米中貿易戦争の激化と中国国内の景気低迷の影響を受け、最近、中国各地で賃金未払い、労働者の権利保護要求、ストライキなどの事案が相次いでいます。その結果、企業の資金繰り悪化や経営難が深刻化し、社会的な矛盾も一層浮き彫りとなっています。
浙江省桐郷市の烏鎮では、大規模な労働者による抗議活動が発生しました。生迪光電科技股份有限公司は、2024年初めから数か月にわたり給与を支払っておらず、4月28日には約1,000人の従業員が工場でストライキを行い、翌日には烏鎮鎮政府前で集団抗議を行いました。従業員たちは、未払いの賃金の早期支払いを求めています。
従業員によると、1月以降3か月間も給与が滞納されており、長期的な不満が限界に達した結果としての行動だったといいます。ある従業員は取材に対し、「給与はすでに半年も支払われておらず、会社は政府にも多額の借金があります。とっくに倒産していてもおかしくない状態です」と語りました。また、近年多くの工場が赤字経営に陥っているのにもかかわらず、政府が企業の倒産を認めないことが、状況をさらに悪化させていると指摘しました。
会社側は、仕入先からの訴訟により銀行口座が凍結され、給与支払いが困難な状況であると説明しました。しかし、従業員たちはこの説明に納得しておらず、明確な支払いスケジュールを求めています。
企業信用情報サイト「企査査」によると、生迪光電はすでに「被執行人」に指定されています。裁判所の判決に従っていない金額は約1,689万元(約3億6,000万円)にのぼります。財務状況はすでに危機的といえます。
ストライキは4月29日にも起こりました。しかし、政府や企業側からの正式な対応はありませんでした。ある労働者は、「鎮政府は全く出てこない。それどころか、十数人の労働者を連行しました。私たちは犯罪者ではない。当然の権利として自分の血と汗の結晶である賃金を求めているのです」と憤りを語りました。
企業情報によれば、生迪光電は2000年に設立され、浙江省烏鎮鎮民合経済園区に本社を置き、照明器具および関連部品の製造と販売を行っています。代表者の沈錦祥氏は、上海に登記された関連企業「生迪智慧科技有限公司」の代表も兼ねています。同社は227件の特許、商標1件、行政許可6件を保有し、2社への投資実績があります。
現時点で、生迪光電および烏鎮鎮政府からは公式な声明は出されておらず、労働者が未払い賃金を取り戻せるかどうかは、今後の対応次第です。
なお、烏鎮は世界インターネット大会の開催地として知られています。これまで、「情報化モデル地区」として注目されてきました。かつて習近平総書記は「インターネットの成果を13億人以上の人民に行き渡らせることが我々の目標だ」と述べていました。しかし、現実には情報統制が強まる一方で、労働者の基本的な権利すら保障されていないのが実情です。
今回の烏鎮の事例は氷山の一角にすぎません。4月24日には、湖南省道県の広新運動用品有限公司でも、数百人の従業員がストライキを実施しました。同社は長年社会保険を未納のまま、2024年9月以降、50歳以上の女性従業員100人以上を「定年に達した」として一方的に解雇しました。しかし、補償金の支払いや退職手続きの支援を行いませんでした。
4月27日には、四川省遂寧市の上達電子工場でも、長期間にわたる給与・社会保険未払いに抗議してストライキが発生しました。工場は2023年6月以降に社会保険の支払いを停止し、2024年に入ってからは給与も支払われていません。
このほか、重慶市解放碑「2077サイバーシティ」プロジェクト、陝西省西安市団結村のプロジェクト、内モンゴル自治区通遼市の金燦御園住宅地などでも、労働者による賃金請求や抗議行動が相次いでいます。
こうした状況の背景には、米中貿易戦争による輸出減少と、国内経済構造のひずみがあります。ブルームバーグが引用したゴールドマンサックス(Goldman Sachs)の報告によれば、米国が中国製品に145%の追加関税を課した場合、中国国内で最大2,000万人(全国労働力の約3%)の雇用に影響を与える可能性があるとされています。
中国政府は4月25日に開催された政治局会議において、習近平氏の主導のもと、「雇用の安定」「企業の安定」「市場の安定」「予測の安定」という4つの安定確保目標を掲げました。しかし、専門家はその実効性に疑問を呈しています。
台湾南華大学の孫国祥教授は、中共が繰り返し強調する「安定の確保」と「米中貿易戦争による対外闘争」の2本柱が、実際には矛盾を孕んでいると指摘します。「中共は安定の確保を掲げて国民の意識統制を通じて、短期的な国民の統制維持を狙っています。しかし、根本的な社会経済の問題は依然として解決されていません。消費の低迷、若年層の高失業率、地方政府の債務リスクの拡大など、現在の最大の問題は国民の信頼が大きく揺らいでいることです」と述べています。
対外的な摩擦と内部の経済構造の不均衡という二重の圧力の中で、企業は経営を維持できず、労働者の基本的な権利も脅かされています。こうした問題が各地で蓄積されていけば、将来的にはさらに大きな社会的不安へとつながる可能性があり、今後の情勢が注目されます。
(翻訳・吉原木子)