小米(シャオミ)グループの董事長である雷軍(レイ・ジュン)氏は、6月3日に開催された投資家向け説明会において、自動車業界で続く「過度な競争」と無秩序な「価格競争」に反対する姿勢を明確に示しました。
小米グループが発表した最新の財務報告によると、小米自動車は2025年第1四半期に181億元(約3600億円)の売上を記録したものの、純損失は5億元(約100億円)に達しました。約7万6000台を販売したことから、1台あたり平均6600元(約13万円)の赤字となります。競争が一段と激化する現在の中国国内市場において、「赤字覚悟の販売」はもはや業界の常態と化しています。
赤字が続き、財務への圧力が強まる
電気自動車(EV)市場に新規参入したブランドとして、小米自動車は厳しい財務上の課題に直面しています。実際、小米自動車の赤字はこれまでも深刻でした。2024年、小米自動車の純損失は62億元(約1200億円)にも上りました。同年、小米はSU7を13万7000台余り納車し、累計注文数は24万8000台を超えたものの、「人民日報」に関連するメディア「起点新聞」が2024年の中間決算に基づいて算出したところ、当時の1台あたりの赤字は6万元(約120万円)を超えていました。
電気自動車業界では「赤字での販売」は珍しくないとはいえ、小米の決算内容は業界内で大きな議論を呼び、一部の競合企業からは批判の声も上がりました。
ある自動車メーカーの広報担当者は公然と疑問を呈しました。「これだけ赤字を出して、それでも販売を続ける意味があるのか?割引しなければ売れないから赤字で売る――これは過去であればダンピングと見なされた行為だ」。
「1台あたり6万元(約120万円)の赤字」という指摘に対して、小米グループの広報部総経理である王化(ワン・ホア)氏は次のように反論しました。「まず、小米自動車はまだ規模が小さく、自動車産業は典型的な規模の経済が働く業界である。規模が拡大すれば、コストも徐々に下がっていくと確信している。次に、小米の初の車種は純電動セダンであり、開発投資が大きいため、コストを回収するには時間が必要である。赤字は徐々に縮小していくと信じており、時間は小米の味方である」
テクノロジーメディア「36Kr(36クリプトン)」の報道によると、小米自動車内部では今後5年以上にわたり赤字が続く可能性があるとの想定で経営計画が立てられており、「価格を犠牲にしてシェアを拡大する」戦略が財務に与える圧力を浮き彫りにしています。
財務上の課題に加え、小米自動車は世論の逆風にも直面しています。今年3月には「小米SU7の爆発炎上事故」が世間の注目を集めたほか、SU7 Ultraモデルではカーボンファイバー製デュアルエアダクト付きフロントフードについて虚偽広告の疑いが持たれ、購入を検討していたユーザーの不満を招きました。
新エネルギー車企業が普遍的に収益不振 自動車業界の利益率が急落
小米自動車の赤字は例外ではありません。中国の他の新エネルギー車企業も同様に厳しい収益環境に置かれています。たとえば、零跑汽車(リープモーター)は2024年第1四半期に1.3億元(約26億円)の純損失を計上し極氪(Zeekr、ジーカー) は7.63億元(約154億円)の損失を出しました。
こうした各社の赤字は、中国の新エネルギー車市場で「価格戦争」が激化している現状を如実に物語っています。今年4月、小米SU7シリーズの納車台数は2万8000台を超え、20万元(約400万円)以上の価格帯では販売台数トップとなりましたが、業界全体の収益性は下落の一途をたどっています。
2025年に入ってからも、比亜迪(BYD)、吉利(Geely、ジーリー)、奇瑞(Chery、チェリー)などの主要メーカーが相次いで大幅値下げを断行し、価格競争は一段と激しさを増しました。自動車販売台数は増加傾向にありますが、企業の利益余地はますます狭まっています。工業企業全体の平均利益率が6.1%であるのに対し、自動車業界の利益率は明らかにそれを下回っています。
こうした利益急減の主因が「価格戦争」です。統計によると、2024年1月から8月までの間、ガソリン車の平均値下げ幅は11%、純電気自動車では15%に達しました。消費者はより高性能な車種を安価に購入できる一方で、自動車メーカーの1台あたり利益は深刻に圧縮されています。
2024年の不完全統計によれば、多くの企業が「赤字販売」を続けており、こうした過当競争を受けて、中国工商連合会自動車販売店協会は6月3日、「過当競争」と無秩序な価格戦争の排除を全業界に呼びかける公開提言を発表しました。業界関係者は、この提言がディーラー側の混乱への懸念だけでなく、自動車市場全体がシステム的な混乱に陥るリスクの警告でもあると述べています。
中国自動車流通協会のデータでは、現在の業界在庫警戒指数は59.8%に達しており、一部ブランドでは在庫係数が2か月を超えています。
新エネルギー車へのシフトと需給のミスマッチという二重の打撃により、店頭価格がメーカー希望価格を下回る「逆ザヤ現象」が多発し、ディーラーの資金繰りが極めて厳しい状況に陥っています。
赤字販売が止まらず、輸出が新たな収益の柱に
現在の業界動向を見る限り、なおも収益を上げられている企業は、強大な販売規模とそれに基づくスケールメリットに依存しています。こうした企業は、激しい価格競争の中でも一定の利益を確保できる可能性があります。
一方で、発展途上の新興メーカーにとっては、現段階では製品開発、技術革新、ブランド構築への長期的かつ集中的な投資が必要不可欠です。販売台数が増加し、量産体制が整うことで初めて、コストが低下し、収益力を確立できるようになります。将来的には、国内市場での安定だけでなく、海外市場でのシェア獲得も重要な成長戦略となります。
国内市場の「ストック化(飽和)」も、自動車メーカーにとって重大な課題です。かつては「100台の車で60人の顧客を争う」状況でしたが、現在は「100台で30人を奪い合う」競争構造に変化しており、価格競争に参加しなければ生き残れない現実があります。このような構図の中で、生き残りをかけた淘汰は今後も続き、業界再編は避けられないと見られています。
統計によれば、2023年には全国で約2540の4S店舗(正規販売店)が閉店し、全体の70%以上の店舗が赤字を出しているといいます。競争がさらに激化すれば、この傾向は今後ますます深刻化する可能性があります。
国内需要の低迷と業界の過当競争が重なる中、今後の自動車メーカーの利益源は、輸出市場や上流のサプライチェーンからの付加価値にますます依存することになります。海外市場の開拓、輸出能力の強化、外貨収益の確保は、主要メーカーにとって成長を維持するための鍵となるでしょう。
(翻訳・藍彧)