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 中国共産党(中共)の機関誌「求是」15日に掲載された習近平氏の「共同富裕」に関する記事は、不動産税の導入を加速させるための布石と見られている。中国の「ニラ(注)」が再び収穫される中、習氏の計画は「古い党員」や共産党のエリートらの抵抗を受けている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)20日の報道によると、今年の初め、習氏は副首相の韓正氏に不動産税(固定資産税)の課税範囲を拡大するよう命じた。情報筋によると、内部の議論で不動産税案に対する意見は、上層部から一般党員まで否定的なものが圧倒的に多かったという。

 一部の退職した古い党員から「追加の税金は払えないから、新税案を導入しないでほしい」という声もあった。

 内部情報を知っている関係者は、「中国で一部の党員を含めて複数の不動産を所有している人が多く、今回の新税案は社会の安定に関わる問題になっている」と述べた。

 政府の審議状況に詳しい関係者によると、不動産税の導入を担当する韓正氏は、広範囲への影響を懸念するため、当面はあまり大規模な課税を行わないよう習氏に進言したという。不動産税を実施する対象都市は当初の約30カ所から10カ所に減少した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、不動産税導入計画への抵抗は、庶民の恨みを買い、党内にさらなる不満をまき散らすという隠れた危険性があることを意味し、習氏にとってリスクがあることを示唆していると報じた。

 中国の都市部では、9割以上の世帯がマイホームを所有しており、不動産関連産業は中国の経済生産高の3分の1近くを占めている。同時に、中国の家庭財産の8割は不動産に依存している。不動産の価値が下がれば、家主は財産の減少を感じ、消費意欲が減退する。つまり、不動産業は現代中国を最もよく表現している。

 注:ニラは野菜の一種であるが、根の上の部分から切り取れば、また生えるという生態にちなんで、中国共産党が中国人を弄んでいるという喩えに使われている。

(翻訳・徳永木里子)