中国の公式メディアは新年(旧正月)早々、「経済は引き続き好調であり、安定した回復が続いている」と主張しました。しかし、あるネットユーザーは自身の観察をもとに、「北京の衰退は目に見えて明らかだ」と指摘しています。
また、中国最大の経済省である広東省は、昨年の経済成長率がわずか3.5%にとどまり、中国当局が掲げた5%の目標を達成できなかったのです。
経済成長の原動力は企業家
ベテランジャーナリストの郭君氏は、「菁英論壇(エリート・フォーラム)」で、中国当局の公式データでは昨年の経済成長率が5%と発表されたものの、ほぼすべての専門家や国際機関がこの数字よりも低いと判断していると指摘しました。投資機関の分析によれば、実際の成長率は4%にも満たないとみられています。
中国経済は40年間にわたる高速成長を経ており、成長率の大幅な鈍化は避けられません。しかし、その変化は中国に二つの大きな衝撃をもたらします。一つは社会構造への影響であり、もう一つは経済モデルの変化に対する影響です。
中国の経済学者、北京大学の張維迎(ちょう・いげい)教授は、中国経済の成長理論について詳しく論じた記事の中で、経済成長の原動力は企業家であり、ケインズ学派の投資・消費理論が主張するような政府のマクロ調整ではないと述べています。
革新型企業家こそが労働生産性を大幅に向上させる
郭君氏は、企業家には「裁定型企業家」と「革新型企業家」の二種類があると説明しています。裁定型企業家は、ある地域の商品を別の地域で販売し、その価格差を利用して利益を上げることです。しかし、この手法を用いる企業家が増えるにつれて、利益は次第に減少していくのが自然の流れです。広東省では、おおむねこのような状況です。
広東省はいち早く開放し、外資の企業家に参入してもらって利益を上げたため、いち早く大きな成長を遂げました。このモデルはその後、内陸部へと波及していき、その過程はまるで山火事のように、中心から外へと燃え広がり、すべて燃え尽きると自然に鎮火するようなものです。
本当に労働生産性を大幅に向上させることができるのは、革新型企業家です。現在のアメリカ型経済成長の原動力の一つは、まさに革新型企業家です。
革新型企業家にとって最も重要な生存条件は、社会に真の法治体系が確立されていることだと、張維迎教授が述べました。法治がしっかり機能することで、企業家は安定した将来の見通しを持つことができ、それが革新や起業への意欲を生み出します。
郭君氏は、中国には革新型企業が存在しないわけではないと指摘しています。ここ10年間、中国でも革新型企業家が登場してきました。しかし、中国共産党の体制下では、法治体系がすでに崩壊しており、その結果、企業は革新の意欲を失っています。
そのため、多くの中国企業家や中間層が国外脱出を図っているのが現状です。この状況が続けば、中国に残るのは官僚体制の中で活動する裁定型企業ばかりとなり、革新型企業は徐々に姿を消していくでしょう。
このままでは、中国経済は過去の古いやり方に戻り、根本的な回復はほぼ不可能で、将来の状況はさらに厳しくなることが避けられないでしょう。
税外収入は年間4.4兆元
評論家である蔡慎坤氏は、広東省の経済が常に中国全体の10%以上を占めてきため、広東省の景気悪化が中国全体の経済に深刻な影響を与えていると指摘しています。
公式のデータによると、広東省の昨年の経済成長率はわずか3.5%にとどまり、広東省で最も経済が発展している都市である広州市の2024年の失業率は、37%に達しています。蔡慎坤氏は、「これほど高い失業率の中で、経済がどのように成長したのか」と疑問を投げかけています。
蔡慎坤氏は、昨年の中国当局の税外収入は25.4%増加し、これは前例のない規模だと指摘しました。年間の税外収入は4.4兆元(約94兆円)に達し、極めて驚異的な数字です。
この状況は、中国当局があらゆる手段で企業や個人から強制的に資金を徴収し、収入を増やしていることを蔡氏は指摘しています。多くの企業家は、昨年に厳しい搾取を受け、やむを得ず国外へ逃れました。逃げなかった場合、中国当局に捕まれば、全財産を奪われるかもしれません。
蔡慎坤氏は、2025年の中国当局の税外収入は昨年のような成長速度を維持することは不可能だと考えています。その理由は、資金を搾り取れる企業はほぼすべて搾り取られており、搾り取られていない企業は経営状態が悪く、多くの企業が賃金を支払えなくなっているからです。
中国経済全体の見通しは非常に厳しい
独立系テレビプロデューサーの李軍氏は、「菁英論壇」で、2025年1月に発表された製造業の購買担当者景気指数(PMI)が49.1%で、景気の分かれ目とされる50%を下回り、ここ5か月間で最低を記録したと述べました。
昨年12月に中国の輸出貿易額が増加したのは、主にトランプ大統領の就任が間近に迫り、アメリカ企業が関税引き上げ前に駆け込みで商品を仕入れたためだといいます。現在は注文がなくなり、その影響でPMIが一気に49.1%まで落ち込み、市場全体が悲鳴を上げている状況です。
中国では零細企業が全企業の98.4%を占めています。現在それらの企業の経営は極めて厳しくなっているため、失業率の上昇や消費の低迷が続いているのも決して不思議ではありません。
李軍氏によると、最近ネット上で話題になった記事の中で、ある北京市の男性がバスに乗り、沿道に広がる北京の寂れた光景を目の当たりにし、「北京はますます地方都市のようになっている」と感じたと述べています。
その男性によれば、2000年から2019年の北京は、冬の街頭に湯気が立ち上り、焼き栗や焼き芋の大きなドラム缶が並び、サンザシやみかん、山芋を飾った串刺しのキャンディフルーツが店頭を彩っていました。しかし、今ではすっかり活気が失われ、当時の北京の面影はまったくなくなっています。
体制の圧力が限界に達すれば、突然崩壊する事態も
郭君氏は、改革とは本質的に社会の利益を再分配し、再分割する過程であると考えています。その中には、さまざまな階層や人々の利益が関わっており、必然的に対立が激しくなると指摘しています。
経済成長率が高ければ、こうした対立は一時的に覆い隠されることがあります。しかし、経済成長が鈍化し、さらにはマイナス成長に陥ると、一部の人々がより多くの利益を得る一方で、他の人々がより少ない利益を得ることになるため、対立はより鋭くなります。
中国当局は1980年代から、一貫して経済体制の改革を高らかに宣伝してきたが、長年にわたる改革を続けてきたにもかかわらず、一般庶民の生活は依然として貧しいままであり、一方で官僚たちはますます裕福になっています。
郭君氏は、極端な専制体制の下では、改革の結果として官僚層が利益を得る一方で、その他の人々は損失を被ることになると指摘しています。その典型的な例が、最近、中国当局が官僚や公務員の給与を5%引き上げた一方で、大多数の庶民の収入は昨年減少したという現象です。
郭君氏は「どの社会にも耐えうる限界があり、圧力がその限界を超えた瞬間、突然崩壊する可能性がある」と述べています。実際、旧ソ連をはじめとする多くの共産主義国家の政権は、このように崩壊し、中国共産党もまた、同じ道を歩んでいます。
(翻訳・藍彧)
