唐の太宗皇帝(イメージ:YouTubeスクリーンショット)

 蝗害(こうがい バッタ類の大量発生による災害)は水害、干ばつと並んで古代農業史上の三大災害といわれている。古代の賢君は災厄が発生する度に、自らの言行を反省し、罪を償い、神の許しを請うことで、災厄を取り除いてきた。

 『貞観政要』に、太宗皇帝の自身を省みる事で蝗害から免れたことについて、記載がある。

 貞観二年、京師に大干ばつが起こった際、空を覆うほどの蝗が襲来し、農作物に大きな損害を与えた。ひどく気にかかった太宗は、自らの庭を見に行った。

 太宗は庭を埋め尽くすほどいるたくさんの蝗を見て、そのうちの数匹を拾い上げ、それらに話しかけた。「国民の大切な穀物を食べ尽くしてしまうと、どれほどの害を与えてしまうだろう。国民に何か落ち度があったなら、罪は皇帝である私にある。できるならば、民の穀物を食べる代わりに私の内臓を食べてくれ。」

 そう言って、太宗は蝗を飲み込んだ。側近らはあわてて制止し、「そのようなものを食べてはいけません。病気になります。」と言った。

 太宗は「私はこの災禍の責任を私の命と引き換えにしようとしているのに、病気になることを恐れることがあろうか。」そう言って蝗を飲み込んだ。太宗のその罪滅ぼしの誠心は天を感動させ、やがて天をおおう蝗の大軍は姿を消し、蝗害は消滅したという。

 このことは『資治通鑑』や『旧唐書』などの歴史書にも記されており、架空ではない、歴史的事実である。

(文・雲鑑/翻訳編集・柳生和樹 )