7月28日、タリバンの幹部代表団と会談する中国の王毅外相(中国外務省ホームページより)

 中国共産党(以下、中共)は最も早くタリバンと外交を始めたいと示した政権である。中共とタリバンが日増しに緊密になる関係について、欧米政治学者は「非常に手を焼くかもしれない」との見解を示した。

 ムスリムの新疆ウイグル自治区への影響

 AP通信22日の報道では、タリバンの宗教理念は、中共政権の無神論とは真逆である。中共の実用主義指導者らは、タリバンに友好の手を差し伸べる一方で、タリバンが権力を握った場合、中央アジアの潜在的な不安定性が中共の新疆支配を脅かす可能性があることを懸念している。

 米国で最も影響力があるシンクタンクで、超党派組織「外交問題評議会」のイアン・ジョンソン氏は23日、CNBCに対し、中共とタリバンの関係が「手を焼く」というのは、中共が新疆ウイグル自治区のムスリム教の極端主義をコントロールするために、タリバンと外交を始めたのだと述べた。

 ジョンソン氏は、中共とタリバンの関係について、「北京はタリバンとの協力を望んでいるが、新疆ウイグル自治区のイスラム組織とタリバンは、本質的に似ている」と指摘した。

 アフガンへの投資プロジェクトが難航

 政治リスク専門コンサルティング会社「ユーラシアグループ」の中国と東北アジアの分析家ニール・トマス氏は、CNBC宛てのメールで、「北京はタリバンに経済援助を提供し、場合によってはタリバンを正式に外交的に承認することで、アフガニスタンにおける国家安全保障上のメリットを期待している。しかし、タリバン政権の結束力と過激さの度合いはまだ予測不可能である」と述べた。

 中共政権はすでに、アフガニスタンの再建に協力すると表明した。しかし、経済上のメリットを得るには、安定したアフガニスタンが欠かせない。米軍の撤退が現在の不安定な情勢を生み出した、とAP通信が報じた。

 英国王立防衛安全保障研究所のアナリストで、中央アジアの専門家であるラファエロ・パントゥッチ氏は、「実際、北京がアフガニスタンの情勢を安定させるためにどれだけのことができるのか、その優勢がまだ見えてこない」と述べた。

 中国冶金グループ株式会社関連のある財団は、30億米ドル(約3292億円)でローガル州にある世界最大の銅鉱山であるメサ・アイナック銅鉱山を開発し、発電所や鉄道などのインフラストラクチャーを建設すると約束した。数年経っても作業がまだ始まっていない。ローガル州で反政府勢力が活動していることが主な原因だ。

 中国社会科学院中東研究所の研究員である尹(いん)氏は、「中国はアフガニスタンへのビジネス投資を求めてきたが、これらの投資プロジェクトの将来性は、20年もアフガニスタンに駐留していた米軍よりも明るく見込めない」と述べた。

 国際戦略研究所の中国専門家メイア・ヌウェンス氏によると、北京が海外のインフラへの投資を減速しているのが現状である。「他の多くの国と同様に、北京は当面アフガニスタンでの展開を見守るだろう」

 オーストラリアの政治リスクアナリストであるヘンリース・トーリー氏は、「中共は、アメリカの失敗を繰り返したくないし、台湾などより緊迫した問題から目をそらしたくないという理由で、いかなる地上軍をも派遣したくないのだ」と述べた。

 現在、中国の大使はカブールに残っている。「ユーラシアグループ」のトマス氏は、「中共の外交官は、間もなく樹立されるタリバン政権との信頼関係と外交を築くためにアフガニスタンに滞在している」と分析した。

(看中国記者・戈御詩/翻訳編集・北条)