(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 人間は賢者ではない。誰でもミスをするものだ。そして誰もが他人に理解してほしいと思っている。同様に、他人が不注意でミスをした時に、寛容と理解の心で相手を慰めることができるなら、相手に喜びを与えることができ、自分も幸せな気持ちになるだろう。

 上海のあるレストランで、ウェイトレスが魚料理をテーブルに持ってきた時に、皿が傾き、出汁が女性客のカバンにかかった。女性はとっさに飛び上がり、怒ろうとした時、その横にいた彼女の娘がすぐに立ち上がり、ウェイトレスに歩み寄ってとても優しい笑顔で言った。「大丈夫、気にしないで下さい。」

 ウェイトレスは怯えながら汚れたカバンを見て、口ごもりながら「すぐに拭きます」と言ったが、娘の方は「大丈夫です、家で洗ったらきれいになりますから。自分の仕事に戻っていいです。気にしないでください。」と言った。

 この被害を受けた女性は、自分のブログにこの経験をシェアした。なぜ娘は怒らずにウェイトレスを許したのか、初めは理解できなかった。後に、娘は涙をこらえながら、かつてイギリスに留学中、夏休みにレストランでウェイトレスのアルバイトをしていた時の、初日に起きた出来事を話し始めた。

 その日、彼女は厨房でワイングラスを洗っていた。ようやく全てのワイングラスを洗い終えて、ホッと一息ついた時、体がワイングラスに当たり、全てのグラスが床に落ち、ガラスの破片が散らばった。

 「お母さん、あの瞬間私は地獄にいるかのような気持ちになったの。」娘は少し怯えた声で言った。

 「でもその時、チーフがどんな反応をしたと思う?チーフはゆっくりと私を抱きしめながら「怪我はなかった?」と聞いてきたの。そして、他のスタッフにガラスの破片を片付けさせて、私に対しては一言も攻めなかったの。」

 また別の日のアルバイト中、娘はワインを注ぐ時、赤ワインを客の白いワンピースに、不注意でこぼしてしまった。ひどく怒られるだろうと身構えたが、その客は娘を慰めるようにこう言った。「大丈夫よ。ワインだから、洗えばすぐきれいになるわ。」そして客は娘の肩をポンと叩いて静かにお手洗いに行った。

 娘は感情がこもった声で「お母さん、他の人は私の過ちを許してくれたの。お母さんも失敗した人に会ったら、自分の娘だと思って許してあげてほしい。」

 自分を傷つけた人に思いやりを持ち、寛容な態度で接するには、とても広い心が必要だ。巷にはこんな言葉がある。「他人を許すことは、自分を大事にすることだ。」

 他人の失敗を許せない人は、永遠に苦しみから解放されることはないかもしれない。もし他人を許すことができたなら、心は恨みから解放され、愛と幸福に満ちた人生に向かって歩むことができるのではないだろうか。

(翻訳・謝 如初)