河北省保定理工学院でこのほど、衝撃的な事件が発覚しました。同校の教職員と学生、合わせて3万5千人が、数ヶ月にわたって糞尿を含む汚水を使用していた可能性があるというのです。このニュースが報じられると、社会全体で大きな注目と議論を巻き起こしました。時事評論家の趙蘭健(チョウ・ランケン)氏は、この事件について「中国の教育における深刻な問題を浮き彫りにし、認知力や判断力の欠如、さらには不合理な現象に対する無関心さを象徴している」とコメントしました。

 報道によると、保定理工学院の学生たちは、ここ数ヶ月の間、洗顔や入浴、さらには料理にまで糞尿を含む汚水を使っていた可能性があります。その結果、時間の経過とともに、多くの学生が腹痛や嘔吐、発熱などの症状を訴えるようになりました。一部の保護者や学生によれば、新学期が始まった当初から寮の水道水は黄色く濁り、塩味がするなどの異常が見られたとのことです。しかし、学校側に問題を報告しても、「配管工事の影響」など曖昧な説明で片付けられ、事態が広範囲で注目を集めるまで効果的な対応が取られることはありませんでした。

 12月19日、一部の学生に取材したところ、多くの学生が発熱や下痢、嘔吐などの症状を訴えていることが確認されました。ある学生は、「飲料用のウォーターサーバーの水は問題なさそうに見えましたが、寮の水道水は明らかにおかしかったです。黄色く濁り、塩味があり、匂いも異常でした」と語りました。「極目新聞」によると、学校側は「配管が逆接続されている」との噂を否定し、ネット上の情報はデマであると主張しています。また、学生たちの健康問題については、最近流行しているインフルエンザやノロウイルスが原因である可能性を示唆しました。一方で、保定市の疾病予防管理センターも調査に乗り出し、現在サンプル検査を進めているとのことです。

 事件が公になると、ネット上で拡散されたある動画がさらに大きな反響を呼びました。その動画では、保定理工学院の水道の蛇口から黄色く濁った水が流れ出し、明らかに気泡が含まれている様子が映し出されています。この動画を目にした多くの人々は驚愕し、「なぜ3万5千人もの教職員と学生がいる学校で、これほど明白な問題が長期間放置されていたのか」と疑問を投げかけました。また、一部の学生は「食堂の料理もこの汚染された水で作られているかもしれない」と懸念を示しています。一方で、怒りを露わにするネットユーザーも少なくなく、「学生が多すぎるから減らそうとしているのか」と辛辣なコメントを投稿する人もいました。

 時事評論家の趙蘭健は、この事件について「偶然ではなく、社会全体の官僚主義や教育制度の問題を反映している」と指摘しています。彼は、中国の教育制度は長い間、従順さや服従を重視してきたため、学生たちは明らかな異常に直面しても自ら判断したり、反論したりする能力を失っていると批判しました。このような「奴隷化された教育」の結果が、今回の保定理工学院の汚水事件の根本原因であると彼は主張しています。

 さらに彼は、この問題は単なる管理ミスではなく、社会全体が問題を見て見ぬふりをする姿勢の典型例であると述べました。学校から社会全般に至るまで、効果的な監視と責任追及の仕組みが欠如しているため、問題が長期間解決されない状況が続いているのです。また、言論の自由が制限されている環境では、人々は声を上げることを躊躇し、「騒乱を引き起こす」「社会秩序を乱す」といったレッテルを貼られることを恐れてしまうと指摘しました。

 この事件は、近年発生した他の類似事件を思い起こさせます。2021年、深圳市南山区のある高級マンションで、排水管の設計上の欠陥により糞尿を含む汚水が水道に逆流する事件が発生しました。2021年6月23日、ネット上でこのマンションに住む住民から「自宅の水道水に悪臭がする」との報告が投稿されました。感覚の鋭い住民たちは数日前から異臭を感じていたと言いますが、管理会社に報告しても「問題は発見されなかった」との返答があっただけでした。

 当初、一部の住民は「これは個人の勘違いではないか」と思っていましたが、多くの住民が同様に異臭を訴えるようになりました。小さな子どもが入浴中に臭いに耐えられず途中でやめたり、手を洗った後も悪臭が取れないなど、事態は次第に深刻化しました。最終的には、大雨の影響で汚水が大規模に逆流し、排水管が破損していたことが発覚しました。この破損により、汚水が飲用水管に混入し、マンション全体の水道水が薄められた汚水に汚染されていたのです。この結果、多くの住民が2ヶ月にわたりこの汚染された水で料理、入浴、歯磨き、さらには飲用までしていたことが判明しました。住民の中には下痢や皮膚炎を発症した人もいました。

 「深圳第一現場」の報道によれば、住民の一人である張さん(仮名)は、「子どもがシャワーを浴びた際、温水から強烈な悪臭が漂ってきた」と語りました。別の住民は、「腐ったものが臭うようなひどい匂いだった」と表現しました。ある住民は、当時夏場で喉がずっと痛く、エアコンの影響だと思っていたものの、実際はこの汚水を飲んでいたことが原因だったと後から気付いたと明かしました。

 保定理工学院の汚水事件と深圳の高級マンションの逆流事件は、単なるスキャンダルにとどまらず、社会全体の悲劇を象徴しています。学生たちの成長や教育、健康は国の未来と希望を担っています。その生活用水や食の安全は厳格に管理されるべきですが、このような深刻な公共安全問題が発生したことは驚愕すべき事態です。

 また、深圳の高級マンションは、1平方メートルあたり15万元(約300万円)という非常に高額な住宅であり、80平方メートルの物件なら1,000万元(約2億円)近くにもなります。このような高額物件を購入できる人々は、間違いなく中国の富裕層に属しています。彼らが持つ社会的資源は、一般市民よりもはるかに高い生活の質を保証するはずですが、こうした「社会の頂点」にいると考えられる人々でさえ、このような不快極まりない事件を回避できませんでした。一部のネットユーザーは「最も高い家に住み、最も汚い水を飲む」と皮肉を込めてコメントしています。

 特殊な保護が必要な若者であれ、豊富な資源を持つ富裕層であれ、特権階級に属さない限り、基本的な食と水の安全を真に保障することは難しいのが現状です。「特供」される資源がない限り、誰もが劣悪な食べ物や飲み水に接する可能性があるのです。この現実は、中国社会が深刻な不安感に包まれていることを物語っています。

(翻訳・吉原木子)