アリババグループ(Thomas LOMBARD, designed by HASSELL (architects)[1], CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

 中国共産党(以下、中共)は、ビッグデータをめぐって、民間ハイテク企業との戦いが続いている。規制当局はこのほど、国営企業に対し、アリババやテンセントなどのクラウドサービスから政府のクラウドにデータを移すよう命じた。

 香港の「サウスチャイナモーニングポスト」によると、中国のデータセキュリティ法が9月1日に施行されるわずか数日前に、中共の国有資産監督管理委員会(国資委、SASAC)は国有企業に対し、アリババ、テンセントなどの大手テック企業のクラウドサービスから政府のクラウドへのデータ移行を早めるよう命じたという。

 天津市のSASACは8月27日、国有企業に対し、新たなデータセンターの建設、サーバーの購入、その他のストレージハードウェアの調達を行わないよう、命じるウェブ通知を発表した。天津市政府系企業は、ファーウェイ(華為技術)、アリババ、テンセント、中国電信(チャイナ・テレコム)、中国移動通信(チャイナ・モバイル)、中国聯合通信(チャイナ・ユニコム)が運営するパブリッククラウドプラットフォームとの新規・拡張契約が禁止されている。

 中国のクラウド市場は現在、民間企業が中心となっている。インターナショナル・データ・グループ(IDC)のデータによると、IaaS(注)では、アリババは2020年第4四半期に40.6%の市場シェアで市場をリードし、テンセントとファーウェイがそれぞれ11%で続いている。

 今回の北京の動きは、中国のクラウドサービス市場に衝撃をもたらすと、外部関係者に予想されている。これまで、北京当局がアリババの創設者のジャック・マー(馬雲)氏を処罰したことや、アントグループの上場を中止したことは、中共が顧客データを掌握しようとしていることが関係していると噂されていた。

 注:IaaS(Infrastructure as a Service の略)は、インターネットを利用したコンピュータの利用形態である。コンピュータシステムを構築および稼動させるための基盤(仮想マシンやネットワークなどのインフラ)そのものをインターネット経由のサービスとして提供する。

(翻訳・徳永木里子)