中国共産党の第20期中央委員会第4回全体会議「四中全会」が、10月20日から北京で開かれました。
開幕直前には、これまでに例のない規模の軍高官人事の失脚を受けた人事が伝えられ、国内に衝撃が広がりました。公式発表では9人の上将(陸軍大将に相当)が調査対象となり、その後さらに4人の上将が解任されたと報じられています。関係者には中央委員や主要軍種の責任者も含まれ、この件は、中国共産党内部の権力構造が大きく揺らいでいることを象徴しているとみられます。専門家は、人事刷新の背景に「経済と権力の安定化」という党中枢の最優先課題があると分析しています。多くの国民が関心を寄せるのは、むしろ「生活をどう立て直すか」という身近な問題です。
本来、この全体会議は昨年開催される予定でしたが、1年以上延期されたうえでの実施となり、国内外で注目が集まっています。公式発表によると、会議には約200人の中央委員と170人の候補委員が出席しました。主な議題は中央政治局の活動報告の発表、「経済および社会発展第15次5カ年計画の提案」草案の審議、そして関連決議の採択とされています。
一方、地方や一般市民の間では、この会議への関心は極めて薄いのが実情です。江蘇省泰州市に住む退職者の胡さんは、「中央は毎年のように会議を開くけれど、庶民には難しい文書なんてわかりません。ただ、病院代がこれ以上、上がらず、薬が保険で下りるようになってほしいだけです。最近は保険の対象外の薬も増えて、本当に生活が苦しい」と話します。
天津の大港油田で配達員として働く劉さんも、「共産党がどんな会議を開こうが、自分たちには関係ない。気になるのは油の値段が上がらないことと、配達アプリの手数料が下がることです。政府は“社会保障を改善する”と言うけれど、言えば言うほど生活が苦しくなる。もう言葉を反対に聞くしかない」と嘆きます。
北京郊外の通州区東部にある燕郊経済技術開発区には、家賃の安さから多くの陳情者が身を寄せています。遼寧省から来た李さんは、警察の取り締まりを避けるため、すでに1か月以上ここで暮らしていると話しました。「警察があちこちで人を捕まえているから、ここに隠れるしかない。四中全会が終わったら信訪局に資料を提出するつもりです。この建物には、私のような人が十人以上います」と明かします。会議への印象を尋ねると、彼女は苦笑しながら「私たちに何の関係があるのですか。あの会議は彼らのためのもの。政府は庶民のことなんて気にしません。ただ弾圧するだけ。ニュースで言っていることなんて全部ウソですよ」と語りました。共産党系の官製メディアは会議前から「内需拡大」「雇用安定」「国民の生活の安定」を繰り返し強調しています。しかし、複数の経済研究機関は「消費低迷」「若年層の高失業率」「地方財政の悪化」を依然として深刻な課題として挙げています。中国社会科学院が10月に発表した報告書でも、住民の所得増加率が鈍化し、消費意欲の低迷が続いていると指摘されています。
湖北省襄陽市の工場で働く王さんは、「病院の料金は上がる一方で、薬も高くなっています。何度も会議を開いていますが、医療は全然良くなっていません」と語り、北京豊台区の陳情者・張さんも「不動産トラブルが何年も放置されたままです。『共同富裕』なんて言っているけれど、普通の人は自分の権利を守ることすらできません」と嘆きました。天津の飲食店で働く李さんも、「給料が減らず、家の値段がこれ以上下がらなければいい。政府は“経済を安定させる”と言うけれど、私たちは毎日お客さんが来ないことを心配しています」と話します。
SNS上では、「普通の人は四中全会に関心がない」という書き込みが相次ぎました。ある投稿では「彼らは『現代化』を語るけど、私たちは明日のガソリン代や学費、社会保険の方が気になる」といった声も見られます。浙江省の投資顧問・陸さんは、「企業の資金繰りは厳しく、受注も減り、税負担も重い。どんな政策を出しても、実際にお金が企業や個人に届かなければ意味がない。政府が『経済の安定と発展の両立』を掲げるということは、資本の流れをさらに管理し、地方への資金供給を引き締めることを意味します」と分析しています。
専門家たちは、今回の四中全会が焦点を当てているのは「第15次5カ年計画」や長期的な戦略であり、一般市民の生活とは距離があると指摘します。多くの人々にとって、「高品質な発展」という言葉には実感が伴わず、現実に気がかりなのは収入や雇用、住宅、医療といった身近な問題です。世論の多くは、政府が経済と国民の生活の安定を目指す一方で、庶民の生活感覚との間に大きな隔たりがあると見ています。会議後に、実際に所得や雇用、医療負担の改善につながる具体策が示されるかどうかが、国民の最大の関心事です。しかし、取材に応じた多くの人々は疑いを持っており、「今回の四中全会もこれまでと同じ。最終的な目的は、中国共産党の権力基盤を守ることだ」と口を揃えました。
(翻訳・吉原木子)
