2012年2月14日、当時米副大統領だったジョー・バイデン、米国務長官だったヒラリー・クリントンと中国共産党の副主席だった習近平(パブリック・ドメイン)

 中国語を流暢に話すマット・ポッティンジャー氏は、2019年から2021年までトランプ政権の大統領補佐官(安全保障担当)を務め、中国に対するタカ派(注)として知られている。退任後はフーヴァー研究所で特別研究員として活躍。ポッティンジャー氏はウォール・ストリート・ジャーナルに掲載した最近の記事の中で、6年間も内密にされていた習近平氏の演説内容を公表した。

 2013年1月5日、習近平氏は中国共産党(以下、中共)中央委員会のメンバーに対し、「共産主義は実現できない希望あるいは絶望的なものであり、幻想に過ぎないと考える人がいる。しかし、資本主義社会の基本的な矛盾に関するマルクスとエンゲルスの分析も史的唯物論の観点も時代遅れではないことを、事実が繰り返し教えてくれている。資本主義は必ず滅び、社会主義は必ずや勝利することは、社会史的発展の必然的な趨勢(すうせい)である。しかし、この道は曲がりくねっている。最終的に資本主義の滅亡と社会主義の勝利は長い歴史過程を経て完成するだろう」と語った。

 習近平氏のこの演説は、米中関係が決して競争的な関係ではなく、双方が生死存亡にかかわる敵対関係であることを明確に定義づけた。したがって、米中関係をビジネス競争関係として捉えるのは間違いである。

 ポッティンジャー氏は記事の中で、中共は現在、米国のビジネスマンを非常に注目していると述べた。今年2月初旬、中共中央外事活動委員会弁公室主任である楊潔チ氏は、米国のビジネスリーダーや元政府幹部を対象に、中国での投資や貿易活動についての素晴らしい未来図のスピーチを行った。その一方で、チベット、新疆ウイグル自治区、香港、台湾は中共の「レッドライン」であり、触れてはいけないと警告した。楊潔チ氏は飾らずに、トランプ氏の対中政策を変えるよう、バイデン政権を遊説するように促した。

 中共は「米国のビジネスマンは選択しなければならない」というメッセージを開示した。中国でビジネスをしたいなら、米国の価値観を捨てなければならない。つまり、米国のビジネスマンは、ジェノサイドや宗教的虐殺など、中国の人権問題を無視するほかないのだ。

 中共は米国のビジネスマンに圧力をかけることで間接的に米政府に影響し、中共に屈服させ、ビジネスで政治を動かそうと考えている、と分析するアナリストもいる。

 オーストラリアがいい例である。昨年、北京は政治的な理由でオーストラリアのワイン、牛肉、大麦の輸入を突然制限した。これに対し北京は、オーストラリアが中国(中共)を標的にした最新の立法、豪メディアが中国(中共)に対する非友好的あるいは敵対的な報道など、オーストラリアに対する不満を14項目列挙した文書を発表した。

 米国のビジネスマンは、シンプルで収益性の高いビジネス関係を求めており、米中関係をイデオロギー闘争として捉えることを長い間拒んできた。しかし、現在の国際情勢を見ると、イデオロギーレベルでの対立は避けられず、米中の核心問題にさえなっている。

 米国企業のCEOたちは、ワシントンと北京を同時に満足させることがますます難しくなることを次第に気づくだろう。米国企業のCEO、取締役会、投資家たちは、民主主義国家の肩を持つのか、それとも権威主義国家を助けるのか、いずれ自らの立場を定めなければならないだろう。

注:タカ派(英語:War Hawk, hawk, bellicist)とは、敵対勢力に対して、「強硬、武力行使容認」といった姿勢をとる政治家や政治団体のことである。

(翻訳・藍彧)