中国当局はこのほど、一連のデータを公表し、公式メディアは中国経済が回復の兆しを見せていると伝えています。しかし、一部の専門家は、この回復はまだ弱く、雇用や消費の低迷、デフレの影が見え始めているなどの問題に警戒する必要があると指摘しました。

中国経済が崩壊する4つの兆し

 4つの側面からのデータは、中国経済が「寒い冬」に入り、国民が「つらい思い」をすることを示しています。

 一つ目は、労働力を売り出す業界が厳しい状況にあることです。中華全国総工会が発表した調査報告によると、デリバリー配達、速達宅配便、ネット配車、タクシー運転手などフリーランス産業で働く人の数は8400万人に達しています。注目すべきは、女性、子供、高齢者を除くと、全国の都市労働者の総数が約4.6億人にすぎず、これらの業界で働く人は約2割に達することになります。これらの業界は風雨にさらされ、労働時間が長く、収入が近年急減していることから、多くの人は必要に迫られるまでこれらの業種で働くことに抵抗があるようです。企業の賃下げや従業員の解雇で、こうした垣根の低い業界に入らなければならない失業者を増やしていることが本当の背景にあるのです。さらに恐ろしいのは、その数が今も増え続けている事です。

 二つ目は、消費力が低下していることです。消費者物価指数(CPI)が2023年1月の0.8%の上昇から2月は1%の下落に変わったことです。特に食品価格は先月の2.8%の上昇から2.0%の下落に変わりました。これは、一般消費者の消費力が低下していることを示しています。

 三つ目は、預金が増えたことです。中国人民銀行が発表した2023年第1四半期報告書によると、第1四半期の人民元預金は15.39兆元(約300兆円)で前年同期比4.54兆元(約89兆円)増加したことが分かりました。国民の預金が過去最高水準に上昇したのは、まさに一般市民が現在の状況に対して悲観的な態度を持っていることを示しており、誰もがお金を使うことを恐れ、その結果、経済発展を抑制し、消費を刺激することができないことになります。

 四つ目は、預金は少数の人に集中していることです。中国招商銀行が最近発表したデータによると、同銀行の顧客数は1.84億人、預金総額は12.12兆元(約237兆円)だが、そのうち9.87兆元(約193兆円)が414万人の手にあることが分かりました。つまり、同銀行の預金の81%が2%の顧客の手にあるということです。多くの資産が少数の人に集中している状況は、恐らく他の銀行も同じでしょう。しかし、消費の主役である大半の国民が手元にあまりお金がないため、少数の人による消費では全体経済を牽引することはできず、結果として経済成長を抑制し、消費が低迷することになります。これも、自動車の大幅値下げや不動産市場の冷え込む原因となっています。

中国経済が悪循環に入る

 政府の政策だけに頼って投資や消費を刺激することで、現在の経済問題を解決することは非常に困難になっていることがわかります。国民が消費力がないため、商品は値下げしても全く売れないため、企業収益は激減し、解雇や賃下げを余儀なくされます。その結果、失業者が増え、衣食住を切り詰めて消費を控える人が増えいます。これは経済発展の悪循環に入ることを意味します。

 中国社会科学院経済研究所の劉煜輝教授は最近、中国がデフレに突入し、国民の財布(夫婦+高齢者2世代の貯金)が全部空になったと指摘しました。中国中央銀行の統計によると、中国14億人のうち7億人が借金を抱えており、未成年者と高齢者を除けば、ほぼ全国民が借金を抱えている状態にあるとのことです。

人気な「ライブ配信」や「労働力を売る」職業も厳しい

 最近、中国のネット上では、失業や生活困難を訴える記事がますます増えています。

 ライブストリーミング業界は2年前に爆発的な人気を博し、2021年のピーク時には主要なライブ配信者の月収が1万元(約20万円)を超えていたといいます。しかし、最近のネット記事によると、「電子商取引(EC)の都」として知られる杭州市でも、ライブストリーミング業界は不況に陥っているようです。

 多くのライブストリーミング電子商取引に従事する人々は、次のようにコメントしています。
「2023年に杭州市でストリーミング配信しようと思うなら、よく考慮するようにアドバイスする。今日はうまくやっていても、明日はチームが解散するかもしれない」
「2022年、一般的な月収が2~3万元(約40~60万円)だったが、今年の月収はわずか数千元(数万円)しかない」
「8割のオーナーが赤字で、3ヶ月持つかどうかはわからない」

 労働力を売り出す業界も同様に厳しい状況にあります。中国メディア「財経雑誌」は12日、北京の日雇い労働市場の惨状について報じました。毎朝4時に仕事を待ちながら集まる労働者たちの中には、60代の高齢者も多くいると報じました。しかし、競争が激しく、「高年齢労働者」たちは数日間続けて仕事がないこともよくあるそうです。

 60代の出稼ぎ労働者が、いまだに危険な建設現場での重い肉体労働の仕事を探さなければならないのは、中国で底層国民たちが生きていくのがいかに大変かを物語っています。

(翻訳・藍彧)