(在マレーシア日本国大使館ホームページ, CC BY 4.0, via Wikimedia Common)

 アフガニスタンの首都カブール中心部で5日、武装勢力の銃撃により死亡した中村哲医師を悼(いた)んで制作された肖像画が、イスラム主義勢力タリバンの指示で塗り潰されたことがわかった。

 同肖像画は、アフガニスタン東部のジャララバードで2019年12月に、NGO支援組織であるペシャワール会の元アフガン代表中村氏(73歳)が武装勢力に殺害されたことを追悼(ついとう)し、芸術団体「アートローズ」が描いた壁画である。同氏は現地で井戸掘削などの人道的活動に人生を捧げた。

 現在、同壁画のある場所には、タリバンのメンバーによってパシュトー語で「独立おめでとう」と書かれている。8月15日以降、タリバンはアフガニスタンの首都カブールを占拠し、一連の大規模な混乱を引き起こした。米軍の撤退後、何千人ものアフガン人がタリバンの支配から逃れようと国境を越えた。

 アートローズの共同創始者であるオメイド・シャリフィ氏は、コンクリートの壁に描かれた肖像画が塗り潰されても、中村氏の記憶を消すことができないと述べた。

 アフガニスタン政府関係者は、タリバンによる破壊行為に苛立ちを感じており、芸術作品の保護が職務であるにもかかわらず、何もできなかったと語った。

 匿名の政府関係者によると、壁画が書かれている広場では、爆発で亡くなった元ジャーナリストの肖像画や、テロで負傷した医師の肖像画も塗りつぶされ、さらに「アフガニスタン国家の英雄」と呼ばれるアフマド・シャー・マスード氏の肖像画も塗りつぶされたという。

(翻訳・徳永木里子)