(イメージ:NTDTVスクリーンショット)

 中国共産党政権の「一帯一路」戦略は、世界で最も野心的かつ物議を醸す開発プログラムの一つだ。これに対しトランプ政権の米国は、アジア太平洋地域における新たなインフラプロジェクトを展開し、中国の拡大に対抗しようとしている。

 中国共産党は「一帯一路」戦略を影響力拡大のための要としてきた。この戦略に何兆ドルものインフラ投資を提供し、アジア、ヨーロッパ、そしてアフリカを結ぶことを目的とする。同計画は約70カ国にまたがり、世界人口の三分の二以上をカバーする見込みだ。

 しかし近年、プロジェクトの大部分が中国の国営企業を通じて資金供給されていることが明らかになり、その問題点も浮かび上がってきた。

 ワシントンを拠点とするシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」でアジア太平洋地域安全保障プログラム上級研究員を務めるダニエル・クリマン氏によると、「一帯一路」に対しアメリカが反応したのはごく最近とのことだ。

 同研究員は「南シナ海での中国埋め立て行為と同様、アメリカの政策立案者は当初、一帯一路の範囲と速度、そしてそれが中国の利益にどう貢献するかについて十分に評価していなかった」と2018年12月17日にヘリテージ財団が主催したパネルで説明した。

 しかしトランプ政権になって、アメリカは「一帯一路」について戦略的見解を有するようになり、「一帯一路」は米国の立場に挑戦する中国の野心の現れと捉えている。

 クリマン研究員によると、トランプ政権は「過去の政権よりも首尾一貫かつ包括的であり、前向きな姿勢を取っている」という。米国にとっては、新興国が中国の投資の悪影響に対し懸念を示すようになってきたのも追い風だ。

積極的になった米国の対応

 ここ数カ月、トランプ政権は中国の拡大に対してはるかに厳しい方針を打ち出している。2018年11月16日にパプアニューギニアで開催されたアジア太平洋経済協力最高経営責任者会議でスピーチを行ったペンス副大統領は、一帯一路を批判し、米国は「より良い選択肢を提供する」と述べた。
「私たちは同盟国を借金の海に溺れさせない。米国のディールは公然・公正であるから、我々の『道』は一方通行でも行き止まりでもない」

 国家安全保障顧問のジョン・ボルトン氏も、中国の「一帯一路」について懸念を表明した。2018年12月に公の場でスピーチをしたボルトン氏は、中国が融資を戦略的に使用している点を批判し、アフリカ諸国に対し中国の罠にはまらないよう注意喚起した。

 ボルトン氏は、「一帯一路」について「中国の世界的優位確立という最終目標のために、中国と他国を結ぶ貿易ルートを発展させるのが目的だ」と喝破した。

 米中の応酬が激しくなる中、米国議会は2018年10月、超党派の支持を得て「開発関連の投資推進・活用法」を可決し、トランプ大統領も法律に署名した。

 この法案は、600億ドルを投じて「米国国際開発金融公社」(IDFC)を設立し、米国の開発金融能力を倍増するものだ。IDFCは「米国の外交政策上の目的を補完する」目的で、米国企業による新興国への投資を促進するための組織だ。

 クリマン研究員は、同法案について「米国企業の資源調達に多大な変化をもたらす可能性があります」と指摘している。

 さらに2018年12月、米国両院は、インド太平洋地域における中国の影響力に対抗するため、5年間にわたり年間15億ドルを国防予算支出として承認する「アジア再保険イニシアティブ法(ARIA)」を超党派で可決した。

中国への対応:広がる国際間協力

 米国はまた、日本、オーストラリア、ニュージーランドなどの同盟国と協力し、中国政府が支援する投資に対し協調した対応策を始めた。例えば、アメリカと太平洋の同盟諸国は先月、パプアニューギニアに17億ドルの電力網を建設すると発表した。

 欧州連合(EU)は最近、ヨーロッパとアジアを結ぶ新しい戦略を明らかにした。EU本部は「一帯一路と競合しない」と主張するが、「同戦略は他国に対し代替案を提供するための手段といえます」とクリマン研究員は説明する。

 同研究員によると、米国・EUの取り組みには、発展途上国への中国の投資を制限する試みも見られるという。

「例えば、アメリカは新しく『国際取引コンサルティングファンド』の設立を発表しましたが、こうした団体が中国との取引を分析・評価すれば、スリランカのように新興国が利用される事態を防げるでしょう」

 スリランカは、中国との間で増加した債務を返済することができなかった。そのため「99年のリース契約」でハンバントタ港を中国に引き渡す事態に追い込まれ、国際的な議論を巻き起こした。

 クリマン研究員はまた、米国が中国による投資が行われた国々で調査を行うジャーナリストを支援する取り組みを行なっている事にも言及した。これによって、中国が新興国を借金漬けにし、主権を取り上げるような取引が表沙汰になりやすくなると考えられている。

(翻訳・今野秀樹)