中国出身のクロエ・ジャオ(中国名:趙婷)監督(Vegafi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 中国出身のクロエ・ジャオ(中国名:趙婷)監督が『ノマドランド(Nomadland)』でアカデミー賞を受賞されたことに対し、北京は情報封鎖措置を取った。タイムズ紙26日の報道によると、中国国営メディアはいずれもジャオ氏の快挙を報じておらず、授賞式も中国では放送されなかったという。また、中国のソーシャルメディア上で同氏について言及することはすべて遮断された。26日午後の時点で、中国メディアでは一切アカデミー賞に関する報道がなく、香港でもアカデミー賞授賞式の生中継を52年ぶりに放送されなかった。

 同氏は2013年にニューヨークの「Filmmaker(意訳:映画監督)」誌のインタビューで、中国での青少年時代を振り返り、「いたるところに嘘がある。絶対に逃れられないと感じた。幼い頃に得た情報の多くは真実ではなく、自分の家族や生まれ育ちに非常に反抗的になった」と述べたことで、中国の愛国主義者の反感を買った。彼女の愛国心のなさと「間違った考え」を表す考えだと批判された。その後、同氏は香港国家安全法や弾圧に反対する人に分類された。

 同氏が受賞した後、「新浪映画」、「ウォッチ・ハリウッド」などの中国映画アカウントとネットユーザーは、このニュースをリツイートし、ウェイボーや豆瓣などのソーシャルメディアで祝福の声をあげたが、すぐに投稿が削除されたことに気づいた。「#クロエ・ジャオ氏が米アカデミー賞の監督賞を受賞した」というハッシュタグも遮断された。また、23日に中国での公開を予定していた本作は、公開中止となった。

 中国最大の検索エンジンである百度(バイドゥ)で「趙婷」というキーワードで検索しみても、同氏の受賞に関するニュースは見つからない。

(翻訳・徳永木里子)