(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 今回の話は、2014年の大晦日に中国上海・外灘(バンド)で、多くの死傷者が出た非常に深刻な転倒事故が発生した時の話です。

 A子さんは当時、上海音楽学院の学生でした。転倒事故が発生した夜に、A子さんも彼氏と一緒に、外灘にイルミネーションを見に行く予定だったそうです。しかし、二人は学校から外灘に向かう途中、真冬にも関わらず、裸足で靴を履いていない、ホームレスのように見える老人に出会しました。

 A子さんは老人を気の毒に思い、彼氏を連れて、暖かい靴と食べ物を買いに行きました。戻ってきた二人は、老人に靴を履かせ、食べ物も渡しました。A子さんはずいぶんと気持ちが落ち着きました。

 時間が夜になり、辺りも暗くなりはじめ、イルミネーションを見に行く時間にもなっているのに、A子さんの気が急に変わって、「点灯しないかもしれないから、行かなくてもいい」と言い出しました。そして、A子さんのその言葉に納得した彼氏も一緒に学校に戻りました。

 A子さんは学校に戻ると、イルミネーションを見に行こうとしていた知り合いのクラスメイトたちに「行かなくてもいいよ。外灘は今日点灯しないかも」と言いました。それを聞いたクラスメイトたちも行くのを辞めてしまいました。

 外灘で悲惨な転倒事故が起こったことを聞いて知ったのは翌日でした。惨事を免れたクラスメイトたちは皆、A子さんにお礼を言いに来ました。しかしなぜA子さんは外灘が点灯しないと分かったのかをクラスメイトたちは不思議に思いました。

 A子さん自身も、なぜ自分が考えもせずに、「外灘は今日点灯しないかも」と言ったのかをまったくわかりませんでした。しかし、いずれにしても、行かなかったことで助かった命も少なくありませんでした。

 実は、後でよくよく考えたら、「行かなくてもいい」と思うようになったのは、あの老人を助けた後だったのです。間違いなくそれがきっかけでした。この善の思いがもたらす恵みが、A子さんとたくさんの友達を救った神様の御守護かもしれません。

(翻訳・玉竹)