李院長と王副院長に懲役1年の判決を下した(南充市順慶区人民法院より)

 中国四川省南充市のある病院の院長と副院長が、新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)流行期間中に発熱した患者を受け入れ、感染症の予防と治療を妨害したとして、ともに禁固1年の判決を下された。

 中国メディアの報道によると、南充市のある病院の李院長と王副院長は2020年1月に発熱患者を受け入れて治療したため、同市の裁判所は今年5月10日、同市の疾病予防管理機関が提案した予防管理措置の実施を拒否し、伝染病予防管理規定に違反したとして、2人に懲役1年の判決を下した。

 報報告によると、入院中の発熱患者2名のうち1名は、入院後に新型コロナウイルス患者と診断され、同病院では10名以上の医療従事者が隔離される事態となった。

 この判決を受けて、ネットユーザーから怒りの声が殺到した。

 「硬直的で官僚的な疫病予防・管理方法に従い、治療を遅らせた結果、患者を死亡させた病院の院長や副院長が実刑判決を受けるべきではないのか?」

 「これは司法の堕落だ。これからは、急患を引き受ける医師がいなくなる」

 中国共産党の法律では、法律として成立させるためには、全国人民代表大会(全人代)の議決を経て、公布されなければならないことになっている。今回の裁判では、法律ではなく、自治体が定めた防疫条例を根拠に判断された。

 これは南京「彭宇事件」の判決と同じ。2006年11月20日、南京市民彭宇さんは、転倒したおばあさん徐寿蘭さんを助け、病院に送った。しかし、その後、徐さんは、自分がぶつかったのは彭宇さんであり、賠償を請求した。

 裁判所はこの事件を「事実に基づいた証拠」ではなく「常識」を大量に使用して判断し、目撃証人が出廷して証言したにもかかわらず、彭宇さんの敗訴を判決した。

 彭宇事件以降、同様な事件が各地で増えたため、転倒した老人を助ける人がいなくなるようになった。2009年2月、南京で75歳の男性がバスの後部ドアから降りるときに転倒したが、誰も下車して助ける勇気がなかった。老人が「私は自分で転んだので、あなたたちは心配しないで」と大声で叫び、この時になってやっと乗客が前に出て彼を救助した。

 同年6月、南京市浦口区江浦街道市民広場で70代の老人が倒れ、口から白い泡を吐いて動けなかったが、20分経っても、周りに囲んだ人々が、誰も手を差し伸べなかった。

(翻訳・藍彧)