中国経済の低迷が続き、不動産業界が深刻な危機に陥る中、建設業界も未曾有の厳しい状況に直面しています。かつて輝かしい実績を誇り、中国企業500強にも名を連ねた大手建設企業も例外ではなく、現在は深刻な経営難に陥っています。

 建設業界の関係者によると、近年、工事代金の回収はますます難しくなっているとのことです。ある関係者は、「2014年から2016年にかけて、すでに工事代金の回収が難しくなっていると感じていました。しかし、2022年以降の状況はそれをはるかに上回り、まさに天と地ほどの差があります。2015年当時の資金繰りの苦労など、今に比べれば取るに足らないほどです」と話しています。

 特に山東天元建設集団の財務状況は極めて深刻です。同社の労働者への賃金支払い額は、2021年には約1300万元だったものの、2022年には800万元に減少。2023年には300万元にまで落ち込み、2024年にはわずか110万元にまで縮小しました。

 こうした状況を受け、同社は工事代金の回収を強化するため、プロジェクト管理者に発注元との直接交渉を指示しました。例えば、ある発注元である衛生学校が8万元の保証金を支払わなかったため、プロジェクト管理者が政府の苦情窓口に通報しました。 

 その結果、政府から学校側に圧力がかかり、校長の評価にも影響を及ぼしました。追い詰められた校長はやむを得ず数人の教師から借金をしました。教師達が、プロジェクト管理者へ、6000元から7000元をクレジットカードで決済することで、ようやく工事代金を支払いました。

 建設業界の厳しい状況は、現場の労働者や管理職にも深刻な影響を及ぼしています。2024年2月5日、旧正月明けの仕事始め以降、市場の低迷により、多くの子会社やプロジェクトチームではプロジェクトマネージャーのみが出社し、一般管理職には出勤通知すら届いていない状況です。

 また、ある子会社では、すでに1年半も給与が支払われておらず、別の子会社では半年に一度しか給与が支給されていません。年末のボーナスも半額しか支給されず、2024年の基本給は従来の7、8000元から3、4000元に引き下げられました。さらに、業績連動型の給与制度も事実上廃止されました。さらに、給与水準は2014年から2015年の水準に逆戻りしています。中には月に5日間の強制休暇を導入し、社員が自ら出勤しても、給与を支払わない企業もあるようです 

 また、以前は1、2ヶ月以内に精算されていた燃料費や接待費などの経費支払いも、現在は第一〜第二四半期まで待たなければならず、経費精算が滞り、最終的に管理職が自腹を切るケースも増えています。

 さらに、施工業者の間では、企業からの未払い金が膨らんでいることが深刻な問題となっています。工事代金の長期滞納が常態化しているため、施工業者は支払いの代わりに不動産を受け取らざるを得ない状況です。このように、建設業界全体が深刻な経済危機に直面しており、多くの企業や労働者が生き残りをかけた厳しい戦いを強いられています。

 天元建設集団の経営危機は、単なる工事代金の未払いにとどまらず、膨大な数の訴訟からもその深刻さがうかがえます。かつて中国企業500強に名を連ねたこの大手建設会社は、現在、多くの訴訟に巻き込まれ、莫大な負債を抱えています。上海票据交易所(上海手形取引所)が公開したデータによると、2025年1月31日時点で同社の手形決済(承兑)残高は15.37億元に達し、累計の遅延発生額は82.1億元、未払い残高は15.01億元に及びます。これらの数値は、天元建設集団が深刻な資金繰りに直面していることを如実に示しています。

 企業情報プラットフォーム「愛企查」のデータによると、天元建設集団は現在、5943件もの司法訴訟案件を抱えており、立件情報は2678件、行政処分は55件、債務不履行による強制執行対象者(被執行者)のリストには177人が名を連ねています。天元建設集団のリスクは極めて高く、業界内でも特に不安定な企業の一つと見なされています。

 裁判記録を閲覧できる「裁判文書網」によれば、天元建設集団に関連する判決文書は5582件に及び、多くの案件で同社は契約違反との被告として訴えられています。

 天元建設集団の公式サイトによると、同社の董事長(会長)であり、党委員会書記を務める張桂玉氏は、過去に「全国優秀党務工作者」の称号を受賞した実績があり、中国共産党の最高指導者である習近平氏とも会談したことがあるとされています。

(翻訳・吉原木子)