木曜日の午後3時半、北京の王府井APMショッピングモールでは、人の流れが明らかに少なくなっていました。館内の照明は以前と変わらず明るいものの、週末の活気は感じられません。通りがかった市民の一人は、「モールに人が少ないね。最近は買い物客が減っているみたいだけど、何が起きているのか分からない」と漏らしていました。
消費の冷え込みは、北京の街角で誰の目にも分かる形で進んでいます。それと同時に、リストラや店舗閉鎖、将来への不安が次々と重なり、人々の生活を圧迫しています。
補償は一円もなく、突然の解雇
葉さん(女性)は、北京での生活がちょうど10年になります。夫とともに地方からこの街に移り住み、結婚し、子どもを授かり、人生のすべてをこの街に託してきました。
ところが今年10月末、彼女は突然リストラされました。
その日の午後、彼女はいつも通り仕事を終え、帰る間際に会議室へ呼ばれました。正式な書面も事前の通知もなく、上司はただ一言、「あなたに与える仕事はもうないので、今日付で解雇だ」と告げたのです。
彼女は「最初に頭に浮かんだのは補償のことだった」と語ります。彼女はこの会社で6年間働いており、法律上は経営上の理由による解雇であっても、一定の補償を受ける権利があります。
しかし返ってきた言葉に、彼女は完全に呆然としました。上司は「違法なことは山ほどある。訴えるなら訴えればいいが、2年後に会社が残っているかどうかも分からない」と言ったのです。
その瞬間、会社が最初から一切のコストを払うつもりがないことを悟りました。
その後、電動バイクで帰宅する途中、思わず涙があふれたといいます。「仕事を失ったからではなく、北京で長年努力を重ねてきた末に、何一つ納得のいく形で終われなかったことが、突然胸に迫ってきたのだ」と語りました。
労働仲裁を申請できることは分かっていましたが、現実はすぐに押し寄せてきました。子どものこと、家賃、日々の生活費を考えると、長期戦になる権利闘争に踏み出す勇気が持てなかったのです。「次の仕事がどこにあるか分からない。賭けに出る余裕はなかった」
周囲には同じように解雇された友人もいましたが、少なくとも補償金は受け取っています。葉さんは、むしろ彼らがうらやましいと語っています。
年齢が就職活動の壁に
葉さんとは違い、敏さんの苦境は、解雇された後に始まりました。
昨年12月、労働契約の期限を迎えましたが、会社は更新を行いませんでした。それ以降、今年の上半期のほぼすべてを就職活動に費やすことになります。履歴書を何通も送り続けましたが、返事が来ないケースが大半でした。
本人によると、理由はほぼ決まっていたといいます。年齢が高いと見られるか、結婚や出産の可能性を警戒されるか、そのどちらかでした。32歳の彼女にとって、年齢は書類選考の段階で越えられない見えない壁になっていました。月給が約16万円(8000元)程度の職でも、断られることが続きました。
「あの頃は毎日、不眠に悩まされていた。昼間は求人情報をチェックし、夜になると、自分の何がいけないのか分からなくなり、不安に押しつぶされそうになっていた」と彼女は語ります。
今年6月になって、ようやく仕事が見つかりましたが、試用期間は半年と長く、安定した立場とは言えません。最近になって人事から正式採用に向けた書類準備の連絡が入り、状況は落ち着きつつあるようにも見えますが、彼女には新たな迷いが生じています。
母親からは、年末までに結婚相手が見つからなければ、来年は北京に残ることを認めないと言われました。家族からの期待と仕事の現実の間で、どう決断すべきか分からずにいます。
北京に残りたい気持ちは確かにあります。しかし同時に、この街はもう、努力さえすれば誰でも居場所を得られる場所ではなくなったという現実も、はっきりと見えてきました。
実店舗の閉店は、リストラよりも静かに進む
オフィスビルでの人員削減に比べると、実体経済の撤退はさらに静かに進みます。
張さんは北京で飲食店を経営していました。90年代生まれで、店を開いてから3年以上が経っていました。
「客足が明らかに減っているが、家賃や水道光熱費、人件費、原材料費などの支出は一向に下がらない」と彼は語ります。
「多くの場合、儲かるかどうかの問題ではなく、計算してみると、働けば働くほど赤字が膨らむことに気づくのだ」。最終的に彼は店を閉める決断をし、借金だけが残りました。
店を畳んでも、重圧は消えませんでした。事業に失敗し、負債を抱えたことで、妻からは頻繁に離婚の話を切り出されるようになったといいます。
彼の常連客の一人は、こう語っています。「借金を抱えた途端に、結婚生活が崩壊する例は非常に多く、ほとんど例外がない。男性が稼ぐ力を失うと、真っ先に冷たい態度を取るのは、最も身近な存在であることが多い。順調な時を共に過ごせる人は多いが、困難な状況を一緒に乗り越えられる人は、実はごくわずかだ」
北京は徐々に活気を失っている
ホワイトカラーのリストラ、就職活動の行き詰まり、そして実店舗の閉店、これらは一見ばらばらな個人の出来事に見えますが、北京という都市では、いま同時進行で起きています。
その一方で、街の空気にも変化が見られます。最近、多くの市民が感じているのは、公共の安全検査が明らかに厳しくなっていることです。地下鉄や観光地、通路では身分証の確認が頻繁に行われ、ペットボトルの水は検査機器にかけられ、顔認証も日常的な光景になりました。
景気の後退と雇用不安が重なる中で、こうした常に張り詰めた都市の状態は、普通に暮らす人々の不安感をさらに強めています。
長年北京で暮らしてきた市民の一人は、「この街はまるで、常に何かを警戒しているかのようだ」と表現しています。
混乱ではなく、重圧に耐えている
「北京は混乱するのではないか」、これは最近、ネット上で多く見られる問いです。
現実を見る限り、北京が秩序を失っているわけではありません。しかし確実に、そして継続的な圧力を受けています。消費の切り詰め、雇用の引き締め、実体経済の縮小、そして個人が背負うリスクが次第に大きくなっている現実です。
葉さんにとっては、保障のない解雇でした。
敏さんにとっては、出口の見えない就職活動でした。
張さんにとっては、一度の失敗が重すぎる代償となりました。
これらは決して、個人だけの不運ではありません。社会全体の大きな変化が、一般市民の生活の中にそのまま表れているのです。
雇用機会が減り、経営コストが高止まりする中で、都市が突然混乱に陥ることはありません。しかし、内部に蓄積される重圧は確実に増していきます。問題は人々の不安そのものではなく、こうした変化が起きていることを本当に見ようとし、そこに責任を持とうとする存在がいるのかどうかなのです。
(翻訳・藍彧)
