中国経済の低迷が続き、失業率が上昇する中、若者の就職はますます困難になっています。最近、ある動画がネット上で話題となりました。湖南省出身の若い男性が広東省の小さな食堂で仕事を求め、必死に雇ってもらえるよう懇願しました。彼は「食事ができればそれでいい」と語り、すでに丸一日何も食べていないことを明かしました。

 この動画が拡散されると、多くのネットユーザーが関心を寄せ、議論を呼びました。その後、食堂の店主がメディアの取材に応じ、この男性は足が少し不自由なように見え、話しぶりからも嘘をついているとは思えなかったため、食事を提供したと説明しました。

 「私は彼に、もしお金がなくて食事に困ったら、いつでも来ていいと言いました。お金は要りません」と店主は語りました。「一人で遠く離れた場所で暮らすのは大変です。私自身も同じような経験をしたことがあり、そのときに助けてくれた人がいましたから。」

 店主の善意ある行動に、多くの人々が感動し、称賛の声が寄せられました。「素晴らしい店主ですね。商売繁盛を願います」「やはり世の中には善良な人が多い」などのコメントが相次ぎました。一方で、「本当に食べるものにも困っているということは、よほど追い詰められている状況なのだろう」と、若者の厳しい現状を嘆く声も見られました。

 近年、中国経済の減速が続き、就職市場はますます厳しくなっています。今年3月9日、中国の人力資源社会保障部の王暁萍部長は全国人民代表大会(全人代)の記者会見で、2024年の新卒者数は1222万人に達する見込みであり、雇用の総量に対する圧力は依然として大きく、構造的な矛盾が深刻化していると述べました。また、国際的な経済環境の不透明感が増し、国内の経済回復の基盤も不安定であるため、雇用への影響が懸念されるとも指摘しました。

 時事評論家の蔡慎坤氏は、自由アジア放送(RFA)の取材に対し、中国の雇用問題はすでに全国的な課題となっており、若年層の実際の失業率は少なくとも40%に達していると指摘しました。これは政府の公式発表の十数%という数字を大きく上回るものです。政府は若者に地方や農村部での就職を奨励していますが、根本的な解決策にはなっていません。

 蔡氏は、最大の問題は民間企業の雇用市場が大幅に縮小していることだと分析しています。習近平総書記は全国人民代表大会(全人代)前に民間企業の代表者との座談会を開いたものの、これまでのところ具体的な効果的な新政策は打ち出されていません。習政権が推進する「国進民退(国有企業の拡大と民間企業の後退)」の方針により、民間企業はますます周縁化され、投資家の信頼が低下し、大規模な投資を控える傾向が強まっています。

 さらに、国際経済の悪化や貿易戦争、関税問題が企業の不確実性を高め、投資拡大の足かせとなっています。加えて、中国国内の生産能力過剰が深刻化しており、2024年2月の消費者物価指数(CPI)は前年比で0.7%減少し、13か月ぶりにマイナスへと転じました。これはデフレ問題が依然として続いていることを示しており、企業の利益率低下や内需の低迷をさらに浮き彫りにしています。

 現在の雇用市場は悪循環に陥っており、失業率の上昇により国民の購買力が低下し、それが内需のさらなる縮小を招いています。その結果、企業の売上が減少し、採用の抑制や解雇の増加につながり、さらなる失業者を生み出すという負の連鎖が続いています。2024年には新たに1000万人以上の大学卒業生が労働市場に参入しますが、すでに過去数年間の失業者が累積しており、就職の難易度はますます高まっています。

 台湾の国防安全研究院・中国共産党軍事・作戦概念研究所の方琮嬿(ほう・そうえん)助理研究員は、自由アジア放送(RFA)に対し、中国政府の若者向け雇用政策は過去の施策を踏襲するものが多く、目立った効果は期待できないと指摘しました。「根本的な問題が解決されない限り、若者を農村部や内陸地域に派遣するだけでは雇用問題を解決することはできません」と述べています。

 中国経済の減速、民間企業の縮小、国際経済の不透明さといった複数の要因が重なり、中国の若年層にとって就職のハードルは一層高くなっています。「卒業すれば即失業」という現象はすでに社会問題化しており、政府の政策だけではこの状況を根本から改善するには至っていないのが現実です。

(翻訳・吉原木子)