カヌーを出している若者(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 昔、ある物語を聞いたことがある。とある金持ちが誤って湖に落ちてしまい、助けを求めて叫んでいた。それを聞いた若者が、カヌーを出して救出しようとした時、この金持ちは力を振り絞りながら叫んだ。「もし救ってくれるなら、あなたに1万円を差し上げます」。溺れ続ける金持ちは水を飲んでむせてしまい、さらに慌てて叫んだ。「早くしてくれ!私を救ってくれるなら5万円を差し上げます!」しかしこの言葉を聞いた若者は、さらにゆっくりと船を漕ぎ始めた。

 水の中で必死にもがく金持ちはどんどん値段をつり上げていった。10万円!15万円!20万円。。。若者はゆっくりと船を漕ぎながら考えた。この金持ちを救うまでの時間を延ばせば延ばすほど、もっとお金がもらえるぞ。しかしこの若者がお金のことを考えている最中に、一つの波が金持ちを水の中に飲み込んでしまい、二度と浮き上がって来ることはなかった。

 この金持ちは、自分がお金で買ったのは災難だとは思いもしなかっただろう。彼は値段を上げることで、若者の欲望を招いてしまったのだ。

 人、集団、そして社会において、お金で人々の心を買うことだけを知り、正義、良心と仁愛で人を励ますことを無視するならば、結果的にお金で買えるのは、人間の利己と欲望だけである。

(翻訳・謝 如初)