置」などで多数の行政処分を受けており、被執行総額は1.7億元を超えています。中央政府系企業が請け負うプロジェクトで警鐘が鳴らされたのは、今回が初めてではありません。わずか半年前の2025年8月にも、同じく国有企業である中鉄大橋局が建設を請け負った川青鉄道の尖扎黄河特大橋でロープ破断事故が発生し、12名の尊い命が奪われたばかりでした。
今、悲劇は江蘇省で再び繰り返されました。完成を待たずして轟音と共に崩れ去った大橋を前に、公衆の怒りは単なる隠蔽疑惑だけにとどまらず、インフラ建設にはびこる腐敗という急所へと向けられています。「これは『おから工事(手抜き工事)』の暴力的な露呈だ」というコメントが、ネット上の至る所で見られます。あるユーザーは次のように問いかけました。2億元の工事費が、幾重もの下請けや中抜きを経た後、最終的に一本一本の鉄筋やコンクリートに費やされる金額はどれほど残っているのか、と。X(旧Twitter)には、核心を突くコメントが投稿されています。「大橋が完成する前に崩落したということは、まさに『大国工匠(大国の職人)』という看板を取り外して薪として燃やすようなものです。有効な監督体制が欠如した中で、手抜きされた鉄筋の一本一本が、腐敗のツケを払わされているのです」。さらに、「完成していない時に崩れたのは不幸中の幸いだったかもしれません。もし開通してから崩落していたら、それはもう一つの『集団墓地』になっていたでしょう」といった痛烈な皮肉も聞かれます。
現在、江蘇港航発展有限公司は調査に協力しているとし、響水県政府も今後情報を公開するとしています。しかし、冷たい川水と失われた命を前に、公衆が待っているのは単なる形式的な発表ではありません。真実について、良心について、そしてなぜ「国の顔」である企業がこれほどまでに失態を演じ続けるのかについての、誠意ある説明責任なのです。
(翻訳・吉原木子)
