近年、中国の各地にある国際空港は、まるで「ゴーストタウン」のように閑散としています。国内では消費の落ち込みが続き、海外からの観光客もパンデミック前の水準には戻っていません。
かつて多くの人でにぎわっていた空港が、今では信じられないほど静まり返っています。2025年4月27日、あるブロガーが上海虹橋空港の様子を撮影したところ、ターミナルにはほとんど人影がありませんでした。26日午後には、別のネットユーザーが上海浦東空港の国際出発エリアを撮影し、出発ロビーはほぼ無人で、免税店も大半が閉まっていたと報告しました。
同様の光景は、他の空港でも確認されています。4月24日には西安咸陽国際空港の国際出発待合室が無人だったほか、21日には新疆の天山国際空港でも「非常に閑散としていて、すべての店が閉まっていた」と投稿されています。11日には、北京首都空港の出国エリアにある免税店ががらんとしている様子が記録され、「何が起きているのか分からない」との声も上がっています。さらに、大連周水子空港でも乗客がまばらな様子が撮影されました。ネットユーザーは「この経済状況で、さらに18キロ先に新しい空港(大連金州湾国際空港)を造るのは、まさに無駄遣いだ」と批判しています。
このような空港の閑散ぶりには、国際線の「運航停止ラッシュ」も大きく関係しています。2024年以降、複数の国の航空会社が中国路線の運航を停止または無期限で中止し、いわば「撤退の波」が広がりました。ヴァージン・アトランティック航空(英国)、ブルネイ王国航空、カンタス航空(豪州)、ポーランド航空、スカンジナビア航空などが撤退を表明。メキシコ航空は、パンデミック以降中国便の運航を再開しておらず、インドと中国の直行便も4年前に中断されて以来、いまだ復活していません。米中間の航空便も2019年の水準には回復しておらず、2024年11月にトランプ氏が米国大統領に再選された後は、再び関税戦争が激化し、顧客の往来はさらに減少しました。
同時に、中国三大国有航空会社の2024年の決算報告によると、いずれも5年連続で赤字を計上しています。中国国際航空は2億3,000万元の純損失、中国南方航空は17億7,000万元、中国東方航空は42億元の赤字を記録しました。いずれの社も2023年より赤字幅は縮小されていますが、収支は依然として改善されていません。
また、航空輸送量は、中国国内では、2019年の輸送量を超えたものの、海外路線での回復は他国より遅れています。これは、パンデミックによる移動制限が2023年初頭まで解除されなかったことが主な原因です。その為、世界の航空業界が2023年に黒字転換した一方で、中国の大手航空会社は依然として苦境から抜け出せていません。
中国のフライト情報会社「Flight Master」と航空データ分析企業「Cirium」によると、2025年3月時点の中国の国際線座席供給は2019年比で約20%少なく、経済的な圧力と外交関係の悪化が国際旅行の回復を阻んでいます。国内線のエコノミー航空券平均価格は前年より12.1%下がり、767元(約105米ドル)となりました。中国南方航空の旅客収益率は12.7%減、中国国際航空も12.4%減となっています。最近では「航空券200元制限令」や「高鉄1割チケット」などが話題となり、5月の大型連休前には航空各社が最大80%引きの特価セールを打ち出しました。
国際線も同様に価格が下がっています。ForwardKeysのデータによれば、2024年の中国発国際航空券価格は前年比で32%下落し、アジア全体の平均12%減に比べて大幅な下落となっています。
ビザ免除政策の拡大も続いています。2024年末、中国当局は日本、ブルガリア、ルーマニアなど9か国の一般旅券所持者に対し、2024年11月30日から2025年12月31日まで短期滞在ビザを免除することを発表しました。また、38か国の滞在可能日数を15日から30日に延長する措置も講じました。しかしながら、その効果は限定的です。2024年における外国人の出入国者数は2,694万人で、2019年の9,767万人には遠く及びません。
2025年第1四半期の路線認可状況では、欧米方面の増便はほとんど見られません。新たな国際線の多くはロシア、中東、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど「一帯一路」関連地域に集中しています。
外国人観光客が中国を避ける理由については、ネット規制により多くの海外アプリが使えず
宿泊予約ホテルの情報が限られた事、Airbnbなどの手頃な宿泊サービスも撤退したこと、外国人が特定のホテルしか利用できない制度、警察への滞在届などが不便さを増している点等が指摘されています。さらに、外国人を狙った凶悪事件が相次ぎ、治安への不安感も広がっています。
米国の経済学者・黄大衛氏は大紀元の取材に対し、「欧米や日本・韓国の観光客は、中国における法制度の不透明さ、キャッシュレス決済の障壁、情報統制、人権問題への懸念を強く持つようになっている」と述べました。今後、こうした状況が改善されなければ、中国の国際的評価はさらに低下し、観光客離れが長期化する可能性が高いと見られています。
(翻訳・吉原木子)