4月15日午前、岸田文雄首相が応援演説のために和歌山県の雑賀崎漁港を訪れていたところ、演説の直前に筒状の爆発物が投げ込まれました。岸田首相に怪我はありませんでした。

 各メディアの報道によると、爆発物を投げ込んだとして、兵庫県川西市に住む木村隆二容疑者(24歳)がその場で取り押さえられ、威力業務妨害で現行犯逮捕されました。木村容疑者は2つの長い筒状の爆発物を持っており、そのうちの1つが現場で投げ出され爆発し、もう1つは警察が制圧する際に彼から押収しました。報道によると、木村容疑者はまず人ごみに紛れ込み、そして岸田首相の講演が始まる前に、持っていた筒状の爆発物を投げつけたといいます。

 岸田襲撃事件は、当然ながら人々に8カ月前の安倍銃撃事件を思い起こさせるでしょう。1年も経たないうちに、前後2人の日本首相が暴力的な襲撃に遭っています。安倍元首相は不幸にも亡くなりましたが、今回は爆発物の威力が小さかったため、岸田首相は難を免れました。

 セルフメディアの唐靖遠氏は、自身のYouTubeチャンネル「遠見快評」で次のように分析しました。
 簡単に比較すると、安倍銃撃事件と岸田襲撃事件は、驚くほど似ているところがあることがわかります。
 一つ目は場所です。両事件がいずれも選挙の応援演説を行っている時に発生し、場所は人通りの多い道路や公共の場で発生しています。
 二つ目は時間です。両事件の発生時間が驚くほど一致していることです。両方とも午前11時半頃に発生しています。
 三つ目は容疑者の特徴です。両事件の容疑者の特徴が非常に似ています。彼らはいずれも青年男性で、性格は静かで人付き合いが少なく、定職もなく、しかも犯罪歴も前科もなかったのです。
 最も重要なのは四つ目であり、岸田首相は安倍路線の忠実な継承者であることです。安倍から岸田までの核心的政治課題は、一言で言えば、中国共産党に抵抗し、台湾と友好関係を築き、日本をインド太平洋秩序を守る主役にすることです。

 安倍元首相を銃撃した山上徹也は、自分の個人的な理由から銃撃しただけで、政治的な要素はないと主張しています。しかし、今回の岸田首相襲撃の容疑者は、明らかに計画的に準備していたことが示され、長期間にわたって練られたものと思われます。報道によると、木村容疑者は政治に非常に関心を持っているため、襲撃の動機が安倍・岸田路線と関連しているかどうかは探究する価値があるでしょう。

 1909年に初代内閣総理大臣の伊藤博文が暗殺されて以来、過去6回の暗殺は、現職・退任を問わず、すべて政治的な動機によるものであり、安倍元首相は例外で、個人的な敵意による暗殺と報道されています。そして、暗殺が成功するたびに、日本の政治的な方向性に大きな影響を及ぼしてきました。

 唐靖遠は、木村容疑者による岸田首相への襲撃は、安倍元首相の暗殺を模倣したものであると考えています。岸田首相は安倍元首相の政治路線を引き継いだことで襲われたのでしょうか。もし肯定的であれば、今回の襲撃の背後には単なる日本国内の人々の政治的意見の相違によるものなのか、それともある外国の政治勢力によって引き起こされたものなのか、という疑問が生じます。

 「外国勢力」に言及すると、多くの読者が中国共産党を連想することがあるかもしれません。これは、中国共産党が常に「外国勢力が我々を倒そうとしている」と主張しているからです。しかも、実際には中国共産党自身が他国の政治に干渉することに長けており、それが最も好きなことの1つであると言えます。中国共産党は創設当初から、ソビエト連邦の中国支部でした。中国共産党は1949年に政権を握った後、周辺国やアジア・アフリカ諸国に対して革命を輸出してきました。したがって、中国共産党は他国に対して破壊活動を行う「外国勢力」であり、それが彼らの伝統的な行動パターンです。

 唐靖遠は、近年の台湾海峡危機が日本にも国防上の強い危機感を抱かせたと考えています。その理由は、中国共産党が台湾を武力統制すれば、日本の生命線が中国共産党の手に落ちるからです。日本が台湾の平和を守るために出兵する必要性は、米国よりも緊急であると言えます。安倍と岸田はそれを見抜いているからこそ、インド太平洋の安全保障メカニズムを断固として推進し、米国のインド太平洋戦略に緊密に協力しています。しかし、これは、戦後平和憲法の改正の必要性に関する国内での大きな論争を引き起こしてます。この背景において、首相暗殺を通じて国家政治方向を変えるという伝統を利用して、日本がインド太平洋の安全保障や台湾海峡の平和問題に介入することを阻止しようとすることは、空想ではないでしょう。

 そのため、唐靖遠氏は、木村容疑者による岸田首相への襲撃が外国勢力と関連している証拠はないものの、安倍元首相の暗殺事件も含めて、中国共産党こそが最大の受益者であると考えています。この観点から見ると、木村容疑者の社会的関係や本人のイデオロギー的な背景などを深く掘り下げることが非常に必要です。

 唐靖遠は、自分自身は陰謀論者ではないが、中国共産党のような組織に対し、いくら悪く予想しても、すぎることはないと強調しました。

(翻訳・藍彧)