(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 2019年、新型コロナウイルス肺炎(COVID-19、または「武漢肺炎」)が中国本土で爆発的な感染拡大を引き起こした。このウイルスは遺伝学的にSARSとほぼ同じのため、専門家はこの肺炎の拡散は2002年から2003年にわたる重症急性呼吸器症候群(SARS)の爆発と伝染の動向と似ていると当初述べたが、武漢肺炎の伝染性はSARSよりはるかに高く、1000倍も達することがあると、科学者は警告する。

 イギリス「デイリー・メール」紙の2月28日付の報道によると、2002年に発生したSARSで、世界中で8000人以上が感染し、774人の死者が出た。遺伝学的に、武漢肺炎ウイルス(SARS-CoV-2)はSARSウイルスとほぼ同じのため、専門家は、武漢肺炎の拡散動向は当時のSARSと同じであるはずだと述べた。

 しかし、2ヶ月間のあいだ、武漢肺炎は世界中に8万2千を越えた症例を起こし、死者は3000人を越えた。

 中国天津市にある南開大学の研究者によると、武漢肺炎ウイルスと人体細胞の結合する方式は、エイズウイルス(HIV)やエボラウイルス(Ebola virus)などの侵略性のより高いウイルスと類似しているため、武漢肺炎ウイルスの伝染性はSARSよりはるかに高い。

 SARSウイルスは、口や鼻・目などを経由して人体に侵入してから、アンジオテンシン変換酵素2(Angiotensin-converting enzyme 2, ACE2)という受容体と結合して人を発病させる。幸い、ACE2は健康な人体には大量に存在しない。そのため、2002年のSARS拡散は限られた影響しか及ぼさなかった。

 一方、武漢肺炎ウイルスのゲノム配列を調べた時、南開大学の研究者は、同ウイルスのゲノムの中にSARSウイルスには存在しない突然変異を発見した。この突然変異は、コロナウイルスのスパイク蛋白(S蛋白)にエイズウイルスやエボラウイルスに似ている「酵素開裂部位」を持っているというものだった。コロナウイルスは通常、休眠状態になっているが、S蛋白が蛋白酵素に切断されれば活性化される。そのため、一般的には、コロナウイルスが人体細胞を侵入し感染させる効率は高くない。

 しかしエイズウイルスとエボラウイルスは人体の中に存在する「フューリン(Furin)」という蛋白分解酵素を用いて、最初から活性化されたウイルスを複製することができる。

 南開大学の研究者は武漢肺炎ウイルスがこのようなメカニズムで人体細胞と結合することを発見した。「この発見からは、2019新型コロナウイルスの感染経路は、SARSコロナウイルスと大きく異なる可能性があることが分かった」と論文で述べた。

 「SARSの(人体細胞への)侵入経路と比べると、(武漢肺炎ウイルスの)結合は、非活性化状態のSARSウイルスの100倍から1000倍も効率的である。」

 この論文は「Chinaxiv.org」のウェブサイトに発表された。同サイトは中国科学院が同業者未審査の科学論文を発表するプラットフォームである。発表してから2週間後、同論文はサイト上で最も閲覧された論文となった。

 この研究結果は、感染がひどい地域・湖北省武漢市の華中科技大学の科学研究チームによる継続研究でも支持されている。

 同論文によると、SARSや中東呼吸器症候群(MERS)、Bat-CoVRaTG13(COVID-19の起源とされるコウモリを宿主とするコロナウイルス)には、上記の突然変異は見つからなかった。これこそ「武漢肺炎ウイルスがほかのコロナウイルスより伝染性が強い原因」である。そしてその原因を作っているのが、新たにウイルス粒子を合成する際に、活性化されたウイルス粒子を直接的に生成するという自己複製のメカニズムだ。このメカニズムはエイズウイルスのものと類似していることも明らかにされている。

(翻訳・常夏)