中国経済が冷え込み、欧米諸国による対中制裁が一段と強まるなか、中国に進出している外資系企業は続々と撤退しています。過去一年以上まで遡ると、日本の大手企業を含むグローバル企業20社以上が中国での事業を閉鎖し、大幅な人員削減を行っていることがわかります。経済専門家は、外資企業の中国撤退の流れは今後、ますます強まると指摘しています。

 それでは、中国国内メディアおよび海外メディアの報道をベースとして、大手企業が中国から撤退する動きを追っていきましょう。

 9月19日、米国の著名なテクノロジー企業シスコ(Cisco)は、中国遼寧省大連市にある工場の従業員を300人削減しました。時期を同じくして、ドイツのフォルクスワーゲンは、南京で生産しているパサート(Passat)とシュコダ(Skoda)の工場を2024年に正式に閉鎖する予定だと発表しました。

 9月13日、トヨタグループ(Toyota Motor Corporation)傘下の日野自動車は、中国でのディーゼルエンジンの生産を停止し、子会社の上海日野発動機が9月30日をもって生産を終了すると発表しました。

 8月末には、ホンダ技研工業(Honda Motor Co., Ltd.)の武漢市にある合弁工場が全面的に生産を停止し、2500人の従業員が削減されました。

 8月下旬には、米国IBMが中国での研究開発部門を閉鎖し、1000人以上の従業員が影響を受けました。

 8月20日には、日本のコニカミノルタ(Konica Minolta)が江蘇省無錫市にある工場を来年に全面閉鎖し、1300人以上の従業員を削減する予定だと明らかになりました。

 8月初旬、スイスのリープヘル(Liebherr)社は徐州市のコンクリート事業工場を閉鎖する声明を発表しました。

 同時期に、日本のキヤノン(Canon)は蘇州市にある工場で人員削減を開始しました。中国のポータルサイト「鳳凰網(フォンファンネット)」の報道によれば、2021年にはキヤノン中国の従業員数が1500人から約1300人に減少し、全国10カ所の事務所および天津、青島、大連、ハルビンの4つの支社が閉鎖されました。

 7月23日、日本製鉄(Nippon Steel Corporation)は上海宝山鋼鉄との合弁会社「宝鋼日鉄自動車鋼板有限公司(BNA)」から撤退し、すべての持ち株を中国側に譲渡しました。

 7月12日、日本の加藤製作所(KATO)は中国市場から正式に撤退し、昆山市にある合弁工場を解散しました。

 6月には、日産自動車(Nissan Motor)が常州市にある生産工場を閉鎖すると発表しました。同時期に、日本の矢崎総業は汕頭(すわとう)市にある自動車部品工場を閉鎖しました。

 5月16日、米国のテクノロジー企業Kingland(キングランド)は大連市にある金蘭ソフトウェア会社を解散し、160人以上の従業員を解雇しました。

 5月には、マイクロソフト(Microsoft)が中国にあるAI研究開発チームを撤退させました。

 4月、ドイツのSAP(Systemanalyse und Programmentwicklung)の上海部門が人員削減を開始し、削減は来年の第1四半期まで続く予定です。

 2月29日、日本のブリヂストン(Bridgestone Corporation)が瀋陽市にある生産工場を正式に閉鎖し、1200人以上の従業員が削減されました。

 昨年11月、英国の半導体設計会社Graphcoreは、米国が新たに実施した輸出規制によって中国市場でのハイテク製品の販売が制限されたため、中国市場から撤退し、大多数の中国従業員を解雇すると発表しました。

 昨年9月、カナダの年金制度投資委員会(CPP Investments)、ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)、およびオンタリオ州教員年金基金(OTPP)の3つの投資機関は、中国市場からの撤退を決定しました。

 さらに、運用額約260兆円のノルウェー政府系投資ファンドである「ノルウェー中央銀行投資管理部門(Norges Bank Investment Management, NBIM)」は、昨年9月に運営上の理由で上海代表事務所を閉鎖し始めました。

 昨年8月、日本の大同電工は蘇州市にある生産工場を閉鎖し、正式に撤退しました。

 昨年7月、日本の三菱自動車(Mitsubishi Motors)は中国市場からの撤退を発表しました。ロイターの報道によれば、三菱自動車はフランスのルノー(Renault)の新しい電気自動車部門に最大2億ユーロ(約318億円)を投資し、欧州およびその他の市場でのプレゼンスを強化する計画です。

外資撤退、今後さらに加速

 経済産業省は2020年7月、中国に進出している日本企業87社の生産ラインを東南アジア諸国や日本国内に移転させるため、700億円の補助金を提供すると発表しました。これは、日本の中国依存を減らし、強靭なサプライチェーンを構築することを目指すものです。報道によれば、2024年までにおよそ150〜200社の日本企業がその生産ラインの一部または全部を日本に移転することを決定しており、その数は今後も増加し続ける見込みです。

 今年7月、中国日本商会が中国で活動する約8000社の日系企業を対象に行ったアンケート調査では、最終的に1,760件の有効な回答が得られました。その結果、60%の日本企業が今年の中国の経済状況について「悪化」または「やや悪化している」と考えていることが分かりました。この数字は5月に実施されたアンケート調査時の50%から大幅に増加しています。

 台湾大学経済学部の樊家忠(はんかちゅう)教授は海外メディア「大紀元」の取材に対し、「外国資本の撤退がますます深刻化し、緩和する兆しが見られないため、少なくとも来年までは楽観視できない」と述べました。樊氏は、中国に大規模な投資をしてきた外資系企業が撤退しているだけでなく、中国国内の企業も逃げ出していると強調しました。また、米国大統領選の不確実性が高く、将来にわたって関税障壁が問題となりうることから、今後も外資系企業の撤退が加速するだろうと予測しています。

 作家で時事評論家の盛雪(せいせつ)氏は以前、メディアの取材に応じた際、外資系企業の中国撤退はここ数年のトレンドとなっており、その傾向はますます顕在化していると述べました。盛雪氏によれば、この傾向は共産主義が資本主義を「駆逐」した結果であり、特に習近平政権下での一連の政策が外資系企業の撤退につながったと指摘しています。

 さらに、中国経済全体が崩壊し、国内で企業の倒産や失業といった連鎖反応を引き起こしていることも追い風になったと指摘しました。外資系企業が中国市場に進出する目的は利益を得ることですが、現在は利益が大幅に減少し、逆にリスクが増大していることから、外資系企業が中国にとどまる理由がなくなったと述べました。盛雪氏は、外資系企業が撤退すれば、中国経済の衰退はさらに加速するだろうと考えています。

 盛雪氏は、1980年代から始まった中国共産党の改革開放政策は「欺瞞」であると述べました。さらに、新型コロナウイルスのパンデミックを経験した各国の要人やエリートは、中国での事業運営には何の保証もなく、これ以上利益を見込むこともできないと認識したため、中国への投資を行わなくなったのだと述べています。

(翻訳・唐木 衛)