広東省深セン市の南方科技大学の准教授・賀建奎(イメージ:The He Lab CC BY 3.0

 中国の研究者・賀建奎氏は、香港で開催された国際会議から帰国後、大学当局によって自宅監禁中であると伝えられている。

 広東省深セン市の南方科技大学の准教授・賀建奎氏は、11月28日、香港大学で行われたヒトゲノム編集サミットに参加し、約700人の人々の前で講演を行った。

 賀氏は同講演で、CRISPR-Cas9という遺伝子編集技術を用いて11月生まれた双子の女児の胚体遺伝子を改変したと語った。

 賀氏の発表については未だ検証が済んではいないが、研究の倫理と安全性に関して国際的な抗議を呼び起こしている。

 話題の渦中となっている賀氏であるが、世界で初めてゲノム編集によって赤ちゃんを誕生させた自身の成果を「誇りに思っている」と述べた。

 一方、会議の主催者側は、11月29日、同氏について「深く憂慮している」、「無責任」と非難したうえ、「たとえゲノム編集の成功が確認されても、こうした手法は無責任であり、国際基準に合致していない」との声明を発表している。

 米国国立科学アカデミー(NAS)と全米医学アカデミー(NAM)の幹部も、賀氏の研究に懸念を表明した。
NASのマルシア・マクニュット氏とNAMのビクター・ダジュール氏は声明で、「今週香港で開催されたイベントは、我々科学者がより具体的な基準と原則を確立する必要性を明確に示している」と述べた。

 賀氏の「成果」について、中国共産党の機関紙である「人民日報」(11月27日付)は当初、好意的に報道していた。しかし国際的な非難の声が高まった後、党は態度を急速に変えた。

 11月29日、中国政府はゲノム編集研究の一時停止を命じた。

 香港の新聞・明報紙は11月28日、賀氏は大学に戻ってきたが自宅軟禁下に置かれていると報じている。

 もともとゲノム編集技術は米国で発明されたが、比較的簡単に模倣が可能と言われている。しかし国際科学者団体は人間を被験者にすることを厳格に制限している。あるオブザーバーは、この実験は中国共産党によって形成された無神論と非道徳の環境でのみ起こり得る事態だと指摘した。

 上海の某大学で教授を務めた経験がある「草祭」という匿名の人物は、11月30日、Twitterで次のようにコメントした。
「『ゲノム編集で人間の赤ちゃんを誕生させる実験』は中国共産党のある高官が主導した。賀氏が勤務する大学(南方科技大学)にはその実行部隊があり、賀氏は秘密裡に実験を行っていた」

 南方科技大学には数億元にも上る資金が投じられている上、賀氏は中国共産党による「千人計画」に関連した研究者であるという。こうした事実を踏まえ草祭氏は、国の支援なしにゲノム編集実験を実施するのは不可能であると述べている。

 「千人計画」とは外国の科学者を中国に招へいするための国家プロジェクトである。同計画は米国当局から疑惑の目を向けられている。2008年12月から開始された同計画が多くの学者らを中国に招いてきたためだ。米国国家情報会議は同計画について「米国から中国への技術移転を目的としている」と断じている。

 草祭氏は、「賀氏の本当の過ちは『研究倫理違反』ではなく『国家の秘密を漏らした』ことだ」と指摘している。

 SINA.COMは11月27日、「遺伝子組み換え赤ちゃん計画」の資金は南方科技大学から拠出されたと報じた。同大学のウェブサイトに記載された「インフォームド・コンセント」によれば、同計画の目標はHIV-1に対する免疫を有する赤ちゃんを産み出すことであるという。

(翻訳・今野秀樹)