宋太祖趙匡胤と曹彬(イメージ:看中国/Vision Times Japan)

 北宋の名将曹彬(そう ひん)と宋太祖趙匡胤(ちょう きょういん)は、いずれも周世宗柴栄(さい えい)の下で仕えていた。しかし、趙匡胤は大将軍の一方、曹彬は茶酒を仕切る小官に過ぎなかった、2人の官職は雲泥の差だった。

 ある日、趙匡胤が酒坊に訪れた。曹彬は大将軍が来たのを見て、急いで出迎えに参ったが、趙匡胤は曹彬を全然目にも入れず、「暑すぎて喉が渇いた、すぐお酒を一本入れてくれ!」と命じた。

 実は、当時朝廷の規定により、お酒を私的に誰にも与えることができないからだ。もし趙匡胤にお酒をあげるなら、規定を破ってしまうのだが、趙匡胤は大将軍であり、逆に彼を怠慢して怒らせた場合にも大変なことになる…とその時、曹彬が困った。

 曹彬はちょっと考えてから、「将軍様、こちらは官酒であるため、小職が将軍に贈与することが出来かねます」と趙匡胤に答えた。ちょうと趙匡胤が怒り出すところ、曹彬は自らお金を取り出して、部下に「お酒を一本入れてくれ!」と妙な動きをした。

 部下は曹彬の意図をすぐわかった。彼はお金を受け取って曹彬にお酒1本を渡した。曹彬はそのお酒を杯に注ぎ、趙匡胤に捧げた。趙匡胤は曹彬の優れた下心を悟って、そのお酒を一気に飲み干した。

 趙匡胤は、小官でもこんな節操があるなんて、珍しいと思った。それ以降、趙匡胤は曹彬に目をつけ、何とか抜擢して大任を任せた。曹彬は案の定、青史に名を残す将軍になった。

注:
趙匡胤(ちょう きょういん、927年―976年)は、北宋の初代皇帝。廟号は太祖。
曹彬(そう ひん、931年―999年)は、後周・北宋の軍人。字は国華。諡は武恵。江南(南唐)攻略など数々の功績を挙げた宋初の名将で、北宋建国の元勲の一人。
柴 栄(さい えい、921年―959年)は、五代後周の第2代皇帝。廟号は世宗。
(ウィキペディア)

(翻訳・柳生和樹)