「本日、病院で子どもの検査を受けたところ、血中鉛濃度は230μg/L(マイクログラム・パー・リットル)であった。この幼稚園には260人以上の園児が在籍しているが、現在その大半の子どもに足の脱力、発熱、歯の変色、脱毛、吐き気・嘔吐、悪夢などの症状が見られる」
2025年3月以降、甘粛省天水(てんすい)市麦積(ばくせき)区の「褐石培心(かっせきばいしん)幼稚園」の一部園児にこうした症状が現れ、当初は保護者たちも「成長に伴う不調」や「消化不良」と誤解していました。しかし、同じような症状を示す子どもが次々と見つかる中で、6月から保護者たちは子どもに血中鉛検査を受けさせ始めました。
保護者の証言によると、天水市内の病院では「正常である」と口頭で伝えるだけで、正式な書面の検査結果は発行されなかったといいます。この対応に不信感を抱いた保護者たちは、子どもを陝西省西安市の中心医院まで連れて行き、再検査を受けました。そこで出た結果は、衝撃的なものでした。
西安市中心医院によると、血中鉛濃度が206〜249μg/Lの「軽度中毒」のレベルの子どももいれば、250〜449μg/Lの「中度中毒」や450μg/L以上の「重度中毒」の子どももいたとのことです。これは、正常値の上限とされる100μg/Lの数倍に相当します。
74名の検査結果、うち70名が基準超過
7月6日まで、メディアの記者が西安市中心医院から入手した天水の園児に関する血中鉛検査報告書は74中70名が基準値を超えており、正常範囲だったのは4名のみでした。しかし、その4名の園児はいずれも問題となった「褐石培心幼稚園」の在園児ではありませんでした。
地元政府は現在、検査手法、機器、検査機関の資格などが検査結果に及ぼす影響について検証していると発表しています。
しかし、専門家の一部は、病院ごとに検査結果に多少の誤差があるとはいえ、鉛は微量元素であるため、その差は通常20%を超えないと指摘しています。今回の2つの病院の検査結果の差は明らかに合理的な範囲を超えており、検査データの信頼性や監督体制に対する強い疑念を招くものとなっています。
また、X(旧ツイッター)では、一部のネットユーザーが「天水市の病院が地元政府の圧力によって偽の検査データを作成したのではないか」と投稿しています。
大量の患児が西安市に殺到 医療体制がひっ迫
7月3日以降、天水市の数十名の幼児が西安市の病院に移送されており、西安市中心医院は緊急措置として優先診療枠を設けました。しかし、小児科病棟はすでに満床状態となり、内分泌科、消化器科、感染症科などに振り分けて治療を続けている状況です。
中には検査結果を見た保護者がショックで倒れ、医療スタッフにより緊急対応を受けたケースもありました。
医師によれば、血中鉛濃度が250μg/L以上の幼児は入院が必要で、点滴による排鉛治療や微量元素の補給などの処置が必要になります。通常の治療期間は約10日間とされ、その後も血中鉛の再検査を行い、必要に応じて追加治療を判断するとしています。
専門家が警告「慢性鉛中毒は深刻な害を及ぼす」
上海交通大学医学院附属新華病院の小児科専門医・顔崇淮(がん・すうわい)氏によると、児童の鉛中毒の多くは慢性的な蓄積による中毒であり、その蓄積には通常3か月以上の期間がかかるとされています。顔氏は、一般的な幼児の血中鉛濃度はおよそ20μg/Lであり、大量の鉛を摂取しない限り、通常は50μg/Lを超えることはないと説明しています。しかし今回の天水市でのケースでは、検出された値がいずれもこの基準を大きく上回っており、深刻な慢性中毒に該当すると考えられています。
また、中国の国家基準では、静脈血中鉛濃度が200μg/Lを2回連続で上回ると「鉛中毒」と診断されると定められています。鉛中毒は子どもの健康に極めて大きな悪影響を及ぼし、貧血や腎機能障害を引き起こすだけでなく、注意欠陥などの行動異常や知能の発達遅延といった不可逆的な損傷をもたらす可能性があります。
顔氏はまた、「血中鉛濃度が300~400μg/Lに達した場合、適切な治療を行わなければ知能指数(IQ)に深刻な低下が生じる可能性がある。治療後にある程度の回復は見込めるが、既に起きた脳への損傷は回復が困難なことも多い」と強調しました。
保護者の証言によれば、過去半年以上のあいだに子どもが腹痛、便秘、足の痛み、食欲不振、口臭、脱毛などの症状を訴えていた例も多く、こうした兆候が「成長期の不調」や「消化器系の問題」と誤認され、血中鉛検査が行われなかったというケースが多数あったとのことです。
子どもたちの体内に入った鉛の原因は何か
天水市政府は、幼稚園内に保管されていた食材や飲用水について緊急の抜き取り検査を実施し、その結果、2種類の食品添加物に鉛の基準値超過が確認されたと発表しました。これらのサンプルはすでに押収され、司法調査の対象となっています。また、疫学調査や医療対応、事件の処理などを行う合同作業チームも設立されています。
同園の教職員およびその子どもたちについても血中鉛検査が行われ、一部の教員が西安市の病院で再検査を受けたものの、その結果は現時点では公表されていません。
天水市の警察署はすでに園の責任者を対象に立件捜査を開始しており、「有毒有害食品の製造・販売罪」あるいは「食品安全基準に適合しない食品の提供罪」などの容疑がかけられる可能性があります。
しかしながら、多くの市民やネットユーザーは、こんなに早く原因を食品添加物に絞り込んだのは、真の汚染源から目を逸らすためではないかと懐疑的な見方を示しています。食品添加物業界の関係者からも、そもそも添加物に鉛が含まれること自体、極めてまれであるとの意見が出ています。
X(旧ツイッター)では、次のような投稿も見られます。
「20年前にも甘粛省天水市麦積区で鉛中毒事件が発生した。そして今また、同じ場所で同じような事件が起きている。なぜ鉛中毒はいつもこの地域で起きるのか?」
また、別のネットユーザーはこうした疑念も投稿しています。
「麦積区には大型の鉛・亜鉛・銀鉱山が存在する。この鉱山が鉛汚染の根源ではないか」
実際、ネット上には鉱山開発に関する審査資料が掲載されており、その中には次のような記述があります。
「甘粛省天水市麦積区甘泉(かんせん)鎮に大型の鉛・亜鉛・銀鉱山が存在し、鉱区の南部には白家河(はくかが)が流れており、季節性で中程度の水量を持ち、生活用水・工業用水として良質な水源とされている」
甘粛省天水市の幼稚園で発生した今回の集団鉛中毒事件は、中国における食品安全や環境汚染の深刻さを改めて浮き彫りにしました。
子どもは国家の未来です。一つの工程での見落としが、取り返しのつかない損害につながりかねません。しかし、中国において、子どもたちの安全を守る取り組みには、依然として多くの課題が残されています。
(翻訳・藍彧)
