ハイチ大統領(OlistikBlok, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons)

 カリブ海の島国ハイチのジョブネル・モイーズ大統領(53)は7日未明、米麻薬取締局(DEA)の捜査官を名乗る者によって暗殺された。米国政府関係者がメディア対し、襲撃者はDEAの捜査官を装っていたと述べた。モイーズ氏の妻も重傷を負った。ジョー・バイデン米大統領とボリス・ジョンソン英国首相は哀悼の意を表した。

 ハイチのクロード・ジョゼフ暫定首相の声明によると、「(英語やスペイン語を話す)外国人集団」は7日午前1時頃、首都ポルトープランス近郊にあるモイーズ氏の自宅に侵入し、射殺したと英紙「デイリーメール」紙が報じた。

 目撃者が撮影したとされる動画では、アメリカ訛りのある男が拡声器で「DEAだ。全員下がれ」と叫んだ。住民らは、威力のある銃弾の音を聞き、黒い服を着た男たちが近所を疾走するのを見たと報告した。

 これに対し、米国政府関係者は「マイアミ・ヘラルド」紙に、襲撃者はDEAの人間のふりをしており、「傭兵(ようへい)」だと語った。

 ハイチ司法省の初歩的な調査結果では、モイーズ氏は「左耳に1回、右腕に1回、左足に1回、顔に1回、腹部に数回」の計12回の銃撃を受けたとされている。カール・ヘンリー・デスティン判事は現地メディアに対し、「大統領は服やズボンが血まみれで、口を開き、左目がえぐられた状態で発見された」と述べ、拷問を受けていたのではないかと指摘した。

 ジョセフ暫定首相は「現在、国の責任者であり、警察と軍隊は国家(政権)の継続を保証し、国を守るためにあらゆる措置を講じている」と表明した。

 警察によると、モイーズ大統領殺害の容疑者集団と治安部隊が銃撃戦になり、当局は4人を射殺し、2人を拘束したという。

 レオン・シャルル警察長官は7日夜、テレビ演説で、「傭兵4人を殺害し、2人を拘束した」と発表。「人質になった警官3人を救出した。犯行現場を離れようとする容疑者集団の逃走を我々は阻止し、それ以来、戦闘が続いている」と述べた。

 バイデン米大統領は「恐ろしい暗殺」に直面したハイチの人々に哀悼の意を表した。

 英国のジョンソン首相は、「モイーズ氏の死を悲しんでいる」とツイートし、犯行を「忌まわしい行為」とし、平静を保つよう求めた。

(翻訳・徳永木里子)