中国の裁判所(瑞丽江的河水, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 中国山東省済南市歴下区の裁判所は先日最高裁の文書を引用し、今後、法的根拠のない判決がいわゆる「社会主義核心価値観」を用いて法律や推論を説明することができると発表した。同文書は世論を巻き起こし、現在は中国の公式メディアに削除された。

 中国の公式メディア「澎湃新聞」は2月22日、「最高裁の文書:法的根拠のない判決は核心的価値観に従うべきだ!(3月1日から実施)」と題した記事で上記文書を転載した。

 同記事は、最高裁が出した意見書を引用し、法律ではなく、いわゆる「社会主義核心価値観」を裁判の根拠とすべき6つの応用事例を列挙した。6つの事例はそれぞれ以下の通りである。

 1、国益、重要な公共利益、広範な社会的な注目を浴びる事件。

 2、疫病予防管理、災害救助、烈士の保護、緊急避難などにおける事件。

 3、高齢者、病弱者、女性、子どもなどの弱者や、社会的な関心が広く寄せられている特殊な集団の保護に関わる事件。

 4、公序良俗、慣習や伝統、権利の平等、民族や宗教など、広く社会的な関心を集める可能性のある事件。

 5、価値観に関連する新たな状況や課題などの事件。

 6、その他「社会主義核心価値観の説明や推論の適用を強化すべき」事件。

 最高裁の意見書によれば、これらの場合には、たとえ法的根拠があったとしても、事件の状況を考慮し、いわゆる「社会主義価値観」に基づき法律を解釈し、判決の理由を説明すべきである。法的根拠のない民事・商業事件では、裁判官は直接「社会主義核心価値観」を根拠として判決することができる。3月1日から関連規定が正式に施行される。

 ネットユーザーからの批判が相次いだ。

 「法的根拠のない判決は『事件』が全く違法ではなかったということだ。『愛国心がない』というあらぬ罪で裁くのか。最高裁は人命を軽視している最大の法律の無知者だ」

 「文化大革命の時のように、革命の名義で誰にも有罪にできるいうことだ」

 世論の圧力により、「澎湃新聞」は公式サイトから同記事を削除した。

(翻訳・徳永木里子)