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 グローバリゼーションによって中国は「世界の工場」に変貌した。先進国が労働集約的・ローテク産業を中国に移転し始めてから 20年近く経つが、米中貿易戦争が始まり、中国を離れて東南アジアやオーストラリアに新たな機会を求める企業が確実に増えている。中国はこのまま「世界の工場」としての競争力を失っていくのだろうか。

 数年前から、外資系企業はコスト高騰を嫌気し中国から撤退し始めていた。今や米中貿易戦争がこの流れを大幅に加速させているようだ。

 中国での工場運営は以前ほど有利ではなくなっている。この10年で中国の平均賃金は3倍も増加しているという事実がこの流れを物語っている。この背景には社会保障・エネルギー価格・為替相場などのコストの急上昇がある。つまり、急騰するコストこそが「世界の工場」としての中国の優位性を弱めている最大の原因なのだ。

 米国の経営コンサルティング会社ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の報告によると、2004年の中国の生産コストはメキシコより6%低かったが、2014年になると、逆に中国よりもメキシコの生産コストの方が4%低くなった。BCGによれば、現在の中国における平均製造原価は、米国に比べたった5%低いだけだという。

 製造コストが大きく変化したため、多国籍企業は生産国のコスト事情を再評価するようになり、そのことが世界の製造現場に大きなシフトをもたらした。2014年のBCGのレポートによれば、製造業分野で台頭した「輝ける星」はインド・インドネシア・オランダ・英国だ。中国はかつてのように製造強国ではなくなっているのだ。 メキシコは最大の強みである「低コスト」を取り戻しているし、米国さえもコスト競争力を有する可能性がある。

 スタンダート・チャータード銀行でグローバル・リサーチ部門の責任者を務めるジョン・カルバレー氏は、2015年の中国の調査を引用し、中国南部に所在する工場の11%がASEAN諸国・インド・バングラデシュに移転し、コスト増加を回避しようとしていると指摘した。

 高い労働コストを相殺するため、外国企業には機械化を推進するという選択肢もある。しかし衣料品産業など、ローテクで労働集約型の産業では熟練労働者に対する依存度が大きいため自動化は困難だ。

 労働コストを削減するための戦略として、中国の沿岸地域から本土に工場を移転することも考えられる。 しかしこれは短期的にしか機能しないだろう。米中貿易戦争で米国が課した関税の引き上げは、中国での運営・操業費を一層高めるからだ。すると、外国企業にとって最も良い選択肢は「中国を離れる」ことになる。

 ローテク産業・労働集約型産業では工場の移転は比較的容易であり、労働者の訓練がクリアされれば企業が別の国に移転することは可能であると考えられる。実際に、こうした業界では多数の外国企業が中国から素早く撤退していった。

 共同通信によると、中国に拠点を置く日系企業の60%が既に移転済みであるか、他国への移転を進めている最中であるという。また残りの40%も投資の引き上げを計画していると伝えられている。

 米国商工会議所によると、調査対象企業の35%が、東南アジアなど他国への生産拠点移転を検討しているという。

 日本経済新聞の9月16日付の記事は、台湾で靴を製造するナイキ・アディダス・アンダーアーマーなどの工場が、東南アジアやインドに生産ラインを移転したと報じた。

 また米国の高関税の回避を目的に、自転車・タイヤ・プラスチックから織物に至るまで、様々な業種の企業が中国からの撤退を開始している。かつて中国に所在した工場が海外に組立ラインを移転する動きが顕著となっているのだ。

 香港に本社を置くアジア最大の輸送物流会社であるケリーロジスティクス社は、現在、中国からマレーシア・ベトナム・ミャンマー、さらにはラオスにまで生産ラインを移転しているという。

 フィリピンやマレーシアのほか、インドネシアに生産拠点を移転する企業も増えている点は注目に値する。これら3つの東南アジア諸国には共通する要素があるのだ。第1に、これらの国々はオーストラリアに近く、第2に、これらの国々の産業システムは未完成であるという点だ。こうした国々は、近隣のオーストラリアから材料や製造設備などの資材を輸入し、急速に産業システムを完成させることに成功した。

 その結果、「世界の工場」は中国から南方へ移動し、新しい「世界の工場」が形成されるようになった。今後は東南アジア諸国に加え、地理的に優位性を持つオーストラリアがその一部を構成する可能性もある。

(翻訳・今野秀樹)

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